野口 綾子

中南米にずっと行ってみたかった。

ブラジルのボサノバ、キューバのソン、ジャマイカのレゲエ…等々
中南米の音楽にすごく興味があり、惹かれていた。
現地で聴いてみたいとずっと思っていた。

でも女の一人旅にはちょっと危険なエリア。
そんなときに友人からサウンドバムの話を聞いた。
早速WEBを覗いてみる。ん?なになに?音を求めて録音する旅?
しかも次回の行き先はキューバ!
おおまかな日程を見ると、
ほぼ毎晩のように街中のライブハウスに行くみたい。

なんだか面白そう!行きたい!
そう思い立ったのは、旅行の約3週間前。
申し込み期限ぎりぎりだった。

そんな突然の思いつきで参加した私は、
サウンドバムのことはほとんど知らないままだった。
空港に集合したメンバーはなにやら怪しげ?な機材をたくさん持ってる。
共産圏は空港のチェックも厳しいだろうということで、
これでも今回は少ないほうだそう。
(でも案の定、機材はよくひっかかっていた)

アメリカ、メキシコ経由で到着したキューバ。遠い。
でも地球の裏側に来たという実感が湧くほど街中の雰囲気が違う。
旧市街を散策していると、ほとんど途切れることなく音楽が聴こえてくる。
カフェ、バー、広場…いたるところでバンドが演奏している。
しかもマイクなしの生音。声がまったく楽器に負けてない。
すごい!

私はただただぼーっと聴き入ってしまったけど、同行のメンバーはすぐに録音開始。
音楽だけじゃなく、石畳の上をクラシックカーが走るエンジンやタイヤの音、 広場で遊ぶ子供たちの声、普通に旅をしていたら気にもとめないであろう音を録音している。

西村さんはいつでもMDレコーダーを貸してくださると言ってくださったが結局私は借りず終いで旅を終えてしまった。
ただその空気を、景色を、音を、直接感じていただけだった。

東京に帰ってきて、それぞれがデジカメで撮った画像を交換した。
旅の思い出が蘇る。大口を開けて歌っているおじさんのどアップ、
広場で何をするでもなくたたずんでいる人々、教室で勉強している小学生…いろいろ思い出してにんまりする。

帰国約2ヵ月後にサウンドバム・キューバ編の試聴・報告会があった。
まずは10分間、暗闇の中で目を閉じて音だけを聴く。
どんな音かな?
街を走る車の音、人々が話してる声、野球場の歓声、バンドの演奏とお客さんの歓声、思わず鳥肌が立ちそうになった。

旅の間は五感で感じていたものを今は聴覚だけで感じている。
でもこんなにも鮮明に記憶がよみがえるなんて。

画像は時が止まっているけど、音には当時の時間が流れている。
音を聴いていると、自分がキューバの街角に立っているような錯覚すら覚える。
あーーっ、こんなことだったら自分でも録音しておくんだった!

次回は絶対録音するぞ!と固く誓い、もう心は次回のハワイ編へと動いているのであった。

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