第72回 「踊り明かそう」としても実際には踊り明かせない?パイオニア吹奏楽団

コラム

2015年 1月 5日

前回に引き続いて第25回定期演奏会の第2部に演奏する予定の曲目に関する話題を取り上げます。今回は「踊り明かそう」です。

「踊り明かそう」は、元々は1956年から1962年にかけて公演されたミュージカル「マイ・フェア・レディ」の劇中歌です。「マイ・フェア・レディ」はジョージ・バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」を原作としてミュージカル化され、ブロードウェイにてロングランとなりました。後に1964年になって映画にもなり、オードリー・ヘプバーンが主演したことでも知られます。「踊り明かそう」は現在ではミュージカルや映画を離れて曲だけ単独で取り上げられることも多く、吹奏楽の演奏会でもしばしば演奏されています。

「マイ・フェア・レディ」の舞台となったコヴェント・ガーデン

この「踊り明かそう」の原題は”I Could Have Danced All Night”で、文字通り訳すと「夜通し踊ることができたら」となります。ミュージカルでは花売り娘だった主人公のイライザが訓練を経て上流階級の話し方をマスターし歓喜したところで歌われ、劇中の印象的なシーンの1つになっています。

ところで「夜通し踊る」というのは普通にできる行為に思えますが、日本においては実は難しい点がありました。具体的には風営法によりダンスの深夜営業が原則として禁止されてきたことがあります。なぜこのような規制があるのか不思議に思われますが、風営法が施行されたのが1948年のことであり、当時ダンスは風俗的に好ましくないものとして捉えられていた、というのがその理由です。夜通し踊ろうにも踊れないわけですが、今となっては時代錯誤的な規制であるといっても過言ではないでしょう。

このように風営法が時流に即していない認識は当然ダンス業界やクラブ関係者にもあり、その改正を求める声も年々大きくなってきました。声を上げた中には坂本龍一さんのような著名なミュージシャンも含まれます。そういった活動が実り、昨年の秋になって風営法の改正が閣議決定され、一定の条件を満たせばダンスの深夜営業が認められる方向になりました。関係者にしてみればようやく、といったところですが、一旦施行した規制を改正するのはなかなか大変なことのようです。

昨年夏に発表されたパイオニアのターンテーブル
パイオニアは長年に渡ってクラブ文化の発展に大きく貢献している

以前この欄でも述べたことがありますが、パイオニアもDJ機器やダンサーオーディオを通じてクラブ文化に深く関わっています。最近もパイオニアとしては30年振りとなるターンテーブルを発表するなど、クラブ文化の活性化に非常に意欲的に取り組んでいます。いずれにせよ今回の風営法改正は業界にとっては追い風ですので、我々としても健全なクラブ文化の発展に今後も寄与していきたいものだと思います。

「マイ・フェア・レディ」の時代は踊る場所としては舞踏会のようなものが前提でした。その当時に比べると、今では踊ることのできる場所や種類は格段に増えたといえます。アイドルやアーティストも歌に加えてダンスをパフォーマンスに取り入れることが普通になっていますが、それだけダンスが文化として定着してきているのでしょう。吹奏楽においてはさすがに踊りながら演奏する、というわけにはいきませんが、演奏会に聴きに来て下さる方々の心を躍らせるような演奏を是非行いたいものだと思います。

文責:磨墨

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