第80回 「イン・ザ・ムード」と「スウィング・ガールズ」パイオニア吹奏楽団

コラム

2016年 2月 2日

前回に引き続き、第26回定期演奏会に演奏する予定の曲目に関する話題を取り上げます。今回は第2部に演奏する「イン・ザ・ムード」です。

「イン・ザ・ムード」は、アメリカの作曲家ジョー・ガーランドによって書かれた曲です。作曲後、チャーリー・バーネットやアーティ・ショウが取り上げましたが、そのときには特にヒットしませんでした。しかし、1939年になってグレン・ミラーが取り上げると瞬く間にヒットし、13週に渡って全米チャートでのNo.1を記録しました。その後、デューク・エリントンやベニー・グッドマン、シカゴといった著名なアーティストがカバーし、今ではジャズのスタンダードナンバーとしての地位を不動のものとしています。

グレン・ミラー・オーケストラ
スウィング・ジャズを中心に今も活動を続けている

当団でも「イン・ザ・ムード」は第7回定期演奏会及び第19回定期演奏会で取り上げており、今回で3回目の登場ということになります。逆にいえば、3回も登場するほど名曲であり、演奏するたびに新たな刺激が受けられる曲ということでもあるかもしれません。ただ、当団で複数回取り上げた曲は過去にも何曲かありますが、3回も取り上げるとなると今回同じく演奏する予定の「アルメニアン・ダンス パート1」とこの「イン・ザ・ムード」だけです。このように見ると、「イン・ザ・ムード」は当団にとってもスタンダードナンバーとなりつつある、といえるでしょうか。

そんな「イン・ザ・ムード」ですが、日本でも多くの映画やCMに登場しています。中でも吹奏楽関係で有名なのは2004年に公開された映画「スウィング・ガールズ」でしょう。東北の田舎にある高校で落ちこぼれの女子高生たちがビッグバンドを組んで演奏する、というストーリーのこの作品は、上野樹里さん、貫地谷しほりさん、本仮屋ユイカさんといった現在活躍する女優たちの出世作でもあり、彼女たちが映画の中で実際に「イン・ザ・ムード」を演奏しています。映画は当初の予想を超えてロングランとなり、日本アカデミー賞優秀作品に輝くなど各映画賞を総なめにするほど評価も高いものでした。

映画のヒットを受け、上野さんたちは映画の中で演奏するだけでなく、映画に登場するバンドそのままに「スウィング・ガールズ&ア・ボーイ」としてライブコンサートも行っています。編成は上野さんがテナーサックス、貫地谷さんがトランペット、本仮屋さんがトロンボーンといった17人からなるものですが、最後は映画からスピンアウトしたような形でバンド単独でのコンサートが開催されるなど大いに注目されました。同時期には管楽器の売上が伸びるなど、吹奏楽やジャズに与えた影響は大きいものだったといえます。

「スウィング・ガールズ」のロケ地の1つである山形県南陽市の赤湯駅
山形鉄道フラワー長井線が走っている

残念ながら現在「スウィング・ガールズ&ア・ボーイ」は活動をしていませんが、後に上野さんはクラシック音楽をテーマとしたドラマ「のだめカンタービレ」で主演を演じて大ヒットを記録し、また本仮屋さんはNHKのクラシック音楽番組のイメージキャラクターを務めるなど、音楽に関連した活躍をしています。このような活躍があるのも「スウィング・ガールズ」での実際の演奏経験が生きているのだとしたら吹奏楽関係者としても嬉しいことですね。

今回は「イン・ザ・ムード」を第2部の冒頭に演奏する予定です。3回目の演奏となる当団としても新たな「イン・ザ・ムード」の面を見せつつ、「スウィング・ガールズ」のようなインパクトを残せるような演奏にしたいものだと思います。

文責:磨墨

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