第8回 名曲の礎となった「アイ・ガット・リズム」パイオニア吹奏楽団

コラム

2011年 2月 1日

2月に入り、第21回定期演奏会が近づいてきました。今回は第2部のトリを飾る予定の「クレイジー・フォー・ユー・メドレー」を取り上げます。

「クレイジー・フォー・ユー」は1992年に製作されたミュージカルです。ストーリーはアイラ&ジョージのガーシュウィン兄弟が中心になって製作されたミュージカル「ガール・クレイジー」を下敷きにしています。曲は「ガール・クレイジー」同様、ジョージ・ガーシュウィンのものが使われており、舞台設定もガーシュウィン兄弟が活躍した1930年代のニューヨークになっています。上演当初から絶賛され、ブロードウェイでロングランとなりました。日本では劇団四季が公演を行っており、これまた好評を博しています。

1930年代前半のニューヨーク 当時は世界大恐慌の真っ只中

作曲者のジョージ・ガーシュウィンは、「ラプソディ・イン・ブルー」や「巴里のアメリカ人」といったクラシックの分野で知られる一方、ジャズやミュージカルにおいても大きな足跡を残しています。「クレイジー・フォー・ユー・メドレー」では、そのようなガーシュウィンの曲が次々と出てきます。

そのメドレー中の曲のうち、最も有名といえるのが最後に登場する「アイ・ガット・リズム」でしょう。今ではジャズのスタンダードナンバーの1つであり、最近では某保険会社や某ファーストフードチェーンのCMにも使われていました。

そんな「アイ・ガット・リズム」は、曲名が意味するところの「リズムを得た」というよりは「コードを得た」ことによって後世に大きな影響を及ぼしています。この曲のコード進行(伴奏の和音の進行)は、その素晴らしさからコード進行はそのままにメロディだけを変えた曲が次々と現われました。簡単にいえばアドリブを誘発したわけです。あまりにも多く使われるようになったため、このコード進行は「リズム・チェンジ」という1つの形式として定着しました。日本語では「循環コード」という何ともリズム感に欠ける(?)音楽用語になるのですが、リズム・チェンジは今ではジャズを志す者にとって習得すべき基本の1つとなっています。

チャーリー・パーカーも演奏している
「アイ・ガット・リズム」のレコード盤

そしてこのリズム・チェンジの影響を受けた代表格が前回のこの欄に登場した「モダン・ジャズの父」チャーリー・パーカーです。パーカーの送り出した名曲「アンソロポロジー」や「ムース・ザ・ムーチェ」はこのリズム・チェンジに基づいています。したがって、「アイ・ガット・リズム」はモダン・ジャズの形成に大いに寄与したといえるでしょう。音楽の系譜はこのように紡がれていくのだなあ、と改めて感じさせられますね。

「アイ・ガット・リズム」が発表された1930年は、歴史の教科書にも出てくる世界大恐慌の最中に当たります。当時は曲調とは対照的な空気の世の中だったわけですが、ガーシュウィンにとってはひょっとしたらそのような閉塞感を打ち破ろうとする気持ちが作曲へのエネルギーになっていたのかもしれません。同様に長引く不況に見舞われている現在、我々もそんなことを忘れられるような演奏をしたいと思います。是非ご期待下さい。

文責:磨墨

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