報道資料:業界初 薄物発泡・射出成形技術の開発に成功高音質スピーカー用の振動板として理想的な特長を実現

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Pioneer
1997年 4月 7日
東北パイオニア株式会社
パイオニア株式会社

業界初 薄物発泡・射出成形技術の開発に成功
高音質スピーカー用の振動板として理想的な特長を実現

  • 軽量・高剛性のため、高感度で歪みが少ない
  • 高内部損失のため、自然でクセの少ない音を再生

 東北パイオニア(株)(パイオニア100%、資本金40億円、本社 山形県天童市、社長石島聡一)は、この度、今までの射出成形技術では実現できなかった、薄物の発泡技術(厚さ0.25~1.0ミリ、発泡倍率3倍)の開発に成功しました。
 また、この技術を使うことで、従来の射出成形技術では得られなかった、軽量・高剛性・高内部損失を実現した、高音質スピーカー用振動板の量産に成功しました。

 従来に比較して、密度で3分の1、曲げ剛性で12倍、内部損失で1.12倍(紙振動板の約1.5倍)を実現することが可能で、大幅な改善となります。

 この振動板は、発泡倍率を変える事によって、振動板の物性値を従来の射出成形よりも大きく変えられるので、設計の自由度が増え、スピ−カの用途に適した音質を実現することができます。また、さらに剛性を高めるために、振動板に凹凸をつけた成形や、肉厚に変化をつけた成形も可能であり、この新技術は、これからのスピ−カに新しい方向を示す画期的なものと言えます。
 今後、この振動板を採用した高音質な車載用スピーカーをパイオニア(株)より近日発売するなど、積極的な展開を進めていきます。

【開発の背景】

 東北パイオニア(株)では、現在ではスピーカー用振動板に数多く使われている樹脂振動板の射出成形技術をいち早く開発し、ホ−ムステレオ用や、厳しい環境下で使われる車載用スピーカー等に採用してきました。
 また、さらに高音質なスピーカーにするために、材料(主にポリプロピレン)にカ−ボン系素材やマイカなどをブレンドして、振動板の理想的な物性である低比重・高剛性・高内部損失化を図ってきました。しかし、それらの物性値を飛躍的に改善するためには限界があり、新たな発想が必要でした。
 そこで、射出成形機での発泡技術に着目しましたが、振動板のような薄物の発泡技術の事例がなかった為、成形技術と専用の成形機の開発に取り組んできました。

 東北パイオニア(株)ではこの度、業界で初めて射出成形で薄物の発泡技術を確立し、スピーカーに最適な振動板の生産に成功しました。
 また、今後この技術を振動板以外の樹脂製品に応用することも検討を進めています。

【射出発泡の方法(特許出願中)】

従来、困難とされていた薄物の射出成形による発泡を、次の方法で可能にしました。

  1. 発泡剤を含有した樹脂を高温の金型に高速で充填します。この時の発泡剤は、シリンダ−内では熱により分解しますが、圧力が高いため発泡しません。
  2. 充填完了後、材料が半溶融状態の内に金型を所定の位置まで高速でひらいて発泡空間をつくり出すと、金型内は減圧し、発泡する事ができます。
  3. 以上のプロセスは、成形品の形状・厚さ・大きさ・表面状態などにより、樹脂の温度・圧力・金型を開くタイミングなどの条件が異なるので、コンピュタ−による最適な制御が必要となります。
  4. 金型は精密に加工された特殊金型が必要です。
  5. 発泡のプロセスが高速のため、製造に掛かる時間は、従来の薄物成形と変わりません。

【発泡射出振動板の特長】

 今回開発した発泡振動板の構造は、従来のものが均質であるのに対して、断面が3層構造(発泡していない表面層と、発泡している内部層とのサンドイッチ構造)になっています。(断面写真参照)

従来射出振動板の断面写真 発砲振動板の断面写真

そのため、従来の振動板に比べて、次のような特長があります。

  1. 発泡倍率を約3倍まで上げることができるので、密度3分の1の軽量な振動板をつくることが可能です。その結果、スピーカーとして高感度化が実現できます。
  2. 比弾性率(ヤング率/密度)は発泡無しの振動板に比較すると約1.4倍、曲げ剛性(重量を同じにしたときのヤング率×厚さの3乗)は12倍と大幅な改善になり、歪みの少ない高音質なスピーカーが実現できます。(図−1、図−2参照)
  3. 内部損失は約12%向上出来るので、歪みの低減と、スム−スな周波数レスポンスが得られ、自然で、クセの少ない音を再生できます。(図−3参照)
  4. 発泡倍率(1~3倍)を変えることによって、振動板の物性値を、今まで以上に変えられるので音作りの自由度が増えます。(図−4参照)

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