第68回「身体で聴こう音楽会」とのコラボレーションパイオニア吹奏楽団

コラム

2014年 10月 1日

一般的に「音楽を楽しむ」というと、演奏会場においてであれオーディオ機器を通じてであれ「耳で聴いて楽しむ」のが普通です。このように書くと「何を当たり前のことを」と思われる方もいるでしょう。しかし聴覚に障害を持つ方々にとってはそれが当たり前のことだとは言い切れません。そんな中で、そのような方々にも音楽を楽しんでいただければ、とパイオニアはかつて「体感音響システム」を開発した経緯があります。今回はこの体感音響システムに関する話題を取り上げたいと思います。

体感音響システムとは何かというと、体と接触する部分が振動するポーチやクッションと、音量調整が可能なヘッドホンを通じて音楽を楽しむ装置です。約30年前に初代のシステムが開発され、その後改良を加えて今日に至っています。このシステムだけでどんな聴覚障害者に対しても完全に音楽を再現できるわけではありませんが、聴覚の補助としては非常に有効なものです。

そしてパイオニアでは、ただシステムとして提供するだけでなく、それを実際に使った演奏会を開いています。それが「身体で聴こう音楽会」です。現在は専任の事務局が主体となって活動を推進しています。

ホールの座席に取り付けられた体感音響システム

さて、このような「身体で聴こう音楽会」を開催しているパイオニアなのですから、当団とも連携しないはずがありません。いつもというわけではありませんが、会社から話が来たときには当団も積極的に協力しています。

協力の具体的な内容は、当団の演奏会の会場の一部座席に体感音響システムを取り付け、そこに聴覚に障害を持つ方々を招待するというものです。聴覚障害者への演奏会の広報やシステムの取り付けの実作業は会社の募るボランティアの方々が行うのですが、会場側の設備の確認等もあるので、当団もスムーズに事が運ぶように打合せの段階から関わっています。演奏会当日はシステムのチェックも入念に行います。

このような準備を経て本番に迎えます。開場すると、この日を楽しみにしていた聴覚障害者もホールに大勢入ってきます。これらの方々を用意した席に案内するのですが、それで終わりかというとそうではありません。演奏会は音楽だけでなく司会も入るので、手話通訳が必要になりますが、この手話通訳もボランティアの方々が担当しています。システムだけでなく、人間同士の関わりも重要だということがよく分かりますね。

リハーサル時に体感音響システムを確認するボランティアの方々

ここまでくると当団としてはいい演奏をお届けするだけです。聴覚障害者にとっては、体感音響システムを介して音楽を聴くと補聴器のみで聴くのとはまるで違うということで、演奏している側も舞台の上からその様子が窺えます。特に管楽器や打楽器といった音量の出る楽器が中心の吹奏楽と体感音響システムとの相性は良く、その迫力の伝わり具合に感動される方も多いようです。

しかし、本当に大切なのは演奏の出来以前に気持ちなのかもしれません。たとえ音楽としては物理的に完全には聴こえなかったとしても、音楽に対する想いだけは聴覚障害者にも健聴者にも関係なくストレートに伝わるような気がします。綺麗事のような話ですが、演奏会を終えるといつもそう感じます。

「身体で聴こう音楽会」はパイオニア本社のある川崎市を中心に定期的に開催されています。体感音響システムの設置数には限りがありますが、席に余裕があれば健聴者の方でも使用することが可能です。もし機会があれば、「身体で聴こう音楽会」に参加されては如何でしょうか。聴覚障害者であれ健聴者であれ、一般の演奏会とは違った音楽体験ができることと思います。

文責:磨墨

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