碇 高明

そもそもはジャワ島、バリ島以外のインドネシアを見る良い機会だと思って参加したツアーでした。
旅先で音を採る、ということがどういう感じなのかは、まったく理解していませんでした。なにしろ極度の機械オンチで、使いこなせている電気製品と言えば冷蔵庫くらいしかない人間です。当然、ツアー当初はMDレコーダーの操作にも不慣れで、採りたい音がうまく採れなかったことも少なくありません。

マカッサル郊外で伝統舞踊を見せてもらったときも、夜のトラジャ山中を寒さに震えながら歩いたときも、各地の市場を歩いたときも、僕のMDにはマイクとの接触で出る雑音や、自分の足音や、思わず出た独り言などがしっかりと録音されていました。人間というのは、こんなにいろんな音を出しながら生きているのかと、われながら、ちょっと驚いたくらいです。

そんなわけで、きわめてパーソナルな五枚のMDができあがったところでスラウェシ島ツアーは終わったのですが、いま、現地で採った音を聞き返してみて思うのは、音というのは記憶を呼び戻す強い力をもっているのだなということです。たとえば、トラジャにはサダンという桃源郷のような静かな美しい村があるのですが、その村を流れる清流のせせらぎを聴いていると、村の情景はもちろん、そのときの自分の心理状態までありありと浮かんでくるのです。。

また、この音を採っていたときは昼にナシゴレンを食べ過ぎた直後で苦しかったとか、この送葬の儀式の音を採り始めたときは車酔いでふらふらしてたとか、そのときの体調までが甦ってきます。
目からウロコが落ち、そして耳からも何かが落ちた気がする旅でした。

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