第9回 氷上の『カルメン』パイオニア吹奏楽団

コラム

2011年 2月 14日

いよいよ第21回定期演奏会が今週末に迫ってきました。今回はその定期演奏会前最後のコラムとして、再び第1部のメインプログラムである『カルメン』組曲に関する話題を取り上げてみることにします。

さて、冬のスポーツといえばいろいろとありますが、人気の高いものの1つとしてフィギュアスケートが挙げられます。ご存知の通り曲をバックに選手が氷上で演技をするわけですが、実はそのフィギュアスケートの曲に『カルメン』組曲は数多く採用されています。

まず記憶に新しいところでは、昨年のバンクーバー五輪でアメリカ代表として出場した長洲未来選手が『カルメン』を演じ、見事4位に入賞しました。非常に伸びやかな演技だったのが印象的です。長洲選手はまだ若いので、将来が楽しみですね。

日本の選手たちも活躍したバンクーバー五輪の開会式の様子

フィギュアスケート史上では、1984年のサラエボ、1988年のカルガリーの両五輪で金メダルに輝いた旧東ドイツのカタリナ・ビット選手の『カルメン』が有名です。「銀盤の女王」と呼ばれたビット選手はカルガリー五輪のときに『カルメン』を採用したのですが、ライバルであるアメリカのデビ・トーマス選手も同じく『カルメン』を採用したため、メディア上で”Battle of the Carmens(カルメン対決)”と銘打たれ話題になりました。ミスはあったものの熾烈な争いを制したこのときのビット選手の芸術的な演技は、今でもフィギュアスケートファンの間で語り草になっています。

この『カルメン』を演じるのが女性スケーターだけの特権かというと、決してそうではありません。2000年代を代表する男性スケーターで2006年のトリノ五輪を制したロシアのエフゲニー・プルシェンコ選手は、2002年のソルトレイクシティ五輪のときに『カルメン』を演じています。五輪直前の試合でライバルである同じロシアのアレクセイ・ヤグディン選手に敗れ、このままでは勝てないと思ったプルシェンコ選手は、急遽『カルメン』にプログラムを差し替える、という賭けに出たのですが、再びヤグディン選手に敗れてこの五輪では結局銀メダルに終わりました。それでもこのときの演技は圧巻だったという記憶があります。

ウィンタースポーツの華・フィギュアスケート Photo : Tsutomu Takasu

日本の選手も『カルメン』を演じています。五輪のときではありませんが、村主章枝選手、安藤美姫選手、そして浅田真央選手も採用したことがあります。当時中学生だった浅田選手が採用したときには「まだ早いのでは」という声もありましたが、その演技たるや堂々としたものでした。今になって振り返ってみると、浅田選手にとって『カルメン』を演じることは大人の女性への1つのステップだったのかもしれません。

それにしても、これほどまでに『カルメン』がフィギュアスケートで演じられるのはなぜなのでしょう。理由はいろいろとありそうですが、曲の知名度が高く審判や観客に理解されやすいこと、選手が役になりきりやすいこと、多彩な振り付けが考えられること、組曲なのでその中から演じやすいものを選択しやすいこと、などが挙げられるでしょうか。少なくとも言えるのは、『カルメン』がフィギュアスケートとは非常に相性がいいということですね。

このように見てくると、『カルメン』は図らずも音楽界だけでなくスケート界にも多大な影響を及ぼしてきたことが分かります。天国の作曲者ビゼーもさぞ驚き、そして喜んでいることでしょう。全然スケールは違いますが、我々も負けずにビゼーの想像を超えるような演奏(!)を目指したいものだと思います。

文責:磨墨

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