報道資料:小型で超高感度な「HEED冷陰極HARP撮像板」の高解像度化を実現

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Pioneer
2006年 9月 25日
パイオニア株式会社

小型で超高感度な「HEED冷陰極HARP撮像板」の高解像度化を実現~ 夜間でも照明なしに鮮明に撮影できる標準テレビ用「小型超高感度カメラ」の実現に向けて前進 ~

 パイオニア株式会社はNHKと共同で、昨年開発に成功した小型で超高感度な撮像デバイス「HEED冷陰極HARP撮像板」のさらなる高解像度化を実現しました。
 これにより、夜間でも鮮明なカラー撮影ができる省電力の標準テレビ用「小型超高感度カメラ」の実用化に向けて大きく前進し、近い将来、民生用製品への応用が期待されます。

 NHKが中心となって開発したHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)膜は、入射光を電荷に変換し、この電荷を膜の内部で増倍することで、高い感度が得られる光電変換膜です。NHKではこれまでに、このHARP膜と熱電子源とを組み合わせた超高感度なHARP撮像管※1、およびこれを適用したカメラを開発・実用化し、夜間の緊急報道やオーロラ撮影などの科学番組制作で活用してきました。

 一方、パイオニアが1997年に発明したHEED(High-efficiency Electron Emission Device)※2は、冷陰極型※3の平面状の電子源で、低い駆動電圧で安定的に電子を放出できるなど、優れた特長を有しています。当社は2005年に、LSIによる駆動回路との一体化を実現し高性能※4なアクティブ駆動型※5HEED冷陰極アレーを開発しました。

 パイオニアとNHKは昨年、この「HEED冷陰極HARP撮像板」の共同開発を発表しましたが、今回、画素を小さくして画素数を約6倍に増やすことで、標準テレビ放送で使用できる撮像板の開発に成功しました。すなわち、デバイス全体のサイズを変えることなく画素数を約5万画素(256×192)から約30万画素(640×480)へと増加させました。これは、画素サイズを従来の50μm×50μm(マイクロメートル)から20μm×20μmへと微細化することで実現しました。
 この画素サイズの小型化は、駆動電圧を上げずに約10倍の電子放出密度を達成するなどHEEDの基本性能を向上させたことにより実現したものです。
 また今回はLSIも、内蔵する駆動トランジスタの小型化、高性能化を図るべく新規開発いたしました。

 今回のこれらの特長を有する「HEED冷陰極HARP撮像板」の高解像度化により、報道現場などで求められている機動性の高い小型超高感度カメラの実用化に目処をつけるとともに、将来、ハンディカメラ、車載用暗視カメラ、防犯用監視カメラなど、民生用製品への応用が期待されます。今後、それぞれの用途に応じた信頼性と生産性を確保し、早期実用化を目指してまいります。

【技術用語注釈】

※1:アモルファスセレンを主成分とするHARP光電変換膜を用いた撮像管。付加ノイズのないアバランシェ増幅により、CCDの感度を大幅に上回る超高感度での撮像が可能。
※2:固体中に発生させた高エネルギーの電子を放出する方式の冷陰極としては驚異的な電子放出効率を有する、パイオニア独自の電子放出素子。
※3:電界により真空中に電子を放出させる素子。旧来のフィラメントからの熱電子放出に対して熱を必要としないので冷陰極と呼ばれる。高速応答、低消費電力が特長。
※4:放出電流密度約1A/cm2以上
※5:画素ごとに駆動トランジスタを配し、素子の周辺に作り込んだ制御用回路からの信号により駆動する方式。素子内に駆動回路を含まず、縦横2方向に電極を配し、外部から電圧をかけることで交点の画素を選択駆動する単純マトリクス駆動と比べて、画素を高速で駆動するのに適する。また、微細で多画素な素子の実装において、配線が少数ですむという利点がある。
HEED冷陰極HARP撮像板の構造

図1 HEED冷陰極HARP撮像板の構造

HEED冷陰極HARP撮像板の外観写真 表1 仕様
有効撮像領域 12.8 mm × 9.6 mm
画素数 水平 640 × 垂直 480
画素サイズ 20 μm × 20 μm
感度 一般的なCCDの約20倍
駆動方式 冷陰極アレー内蔵アクティブ 駆動方式
図2 HEED冷陰極HARP撮像板の外観写真

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