第76回 「エジプト行進曲」とスエズ運河パイオニア吹奏楽団

コラム

2015年 8月 3日

当団の第13回アンサンブルコンサートが終了しました。演奏会当日は雨天にも関わらず多くの方々にご来場いただきました。誠にありがとうございます。

さて、その第13回アンサンブルコンサートでは「エジプト行進曲」を木管5重奏でお送りしました。「エジプト行進曲」はヨハン・シュトラウス2世によって書かれた曲で、1869年のスエズ運河の開通に合わせて作曲されました。ヨハン・シュトラウス2世は「ワルツ王」として知られていますが、行進曲も数多く残しており、「エジプト行進曲」の他にも「ペルシャ行進曲」や「スペイン行進曲」が有名です。余談ですが、パイオニア本社のロビーにはヨハン・シュトラウス2世の像が飾られています。

パイオニア本社のロビーにあるヨハン・シュトラウス2世の像

改めて説明するまでもありませんが、「エジプト行進曲」の作曲の動機となったスエズ運河は地中海と紅海を結ぶ運河です。アイデア自体は古代エジプトの頃からあったようですが、実現するとなると途方もない巨大事業であり、長年に渡って人類の夢の1つでした。スエズ運河の開通によりそれまでヨーロッパとアジアの間を航行するにはアフリカ大陸を回らなければならかったところが不要になり、航行日数が大幅に縮まったことで海運に劇的な効果をもたらしました。現在でも世界の海運の要衝であり、日々多くの船舶が航行しています。

スエズ運河の着工は1858年のことで、開通まで10年余りを要しました。「夢の運河」であるスエズ運河の開通時には世間の関心は最高潮に達していたことと想像されます。開通式には各国の王室など賓客が多数訪れ、実際にスエズ運河を航行し祝福しました。そんな世間の空気を察してか、既に作曲家として確固たる地位を築いていたヨハン・シュトラウス2世も「エジプト行進曲」を作曲したものと思われます。

スエズ運河の開通に合わせて書かれた曲は他にもあり、代表的なものはジュゼッペ・ヴェルディのオペラ「アイーダ」です。作曲にとりかかってからあまり時間がなかったこともあり、残念ながら「アイーダ」の完成はスエズ運河の開通後になりました。とはいえ、「アイーダ」はヴェルディの代表曲の1つといえるものであり、スエズ運河がこの名曲が生まれる土壌になったのは間違いないことと思われます。当団でも第9回アンサンブルコンサートにおいて「アイーダ」の第1幕に出てくる「勝ちて帰れ」を取り上げたことがあります。

開通直後のスエズ運河の様子

筆者は実際にこのスエズ運河を訪れたことがありますが、そのスケールに驚くばかりでした。重機があまり発達していなかった19世紀に開削したことを鑑みると、正に想像を絶する事業であったといえます。航行する巨大なタンカーは、スエズ運河が世界の動脈であることを如実に表すものでした。現在は当時よりも遥かに技術が進んでいますが、今後もこれほどのスケールの事業が行われることはなかなかないものと思われます。

スエズ運河は今年拡張工事を終え、更に巨大な船舶が航行可能となる見込みです。世界の動脈がより太くなったといえるでしょうか。「エジプト行進曲」と共に、スエズ運河の新たな時代の幕開けを感じたいものだと思います。

文責:磨墨

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