第12回 単なるマーチではない?「アンパリト・ロカ」パイオニア吹奏楽団

コラム

2011年 4月 4日

東北地方太平洋沖地震の発生後、当団もしばらく活動を休止していましたが、4月に入ってからは再開しています。今回は、2月に開催した第21回定期演奏会からやや時間は経ってはいるものの、その定期演奏会のアンコールの最後にお送りした「アンパリト・ロカ」について述べたいと思います。

「アンパリト・ロカ」は1925年にスペインの作曲家ハイメ・テキシドールによって作曲されました。テキシドールは生涯で数百曲に渡って作曲していますが、「アンパリト・ロカ」はその中でも代表作とされるものです。スペインの音楽としては世界的に有名なものの1つであるため、たとえタイトルは分からずとも、聴けば何となく知っているように感じる方も多いことでしょう。

テキシドールの故郷バルセロナで野外演奏するバンド

曲名は何やらスペイン語の呪文のような響きがありますが、これにはちゃんと由来があります。テキシドールは作曲家やサックス奏者として活動する傍ら、音楽学校で教えていた時期もありました。この曲を書いたのはちょうどその頃に当たるのですが、当時生徒の1人に「アンパリト・ロカ」という少女がいて、彼女の名を曲名に採用したということです。なぜこの少女の名をタイトルにしたのかは明らかではありませんが、もしかしたらテキシドールにとって彼女が特別に印象的だったのか、あるいは教えているうちに何か曲の閃きを得たのかしれませんね。

こんな思いつきのような(?)経緯で名づけられた「アンパリト・ロカ」は吹奏楽版ではマーチ(行進曲)として出されていますが、元々は「パソドブレ」の曲であるという面も持っています。「パソドブレ」とは、男女ペアとなり、スペインのマーチ風の音楽に乗って踊るダンスです。伝統あるこのダンスでは、一般的には男性は闘牛士を、女性は闘牛士の持つ赤いケープを演じます。スペインの国技と言われる闘牛は、このようにダンスにまで及ぶほどその影響力が強いということが見て取れます。

闘牛士の振る舞いがダンスになるところがいかにもスペインらしい

さて、ここまで読み進めると、なぜ我々がこの曲をアンコールに採用したのかピンと来る方もいるもしれません。先に行った当団の定期演奏会のメインプログラムは『カルメン』組曲であり、その中で「闘牛士」や「闘牛士の歌」といった曲が登場しました。それに引っ掛けてこの曲をアンコールに選んだわけです。こんなところまで綿密に計算して全体のプログラムを構成していました。・・・というのは大ウソで、選曲のときには「アンコールではスペインのマーチを何かやろう」という程度の感覚でした。後になってからこのようにいろいろと分かった次第ですが、結果論とはいえ、いい選曲だったと我々は勝手に自賛(!)しています。

演奏会の最後にアンコールの拍手をいただくのは非常に有難いことですが、一方でアンコールの曲がどういったものなのか事前に紹介するわけにはいかないのが悩ましいところです。そういった背景から、前々回・今回とアンコールにお送りした曲に関する話題を取り上げてみました。普通の曲紹介ではなくコラムという体裁ではありますが、読まれた方にとって少しでも理解の助けになるであれば幸いに思います。

文責:磨墨

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