第51回 日本にある「エル・カミーノ・レアル」パイオニア吹奏楽団

コラム

2013年 9月 2日

吹奏楽の作曲家の中で大家といえば誰でしょうか。いろいろな名前が挙がりそうですが、少なくともアメリカの作曲家であるアルフレッド・リードを挙げない人はいないでしょう。リードの代表曲としては「アルメニアン・ダンス パートI」「同パートII」「春の猟犬」などが挙げられますが、当団でも今までその作品をよく取り上げている作曲家の1人です。

リードの作品としては、「エル・カミーノ・レアル」もまた有名です。1985年に作曲されたこの曲は今もなお人気であり、当団でも第7回定期演奏会においてこの「エル・カミーノ・レアル」を演奏したことがあります。

その「エル・カミーノ・レアル」は、スペイン語で「王の道」という意味です。実際にアメリカのカリフォルニア州にスペイン植民地時代からあった道で、現在のサンフランシスコからサンディエゴまで1000km近くの長さに渡っていました。この道に沿ってキリスト教の布教を目的とした伝道所があったのですが、当時のスペインなどの列強の植民地政策とキリスト教の布教活動との密接な関わりを考えるとそれも当然のことと思われます。ちなみにサンフランシスコの名前は、キリスト教の修道会の1つであるフランシスコ会に由来しています。

横浜市の山下公園にある「エル・カミーノ・レアル」のミッション・ベル
"EL CAMINO REAL"という刻印が見える

その後、カリフォルニア州はアメリカの領土となり、20世紀に入って「エル・カミーノ・レアル」はハイウェイとして整備されるようになります。そうなると伝道所のあった歴史の痕跡も薄れていく可能性があったわけですが、それに対して保存活動が起こり、その結果ハイウェイに沿って「ミッション・ベル」が建てられました。ミッション・ベルは今も「エル・カミーノ・レアル」の象徴として残っており、リードはこの道にヒントを得て「エル・カミーノ・レアル」を書いたと言われています。

そんな歴史を持つ「エル・カミーノ・レアル」ですが、日本にも横浜市に「ミッション・ベル」があります。アメリカにあるはずのものが日本にあるとは奇妙な話に聞こえますが、背景には横浜市と「エル・カミーノ・レアル」の通るサンディエゴが姉妹都市であることがあり、それを記念して山下公園にミッション・ベルの複製が建てられました。

実際に山下公園に行くと、中央広場の池の周りにミッション・ベルが建っているのが分かります。観光スポットとして有名というわけではなく、また周りの風景とミッション・ベルがマッチしていることもあって、山下公園を訪れる方のほとんどがミッション・ベルを素通りしていきます。とはいえ知る人ぞ知るスポットではあり、ミッション・ベルの足下にある記念碑の文を読むとその歴史の一端を垣間見ることができます。

ミッション・ベルの由来を解説した記念碑

この横浜市のミッション・ベルにはリードも訪れたことがあります。親日家であり、日本に多くのファンを持つリードはたびたび来日しましたが、このミッション・ベルを見たときにはコンサートとはまた違った感慨に耽ったことでしょう。

リードは2005年に亡くなりましたが、その命日がもうじき(9月17日)やってきます。横浜市のミッション・ベルにはリードについて特別に何か触れているわけではありませんが、もし近くを通ることがあれば寄ってみては如何でしょうか。リードの残した曲と共に「エル・カミーノ・レアル」の歴史を感じるいい機会になるのではないかと思います。

文責:磨墨

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