坂本:最初はワーキングホリデーで行ったんですよ。本格的に仕事を探してもみたんですが、ワーキングホリデーのビザがあるのとないのでは、雲泥の差なんですよね。2カ月くらい探してみたけどダメで、その足で感傷旅行へ。目指した場所は、カナダの北のほうのユーコン州。ユーコンって「大きな川」って意味なんですけど、そのままアラスカ大陸の終点まで行こうと。
坂本:一年のうち、白夜の時期をはずして最低3カ月、余裕があれば半年ほど。それがこの8年間ずっと続いています。僕はカナダのイエローナイフっていう土地を中心に撮っているんですけど、あそこにオーロラ観察ツアーで来る人の99%は日本人。地元の人達は不思議がっています。
坂本:ええ、30センチくらいあれば。そして氷に覆われていても、中ではちゃんと水が流れているんです。テントの中で床に耳をつけると、氷の下を流れていく水の音が聴こえてきたり。1、2月頃の厳寒期は、本当に周囲が無音の世界なのでなおさらですね。眠れない夜とか、寝袋を伝って自分の鼓動が聴こえてくるほどです。
坂本:波の音にしても、いつも耳にしていると馴れちゃうじゃないですか。でも、まったくの無音のなかで聴こえてくるちょっとした音は、人間をすごく敏感にしますよね。でも春が近づいてきて、フクロウの鳴き声や渡り鳥が渡ってくる音、そういうのが再び耳に飛び込んでくると、妙に懐かしくてね。前の年に南へ向かっていった同じ鳥たちを見てるから、あ、季節が巡ってきたなと、帰ってきたなと。坂本昇久(さかもとのりひさ)
1964年東京生まれ。25才のとき、ワーキングホリデーでカナダへ。その後、旅先の街でオーロラ・スライドショーに出会い、強く感動。以来カナダ・イエローナイフでの滞在を重ねつつ、オーロラの写真を撮りつづけている。著作に『オーロラ・光ふる夜』(文:湯川れい子/PHP研究所)、『天の衣・夜の破片』(大和書房)など。