スラウェシ島(インドネシア)
300以上の民族がいるという多民族国家インドネシア。その真中に位置するスラウェシ島は北海道の約2.4倍の広さを持ち、4つの州に分かれています。
今回訪れたトラジャ、マカッサルは南スラウェシ州。そこではブギス人、マカッサル人などが平地に住み、トラジャ人は「山の人」と呼ばれ、山岳地帯に住んでいます。それぞれの種族は言葉も違い、文化習慣も違うので、別の国と言っても良いかもしれません。
マカッサルは海洋民族であるゴア王国の中心があった所。一方トラジャ族は古代、海洋民族であったといわれています。現在は山岳地帯に住み、トンコナンと呼ばれる独特の形の家に住んでいます。
マカッサルのホテルは超豪華。海のそばに立ち、抜群の景色が眺められます。夕陽のポイントでもあり、夜は近くに屋台街がオープンします。トラジャの街の中心はリゾートホテル、山の上はコテージ。ヨーローッパからは美術、建築に関心がある人がよく訪れる所でもあり、施設は意外に整っています。お勧めはなんといっても山の上のコテージ。朝、すばらしい景色と音を楽しめます。
基本的に、熱帯性気候。雨季と乾季があります。訪れるなら乾期が過ごしやすいでしょう。ただ高地のトラジャでは、朝夕は霧が出たり、かなり冷え込みます。この気候が、実はコーヒーの栽培に適しています。日中は暑く、意外に乾燥しているので、飲み水は必帯です。
今回、マカッサルの音の焦点は市場と香具師。インドネシアのトラさんと呼ばれる人達が沢山います。その口上は一人一人違い、売っている薬なども様々です。口上が始まると、現地の人が興味深そうに集まってきています。一方トラジャではお葬式がメイン。何年もかけて用意するほど、お葬式は盛大な儀式なのです。約1週間から10日もかかり、その進行は家族会議で決めます。このお葬式情報は、現地で実際に聞くしかないのですが、農閑期は必ずどこかでやっています。
トラジャの人達は親切。とくに日本人には好意的でこちらが礼儀をつくせば、お葬式の場でも問題ありません。我々が座っていた席は村の偉い人達が座る席でした。お葬式で繰り広げられる踊りと歌、マバドンはそれはすばらしいもので、一日に何回となく繰り返されます。またトンコナンと呼ばれる舟形の家は、彫刻、ペイントがほどこされており興味深いものがあります。もちろん自然の音は申し分なく、要素の多い旅となるでしょう。
いやー!濃かったね!これが今回のサウンドバムを終わってからのスタッフの言葉である。実際、毎日朝早くから夜遅くまで何かあり、音に浸っている状態が続いた。また内容が充実していたので、自分なりに消化するのに時間も体力も?必要とした。 スラウェシバムは、当初我々の中では「香具師とお葬式」ということ意外あまり具体的ではなかったのだが、実際に行ってみると、先に述べたような日々が続いた。といっても、もちろん心をあそばせる、風に漂った時間もあったのだが。
マカッサルについた日、いきなり日本人など誰も行った事のないスングミナサ市場へ。ハエが飛び交う中、テントが風でばたばたと音を立て、人々の売り声・笑い声が響く。そこをMD持ってうろつくバムの一向は大人気?であった。 そして更に大きな市場へ。しかし市場巡りは楽しい。メンバーもいきなり自由行動、好奇心のかたまりでした。その後はゴア王朝の屋敷を利用した博物館へ。人には見せられないメンバーの乗りに圧倒されっぱなし。 そしてその夜は、「火の踊り」に迎えられ、いきなり火あぶりに、夕食に食べた焼き魚が一瞬頭に蘇る。しかし、バムっていつもいきなりなんかある。踊りの後はもう村人との大交流大会。なんせ始めての日本人だからちゃんとしないといけない。と、みんな楽しくはりきりました? その夜寝る前に、岡田さん「まだ、一日目ですよね?三日目みたいだな」とつぶやく。
