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2011年 1月 5日
前回までのこの欄では第21回定期演奏会の第1部の曲に関する話題を取り上げました。今回は第2部にそのテーマ曲をお送りする『バック・トゥ・ザ・フューチャー』について触れたいと思います。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、1985年に公開されたタイムトラベルものの映画です。監督はロバート・ゼメキス、製作総指揮はスティーブン・スピルバーグ他という豪華な布陣によって作られ、後に続編としてパート2・パート3も公開されました。今に至るまで数多くのタイムトラベルものの映画が製作されていますが、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズはその中でも代表的な作品といっていいでしょう。
実際の撮影に使われたDMC-12 通称「デロリアン」
このようなタイムトラベルものの映画にはタイムマシンがつきものです。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでは「デロリアン」と呼ばれるタイムマシンが登場し活躍しました。「デロリアン」はデロリアン社の製造した「DMC-12」という車がベースになっていますが、デロリアン社がDMC-12のみを製造して倒産したため、一般的に「デロリアン」といえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのタイムマシンを指すと共に、車種としてはDMC-12の代名詞のようになっています。現在、日本では愛知県のトヨタ博物館でDMC-12を見ることができます。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのパート2では、主人公がこのデロリアンに乗って1985年から2015年の世界へと飛びます。そこで主人公は未来の様子を目にするわけですが、その中でレーザーディスク(LD)がゴミの山になっているというパイオニア関係者にとっては衝撃的な(?)シーンがあります。パート2の公開は1989年ですから、ちょうどLDが普及期に差し掛かった頃に当たりますね。筆者はまだ入社していない頃のことなので分かりませんが、当時のパイオニア社内の反応はどうだったのでしょう。
今や懐かしのLD(左)ちなみに筆者はLDプレーヤーを設計した最後の世代
もっともゼメキスやスピルバーグがこのような描写をしたのは、今の先端技術もいずれは陳腐化するといった意味合いを込めてのものだったのだと思われます。そうだとすると、当時の先端技術の象徴として、そして未来性を感じさせる物の代表としてLDが取り上げられたともいえるので、彼らからLDの存在は肯定的に捉えられていた裏返しとも考えられます。しかし、いずれにしろ現実世界の技術の進歩が映画の中の世界より遥かに早かったことはご存知の通りです。
2015年が近づいてきた現在、このようにこの映画の描いた未来を今の視点で見てみると公開当時と別の面白さがあります。先ほどのLDのように現実の方が先に行っているものもあれば、3Dの映像のように現実の進歩と近いもの、テレビ電話のように技術的には実現はしているがあまり普及していないもの、空飛ぶスケボーのように未だに全く現実からは程遠いものもあります。逆に携帯電話やメールのように現実世界では既に一般化しているものであっても映画では全く登場しないものもあります。
ゼメキスもスピルバーグも映画の製作の際に当時の技術水準から未来を予測した面もあると思いますが、一方で技術的な裏付けは薄くとも「こんなのがあったらいいなあ」というような夢の要素も映画に取り入れていたことでしょう。メーカーに勤める者としては、現実の技術を追求するだけでなく、そんな夢の部分も忘れずにいたいものだと思います。
文責:磨墨
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