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2011年 6月 24日
「演奏会情報」をご覧になってもお分かりの通り、7月の第9回アンサンブルコンサートの曲目がおおよそ出揃いました。今回はそのアンサンブルコンサートの中でクラリネットアンサンブルとしてお送りする予定の「ラデツキー行進曲」に関する話題を取り上げます。
「ラデツキー行進曲」は、1848年にオーストリアのヨハン・シュトラウス1世によって作曲されました。この曲は毎年1月にウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(以下ウィーン・フィル)が開催する「ニューイヤーコンサート」のアンコールで演奏される曲として有名です。それにあやかってか、一般の楽団においても吹奏楽・オーケストラ問わずアンコールに演奏されることが非常に多い曲で、当団でも第13回定期演奏会のアンコールに採用したことがあります。
ウィーン・フィルの本拠地であるウィーン楽友協会
作曲者のヨハン・シュトラウス1世は「ワルツの父」として知られており、さらに息子のヨハン・シュトラウス2世は「ワルツ王」として父以上の功績を残しています。ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートはシュトラウス家の作品を中心に選曲されるという性格を持つこともあり、アンコールの2曲目がシュトラウス2世の「美しき青きドナウ」、最後の3曲目に「ラデツキー行進曲」が演奏されるのが完全な定番になっています。
その「ラデツキー行進曲」が作曲された1848年は、欧州において歴史的な年に当たります。2月にフランスでそれまでの王制を打倒する「2月革命」が起こり、翌月にはオーストリアにも波及し「3月革命」となって長らく権力の座にあった宰相メッテルニヒが失脚しました。歴史上ではこれら2つの革命を合わせて「諸国民の春」と呼ばれます。
オーストリアにおいてはこの3月革命によって民衆は旧政権を倒すことに成功し、ウィーンの街は歓喜に沸きました。しかし、一方ではこの政変で政治的空白が生じたため、それまでオーストリアの支配下にあった各地では北イタリアをはじめとして独立運動が起こりました。オーストリアは革命によって別の国難を抱えてしまったのです。
ヨハン・シュトラウス1世(左)とヨーゼフ・ラデツキー将軍
そんなオーストリアの危機を救ったのがヨーゼフ・ラデツキーです。ナポレオン戦争時代から活躍していたこの名将はオーストリア軍を率いて南下し、意気上がるイタリア軍を打ち破りました。これを機に流れは変わり、最終的にオーストリアは全ての独立運動を鎮圧することに成功します。
この救国の英雄となったラデツキーの姿は、当時のオーストリアの人々に眩しく映ったことでしょう。シュトラウス1世もその1人であったに違いありません。そして、英雄ラデツキーを称える曲を作りました。それが「ラデツキー行進曲」です。
以上のような歴史的経緯を見ると、「ラデツキー行進曲」はオーストリアの人々にとっての愛国歌とでもいうべきものであることが分かります。そのような背景もあってウィーン・フィルのニューイヤーコンサートで演奏されているのだと思われます。一方で当時支配下にあった国々にとっては聴きたくもない曲かと思いきや、現在ではそんなこともなく広く受け入れられているようです。それだけこの曲の持つ力が普遍的だということでしょう。こんな歴史的な因縁を乗り越えて愛される曲を我々も皆様と一緒に楽しみたいと思います。
文責:磨墨
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