マカサルからの移動は車で快適に、途中スイカ屋や峠の茶屋で休憩。トラジャのホテルに着くといきなり太鼓で迎えられ、あわててDATを取りだし落としそうになりました。 夜はホテルの広い敷地をナイトウォーク、真っ暗の中しばし蛙の声に耳を休め、就寝。次の日は朝からタフな山道を走り、山間の村へ。車を降りると、朗々と響く低い歌声がループになって聞こえて来る。乾いた田んぼに足を捕られそうになりながら近づくと、弔問の一団がブタを竹にぶら下げ会場に入って行く。なんか今日も来るな!と思うまもなくお葬式の会場へ。いきなり異空間にダイブした感じで、目の前の光景、音空間に浸っている内に数時間が過ぎって行った。この日から我々はこの村に三日間通う事に。
このトラジャのお葬式を通じて、トラジャの精神文化に触れ、みんなで話したことは、「生と死」。トラジャでは人の死は「はれとけ」で言えば「はれ」なのだ。1週間から10日もかかるお葬式は人生においての最高のイベントで、人類学者の安部さん曰く「トラジャでは人は死ぬために生きている。つまり、この死者儀礼祭儀を中心にトラジャ社会、文化はまわっている。宗教的な意味合い以上に、社会的、経済的、政治的な事まで含んでいる」。 この三日間で我々が体験した事は、あまりにも多くて書ききれないが、いけにえのため死んでいく水牛を見ても、なんとなく納得がいく、理解できる気持ちであったのは確かだ。しかし、トラジャの水牛は生まれた時から働かないで大事にされ、この瞬間を迎えるのである。サダン川で出会った水牛を大事に洗う光景がすべてを語っていた。
お葬式に通いつつも、山の上ではすばらしい朝を迎え、ポチョポチョ踊りをマスターした、まじめな高橋さんに「回線さえきていれば、今からここに住んでもいいよ!」とまで言わせた環境に浸る。朝から椰子酒作り(木に筒をぶら下げるだけ)に出会い、元気な子供達の声に迎えられ、農作業の人には賛美歌を歌ってもらい。山火事に出会った時はここまで来るか!と。 そんなトラジャに分れを告げ、パレパレへ戻る頃には、もう全員何日目か忘れている状態に。しかし、パレパレでは最高の夕陽を波音聞きながら眺めて、少しクールダウンしました。
戻ったマカッサルでは、自由行動。カレボシ広場の香具師を見に行くと、若い人のかけるビートの音楽をバックに、「いぼころり」や「いきなり歯を抜く薬」を売る口上が聞け。思わず笑いが。 とうもろこしを食べ(ビールを売ってない)過ごす最後の夜は、流しの歌をバックに、みんな夜景を見つめるのみ。と思いきや、碇さんの体験記に話しが弾んだ、バムでした。
最後に岡田さん、お気に入りの音は?
「今回のBUMで印象的だったのは、まずマッカサルのパオパオプルマイ村での踊りと歌。実は後から聞きなおすと、演奏がずっとループしていて、その演奏の上に物語を歌う歌が乗っかっていて、これがなかなかいいんですよ。 後は、サダン川で出会った水牛を洗う音。飼い主が本当に丁寧に時間をかけてみがいている。水牛もほんと気持ちよさそうで。お葬式を見た後だったので、ああ水牛を清めているのだと感じたんですよ。そう思って聴いていると、水音が意味を持って聞こえてきて。 そうそう、トラジャの竹林の音もよかった。農作業している人に歌を歌ってもらったんですが、その歌を聞きながら、実はバックに聞こえて来た竹林の風の音がすごい良くて、竹林の音を求めていろいろいったけど、いままでの中で最高の音でした。」
人類学者、安部さんのお気に入りの音は?
「感想にも書いたけど、市場での人の会話。面白かったなあ。普段認識しないうしろ側での会話が聞こえ、周りの人が何を言っているか解かって。今度から調査には、マイク、MD必帯ですね。それから川の音。川崎さんにマイクをいろんな流れに置いてもらって、みんな音が違って。耳からうろこ状態でした。音の旅は、自分が知っている場所にもかかわらず、ほんと新鮮でしたね」。