#09 キューバ編 サウンドバムガイド

キューバ(Cuba)

カリブ海に浮かぶ島国。1959年の革命以来、社会主義国としての道を歩む。スペイン人と黒人の文化の融合によるラテン音楽の宝庫。近年、映画「ブエナビスタ・ソシアルクラブ」を通じ世界的に再注目された。

アクセス

空路
  • 日本 → アメリカ(飛行機)
  • アメリカ → メキシコ(飛行機)
  • メキシコ→ キューバ(飛行機 約2時間)

通貨

キューバ国内の通貨はペソ。しかし、ホテルの宿泊費やショッピングをはじめ、観光をめぐるすべてはUSドルで支払う。VISAやMasterのカードも使えるが、アメックスやアメリカン・エキスプレスなど米国系のものは一切使用できない。(街角のドルショップへ行くと、キューバの人々が、手に入れたUSドルで配給品以外の生活食材や雑貨を入手している様子が垣間見れる)

気候

年間平均気温は約26度。温暖で過ごしやすい。乾期は11~4月。雨期は7~10月だがスコール型。

サウンドバム

町のいたるところに音楽があるという話は、多くのガイドブックに書かれている通り。街角のカフェやライブハウスの多くは屋外に開かれていて、路を歩いていると、様々な演奏が次々と耳に飛び込んでくる。果実をたわわに実らせた樹が、そこかしこに生えているような、そんな印象。
5/1のメーデーに訪れると、カストロ議長の演説とそれを囲む10万人の人々による歓声・歌声・演奏など、世界唯一のメーデーが経験できる。

西村佳哲とサウンドデザイナー・岡田晴夫による
キューバ島編
サウンドバム対談

西村 岡田さん、カリブ海の国ははじめて?
岡田 です。
西村 音の旅が好きな連中には、「いつかは一度!」っていう憧れの地ですよね。
岡田 むかしフロリダのキーウェストをロケしたことがあって、距離的にはかなり迫っていたんだけど....。地図で観るとバハマやジャマイカ、そしてプエルトリコとか、いつか!と思っていた国が他にも沢山このあたりに集中しているんだね。

西村 たしかにジャマイカのレゲエとか、トリニダードのカリプソといった気になる音楽、しかも作物系のそれが多いですよね。
岡田 作物系って?
西村 駒沢敏器さん(「地球を抱いて眠る」などの著者)の受け売りですけど、音楽ってその土地の作物みたいなものだと思うのです。カリプソもソンもレゲエも、その辺の道端に花が咲いているみたいに、路上で自然に演奏されている。自然物のような音楽が、暖かい地域には多いですよね。

岡田 僕はカリブ海の中でも、やはり特にキューバかな。子供の頃からラジオなどでラテン音楽には親しんでいたしね。「ブエナビスタ・ソシアル・クラブ」の映画を観て、再び火が入ったっていうか。
西村 日本のラテン音楽ブーム第一世代は、いま何歳くらいの人たちなんだろう。行きの飛行機の中で、六本木のキューバ料理レストラン主催のツアーの人たちと席が隣だったんです。僕の横に座ったおじさんは白髪の初老の方でね。海外旅行にあまり慣れていないようで、スチュワーデスとのやり取りをはじめ、機内ではすごく緊張してギクシャクしていらしたんです。
けど、キューバの音楽の話になると妙に詳しくて。あのパーカッショニストはまだ元気か、誰々は今も演奏しているのか云々。何度もキューバに行ったことがあるかのような話っぷり。でも、多分はじめてだったはず。

西村 ハバナの街の印象は?
岡田 ヴィム・ヴェンダースの映画のハバナの街並みがとても魅力的だったんだけど、うーん。実際あのとおりだったね。あと歩いていると、あちこちから様々なリズムが聞こえてきたよね。

西村 到着した日の夜、はじめて外へ出て行った時は、遠くから音楽が聴こえてくるだけでもうウキウキしちゃいましたね。
岡田 意外だったのは、ストリートミュージシャンにあまり出会わなかったことかなあ。
西村 リスボンもそうでしたね。あの時は、若い連中が楽器を買う財力がないから、ってガイドさんが話してくれたけど。キューバはどうなんだろう。

西村 反響が強い石造りの街並みは、朝、ホテルの部屋で目を覚ました時に聴こえてくる外の音が、気持ちいいんですよね。
岡田 夜更けの路地も、気持ちよく響いてたよ。ホテルのベランダから聴こえる朝のラッシュの音は、いつまで聴いていても飽きなかったね。

西村 宿でもないのに、ホスピタリティでしたね。いや宿じゃなくて、半ば個人的なゲストとして寄せていただくから、ああなんですよね。
岡田 長いあいだスペインが統治していたから。窓から聴こえる街の喧噪には、ヨーロッパの印象が強かったね。もちろん、人々が交わしているスペイン語のせいもあるか。

西村 今回、印象に残っている音は?
岡田 やはり街角の演奏の音だよね。食事のたびに、あるいはお酒やお茶をしにCafeに入るたびに、それぞれの店にバンドがいて演奏してた。バンドごとに編成やリズムに特徴があって、ほとんどは電気ナシで生演奏していて、かつ各楽器のバランスがとれているのが不思議。
西村 生演奏で育ってきた音楽だから、自然にバランスが取れているのは不思議ではないでしょう。

岡田 あとね、現地で見つけて出かけた自然公園の音が良かったな。

西村 サンティアゴ・デ・クーバ郊外のバコナオ公園ですね。海辺に野豚がいた。
岡田 あのあたりは、保護指定地域でなくてもじゅうぶん自然が残っていて、湖も林も、そのままの自然がキープされていたように思う。今回は人間が奏でる音楽を中心に組んだけど、自然系を中心に組んでも、キューバにはたくさんバムポイントがあるような気がしました。
西村 人間の音楽の方は、「ブエナビスタ....」でお馴染みの『チャンチャン』が多かったですね。
岡田 毎晩一回は必ず聴いたね、っていうか聴かされた。(笑)
西村 もちろんいい旅だったけど、USドル獲得のための彼らの演奏ぶりに、ちょっとだけ疲れちゃった部分もあるんだけど。

岡田 もう一度キューバに行く時は、観光客のためではなく、自分たちのフェスティバルのための音楽を聴きたいね! 野球場は、準々決勝戦あたりから、スタンドが大パーカッション大会になるらしいよ。そういうのを聴いてみたいね。

西村 参加者の女の子達、踊ってましたね。:-)
岡田 気持ちよさそうだったねえ。オプションでパーカッション教室も体験したけど、キューバに行く前に基本的なステップやリズムを覚えて行くと、旅の充実度はぐっと増すね。間違いなく。
西村 いろんな感覚をつかって、旅を楽しめるのがいいですよね。

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