第33回 タイタニック号と運命を共にした伝説のバンドパイオニア吹奏楽団

コラム

2012年 6月 19日

前回に引き続いて第10回アンサンブルコンサートで演奏する予定の曲に関する話題を取り上げます。今回は「タイタニック」です。

「タイタニック」は元々は1997年に公開された映画で、1912年に起きた豪華客船「タイタニック号」の事故を題材にしています。この映画は当時の興行記録を次々に塗り替えるほどのヒットとなり、それと共にメインテーマ"My Heart Will Go On"も非常に有名になりました。今年はタイタニック号の事故からちょうど100年に当たり、また映画の3D版も公開されたこともあって再び注目を集めています。

このようなヒット作は通常公開後しばらくしてから映画のディスクが販売されますが、「タイタニック」の公開された当時はDVDの黎明期ということもあってLD(レーザーディスク)とDVDの販売が並存していた時期でした。そんな中で「タイタニック」はLD版がDVD版に先行して発売されたため、当時まだまだLDプレーヤを販売していたパイオニアにとってはちょっとした恩恵(?)だったという記憶があります。

事故前のタイタニック号 当時世界最大の客船だった

さて、今でもディスクで当時の感動を味わえる「タイタニック」には多くの名場面があります。最も有名なのは船首でヒロインが主人公に後ろから抱えられながら両手を横に大きく広げるシーンでしょう。しかし、音楽に関係するところでは、事故発生後に沈みゆく船上で乗客を落ち着かせるべく同乗していたバンドが演奏を続けるシーンではないでしょうか。バンドメンバー全員が自らは救命ボートに向かわず、ただ一心に演奏する場面はいつ見ても胸を打つものがあります。

このバンドは映画の主人公やヒロインと異なって実際に存在していたもので、イギリスはランカシャー州出身のヴァイオリニストであるウォレス・ハートリーが率いていました。バンドは計8人で構成されていましたが、その中でもハートリーはタイタニック号への乗船の直前に婚約者にプロポーズをしていたというエピソードがあります。事故発生後、ハートリーの脳裏に婚約者の姿が過ぎったであろうことは想像に難くありませんが、ハートリーら8人は最後まで演奏し続け、結局船と共に運命を共にしています。

映画では、船が沈みつつある中でハートリーらは賛美歌の1つである「主よ御許に近づかん」を演奏しています。とっさに思いついた曲なのかどうか分かりませんが、乗客を落ち着かせるために状況に合った選曲だといえそうです。しかし、実際に演奏されたのがこの曲かどうかは定かではなく、他の曲だったという説も伝わっています。とはいえ、映画でのハートリーらの演奏シーンは非常に印象的であり、曲について他に確たる証拠もないことからこのまま「主よ御許に近づかん」が定説として受け継がれていくのではないかと思われます。

イギリス・ランカシャー州にあるハートリーの胸像

このようにいろいろと言い伝えのあるバンドですが、少なくとも言えるのは自身の死を前にして演奏を続けるハートリーらの精神力は想像を絶しているということです。筆者がその立場であればとても演奏どころではなく、冷静に避難すらできないでしょう。「人の本性はいざというときに出る」といいますが、最後まで演奏し続けたハートリーらに真のプロとしての姿を見る思いがします。

今回のアンサンブルコンサートはこの「タイタニック」のメインテーマや挿入歌をメドレーでお送りします。映像はないものの、さながら映画のダイジェスト版といったところでしょうか。是非ご来場の上、主人公やヒロインの織り成す数々の名場面と共に、ハートリーらバンドメンバーの姿も思い浮かべながら演奏を聴いていただきたいと思います。

文責:磨墨

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