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2011年 4月20日
当団の演奏するジャンルである吹奏楽に限らず、ある曲の裏には必ずその作曲者が存在しますが、作曲を生業とする作曲家というのは意外と顔が見えにくいものです。おそらく演奏家には舞台という脚光を浴びる場があるのに対し、作曲家にはそのような場が定常的にないことがその理由でしょう。そこで今回は、当団もしばしばその作品を演奏する作曲家の1人であるベルト・アッペルモント氏に関する話題を取り上げたいと思います。
アッペルモント氏はベルギーの作曲家で、主に吹奏楽の作品を手がけています。1973年生まれと作曲家としてはまだ若いですが、新進気鋭の作曲家として評価は高く、ヨーロッパでは既にトップクラスの1人と見られている存在です。ストーリー性のある作風が特徴で、日本でも広く人気を集めています。
当団でも先般開催した第21回定期演奏会でアッペルモント氏作曲の「ロビンソン・クルーソー」を演奏したほか、第17回定期演奏会で「交響詩『エグモント』」をメインプログラムとするなど積極的に取り上げています。背景には当団の常任指揮者である大澤和幸氏がアッペルモント氏の大ファンであることがあり、大澤氏の推薦と団の意向が一致したときにはプログラムに採用しています。
大澤氏とアッペルモント氏の貴重なツーショット
さて、少し前のことですが、そのアッペルモント氏が来日し、ある演奏会で直接指揮を振るという機会がありました。もちろん曲目はアッペルモント氏のものばかりです。作曲者自身が指揮するということは、それらの曲についての解釈が最も明快な演奏になるはずであり、聴く方にとっては非常に貴重な機会だといえるでしょう。
演奏会当日は大澤氏も会場に足を運びました。アッペルモント氏は指揮が専門ではないものの、その演奏はやはり一味違ったようです。感銘を受けた大澤氏は聴いただけでは収まらず、終演後に楽屋を訪問しました。それに対してアッペルモント氏は快く応じてくれたそうで、大澤氏の吹奏楽に対する熱意に引き込まれて会話も弾んだということです。音楽に国境はない、とはよく言いますが、正にそんなことを感じさせられる話ですね。後で大澤氏はアッペルモント氏にもらったサインを「自分にとって一生の宝物」と自慢げに(?)我々に見せていました。
大澤氏のスコアに記されたアッペルモント氏のサイン
このように作曲家と演奏家が直接触れ合うのはごく普通のことのように思えますが、案外そうともいえません。お隣のクラシックに目を向けてみると、モーツァルトやベートーヴェンを例に出すまでもなく故人の作曲家のものが演奏されることが圧倒的に多いため、演奏家が作曲家に会おうと思っても会えない場合がほとんどです。できることといえば、せいぜい遺品や伝記を通して事績を知るくらいでしょうか。その点、吹奏楽の場合はまだ歴史が浅いということもあって現役の作曲家が多数を占めます。こうして見てみると、実際に会える機会があるだけでなく、作曲された時代背景を共有しやすいことも含めて、その曲の作曲者と同時代を生きているというのは幸運なことなのかもしれませんね。
先の演奏会の後、筆者はアッペルモント氏と本欄に取り上げる旨を含めてメールのやり取りをしたのですが、その対応は非常に好意的でした。作曲家にとって自分の曲が演奏されるというのは何よりも喜びなのでしょう。当団も演奏会に聴きに来て下さるお客様の期待に応えるだけでなく、作曲家が曲に込めた気持ちにも応えられるような演奏を今後とも行っていきたいものだと思います。
文責:磨墨
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