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2012年 6月 4日
「演奏会情報」を見てもお分かりの通り、当団の第10回アンサンブルコンサートの曲目が概ね固まりました。今回はそれらの曲目の中から、その主題歌を吹奏楽アンサンブル版でお送りする予定の「天空の城ラピュタ」に纏わる話を取り上げます。
今更説明するまでもないかもしれませんが、「天空の城ラピュタ」は1986年にスタジオジブリによって製作された映画です。「ラピュタ」はその映画の中でラピュタ人が建造した空中に浮かぶ城のことを指し、ここを巡って物語は進行します。映画は現在でも根強い人気を誇っており、主題歌や劇中曲も映画同様広く知られています。
この映画を見ると、ラピュタのモデルはあるのだろうか、と多くの方が思うことでしょう。現実には空中に浮かんでいる城などないのですが、何かそれに近い存在があるのでは、と思わず想像してしまいますね。製作したスタジオジブリはモデルの存在について一切否定していますが、それでも何かそれらしいところはないのかの探ってみたくなるのが人情というものです。ここでは巷に伝わる「天空の城」を見てみることにします。
シリアにある「天空の城」クラック・デ・シュヴァリエ
まず有名どころでは、ペルーの世界遺産であるマチュピチュがあります。標高2,000mを超えたところにあるこの遺跡は「城」という感じではないものの、「空中都市」と表現するにはピッタリの場所です。ここは未だに多くの謎に包まれており、それも相まってラピュタのモデルではないか、と唱えるファンもいるのだと思われます。
フランスのモン・サン・ミッシェルもモデルとして引き合いに出されることの多い所です。有名な修道院の姿は天空というよりは孤島に浮かんでいる感じですが、歴史的には英仏海峡を臨む要塞としての役割を果たした時期もあり、そういった点を勘案すると「城」のモデルとしてはちょうど当てはまるかもしれません。
文字通り「天空へ向かうように丘や峰の上にそびえ立っている城」としては、シリアのクラック・デ・シュヴァリエが知られています。十字軍時代に築かれたこの城は保存状態もよく、「アラビアのロレンス」で知られるトーマス・E・ロレンスが「世界で最も素晴らしい城」と述べたという話も伝わっています。筆者も訪れたことがありますが、その光景は壮観でした。
城や都市ではないものの、「天空の城」を連想させる所としては他にタイ・カンボジア国境にあるプレアビヒア遺跡やミャンマーのポッパ山があります。特に後者は特異な形の山の上に寺院のある姿がまるでアニメに出てくるような光景であり、一部のファンの間で「天空の城」と称されているのも分かるような気がします。
ミャンマーの聖なる山・ポッパ山 Photo : Ralf-Andre Lettau
日本にも「天空の城」と呼ばれているところがあります。兵庫県朝来市にある竹田城がそれです。戦国時代は織田家と毛利家の争いの最前線にもなった山城で、現在は国から史跡に指定されています。日本城郭協会からも「日本100名城」の1つに選定されているほか、城周辺でも観光スポットとして注目を集めるべく「天空の城」と記したノボリが掲げられています。
以上のように見てくると、ラピュタのモデルと考えられるような場所は多々存在することが分かります。とはいえいずれもが俗説に過ぎませんが、全くの架空の話が展開されながら現実への近さを感じさせるところに「天空の城ラピュタ」の魅力があるように思われます。その架空と現実の狭間を我々は似たような場所を訪れることによって想像し楽しんでいるのでしょう。当団の演奏がそんな想像を掻き立てるほどのものかどうかは分かりませんが、曲を聴きながらこのようにモデルと思われる所をいろいろと思い浮かべるのも音楽の楽しみ方の1つなのではないかと思います。
文責:磨墨
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