原田 麻里子

不思議なもので、数々の写真を見るよりも、録ってきた音を聞いた時の方が旅先の肌感覚がよみがえってくる....ということを、サウンド・バムと一緒に 旅をしてみて初めて知った。旅に限らず“経験”は、視覚だけではなく五感すべてが記憶装置であって、写真や映像を通して、視覚という手段にばかり頼っていたのだな....と。

耳を開放すると世界が変わる、のは私の好きな小説の登場人物だが、確かに見える世界までもが変わるような気がした。
聴く、という行為は好きで、人の話に対しても、街のざわめきにも、音楽にも、もちろん旅先でも耳を澄ませているつもりだったけれど、こんなふうに”音”に焦点をあてた旅に出て、もっともっと聴くことができるんだ、と思った。そして、聴くことによって新たな目も開かれるのだと。

一人ではなかなか行くことのできないアボリジニのコミュニティなど、旅をした場所の魅力だけでもじゅうぶん満足な旅、そして、とにかくぜいたくな旅だった。一カ所に長く止まったり、静まりかえった場所での録音もあるため、 他の旅行者との乗り合いではなく、ミニバスやボートをチャーターしたのだ。 おかげで、思った以上のオーダーメードな旅を満喫できた。時間とお金がゆる せば、毎回参加したいくらいである!

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