第54回 グスターヴ・ホルストと吹奏楽パイオニア吹奏楽団

コラム

2013年 11月 18日

「演奏会情報」をご覧になってもお分かりの通り、当団の第24回定期演奏会のプログラムが固まりました。今回はその中でメインプログラムとしてお送りする予定の「吹奏楽の為の組曲 第1番」に関する話題を取り上げたいと思います。

「吹奏楽の為の組曲 第1番」は20世紀の初めにイギリスの作曲家グスターヴ・ホルストによって書かれた曲です。「吹奏楽の為の組曲」は第2番まであり、それぞれ「第1組曲」「第2組曲」とも呼ばれます。2曲共に吹奏楽の世界では知られた曲であり、演奏会における定番曲でもあります。

7台のティンパニが登場した第23回定期演奏会での組曲『惑星』

当団では前回の定期演奏会でもホルストの作曲した組曲『惑星』より「火星」「木星」を演奏しました。図らずも2回連続でホルストの曲を取り上げることになりますが、それだけホルストの存在が大きいということの証左でもあると思われます。

過去を振り返ると、ホルストの作品としては他に第4回ミニコンサートのときに「第2組曲」、第11回定期演奏会のときに「第1組曲」、そして第13回定期演奏会のときに「ムーアサイド組曲」をいずれもメインプログラムとして演奏しています。というわけで、「第1組曲」を取り上げるのは2回目ということになります。

その「第1組曲」は、元々はイギリス軍楽隊のために書かれました。続く「第2組曲」も同様です。当時はまだ吹奏楽というジャンルが完全には確立されておらず、イギリス軍楽隊もオーケストラからのアレンジ曲などを中心に演奏していました。そんな中でホルストは管楽器と打楽器の編成からなる「第1組曲」「第2組曲」を書いたわけですが、やはり編成の関係もあって作曲された当初からすぐに取り上げられたわけではありませんでした。当時のホルストは悶々としていたかもしれません。

しかし、1920年代に入ってから公の場で演奏されるようになってくると、「第1組曲」「第2組曲」共に徐々に評価を上げるようになります。そしてついには他の作曲者にも管楽器・打楽器の編成で独自の曲が構成できることを認識させるに至ります。そういった点でホルストが吹奏楽の歴史において果たした役割は非常に大きいと言えるでしょう。

グスターヴ・ホルスト

そんな経緯をたどった「第1組曲」「第2組曲」ですが、吹奏楽としての編成が固まっていなかった歴史的事情もあって独特の編成をしています。基本は19のパートから成り立っているのですが、同時に17ものアドリブパート、つまり演奏時に必ずしも割り当てなくてもよいパートも存在しています。当時のイギリス軍楽隊の人数は20人から30人だったそうで、現在の大編成とされる吹奏楽の人数よりも少ないものですが、ホルストがこのような柔軟性のある編成の作曲をしたお陰で現在の大編成の楽団でも普通に演奏できるようになっています。これもホルストの先見の明、と言っては言いすぎでしょうか。

以上のように見てくると、「第1組曲」「第2組曲」共に現在の演奏会の定番となっているのも当然という気がします。とはいえ、そもそも曲そのものに魅力がなければここまで演奏されることもないはずであり、当団が2回目の「第1組曲」を演奏する理由の1つもその点にあります。「吹奏楽の原点」とでも言ってもよいこの曲ですが、今回は前回の演奏時とはまた違った2回目ならではの演奏をお送りできればいいと思います。是非ご来場下さい。

文責:磨墨

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