#11 ハワイ島編 サウンドバムガイド

ハワイ島

別名ビックアイランド。ハワイ諸島の東端にある、もっとも新しい島。
島の東南部では、現在もキラウェアに連なる噴火口からマグマが流れ出ている。

アクセス

空路
  • 成田→(ホノルル経由)→ハワイ島・コナ

※成田/ホノルル間は約6.5時間。JALのコナ直行便は約7時間。

宿泊

ハワイの王族も避暑に使っていたという島の西部には、現在無数の大型リゾートが展開している。サウンドバム的には、テレビや電話が一切ないというコナ・ヴィレッジ・リゾートに興味があるが、今回のバムではワイメアのロッジと、カイルアコナの古いリゾートホテルを組み合わせた。B&Bの情報は、ニック・加藤氏の書籍にも詳しい。

気候

ハワイ島は西と東で気候が大きく異なる。東は雨が多く湿潤で、西は年間降水量も極めて少なく、昔流れた溶岩流の跡がそのまま残っている。午前中は晴れるが、午後からは曇りがちになることが多い。海沿いを離れ少し高度を上げると、コーヒー園を育む雨雲に囲まれる。

サウンドバム

ハワイ島のバムは、音楽を軸とすることを薦めたい。しかし一般的な観光ルートをたどりながら、現地で伝統的なハワイ音楽に触れるのは思いのほか難しい。年に何度か開催されている、フラやスラックキーギターのフェスティバルに合わせてプランを立てると良いだろう。個人的なホームパーティーへ立ち寄る機会があれば、ハワイの文化が、音楽と家族のまわりで受け継がれている様子をまのあたりにできると思う。あてのない人は、サウンドバムの次回ハワイ編に参加していただくのが良いだろう。

西村佳哲とサウンドデザイナー・岡田晴夫による
ハワイ島編
サウンドバム・ガイド対談

西村 ハワイ編は、ずっとやりたかったんですよね。
岡田 そう。ワイキキに代表される超リゾート地のイメージが先に立つけど、実は奥深い島々だよね。
西村 今回のバムは、これまでの中でもかなりいいクオリティで開催できたと思う。やはり、トイズ・ミュージックスクールの面谷さんとの出会いが大きいですね。ウクレレ教室の主宰者としてすでに何度も島に通っている彼が、文化も音も、うまくナビゲートしてくれた。
岡田 リサーチの段階で、駒沢敏器さんにミーティング参加してもらえたのも良かった。面谷さんとは、また一味違う切り口がある。駒沢さんのナビによるハワイバムは、また来年の課題ですね。
西村 駒沢さんはおそらくマウイ島だな。これは、ぜひ開催しましょう。

西村 で、ハワイ島ですが。最初の印象は?
岡田 とにかく広い、見晴しが良い。ほとんどが溶岩台地と牧場の緑の丘陵を車で移動していると、大陸にいるような錯覚に陥りました。
西村 でも目線を少しふると、かならず海が見える。あそこは本当に、太平洋のど真ん中なんですよね。
岡田 まだあまり人の手が入っていない渓谷、森、海、火山など、ワイルド感満載の旅だったね。

西村 単なる観光感想会みたいでヤバイです。音の話をはじめましょう。
岡田 やはり音楽の話が欠かせないよね。
西村 ウクレレを弾いていると、こりゃ室内で生まれた楽器じゃないなーと強く思います。あれは、風が吹いていたり、鳥が鳴いていたり、波が寄せている音の中で弾くのがいい。
牧場の大きな野外コンサートや、ブラさんというミュージシャンのお家のガーデンパーティーへ行きましたね。パーティーで聴かせてもらった家族の演奏や踊りは、本当に貴重な体験だった。

岡田 あれは、本当に面谷さんに感謝だね。
西村 ブラさんがコンサートで東京に来ていた時、楽屋に押し掛けて交渉してくれたそうです。
ハワイは、自然と音楽の間のグラデーションがきれいに繋がっている感じがして、いいですよね。音楽が自然の中で生まれて、自然の中で育っている。

岡田 娘さんやお母さんたちのフラが、とてもきれいだったね。
西村 面谷さんいわく、東京で先生やっている人でやっとあの娘さんと同程度、だそうです。日本に帰ってからハワイ音楽のイベントがあって、ブラさんとあの娘さんのうちの一人が来日していたんですよ。観に行ったら、日本人のフラの先生も出演していて、ブラさん達の踊りとその先生の踊りの違いがハッキリわかった。並列比較って、理解の基本ですね。
岡田 どう違ったの?
西村 日本人の先生のフラは、比べてみると攻撃的でした。「私を観て」という感じのオーラが出ていて、どうも痛い。ブラさん側の娘さんのフラは暖かくて、とてもいいギフトである、という気持ちになりました。
岡田 ハワイは観光地だから、よほど準備して情報を仕入れていかないと、ああした非商業的な音楽や文化の世界には辿り着けないよね。

西村 今回実は、録音に苦労したんですよね。
岡田 音楽は演奏者の著作権にも気をつかうしね。なにしろ一番印象に残ったのが、ハワイ島のあの広さだったもんだから、スケール感をどう音で表現するか悩んでいるうちに、バムが終わってしまった感じはあるよ。
西村 鳥が意外に少なかったと思いませんか?
岡田 まあ、そうだね。たまたま場所と時間が合わなかったんだと思うけど。
西村 少し高度を変えると沢山いるんですよ。コナの上の方にホルアロアという村があるんですが、コーヒー園のひろがる高さで、鳥もたくさん鳴いていたな。
岡田 ハワイ島は、西側と東側で気候がまったく違うから、動植物の分布もいちがいに言えないね。

西村 しかし、面谷さんはドンピシャでしたね。毎晩ロッジの部屋で開催されるウクレレ教室も、とても良かった。参加者の菅野さんも書いていたけど、演奏したり歌ったりする旅は、なにかこう参加感が違いますね。サウンドバムの新機軸だな。
岡田 現地通の人と行くバムは初めてだったね。たいがいは、現地についてからいろいろ誤解をといて。
西村 事前の情報が、うまく伝わっていないことが多いんですよね。生録ツアーじゃないとか、音楽ツアーじゃないとか。

岡田 一緒に何日か過ごすと、だいたいわかってくれるんだけど、雰囲気をつかんでもらうのに時間がかかることが多い。でも、今回は東京でミーティングが出来たし、出発前に面谷さんの情報と感覚、こちらの経験を摺り合わせる時間があったから、僕らのバムのイメージと現地の展開にほとんど誤差がなかったね。
とは言え、大自然と、何ごとにもおおらかハワイの人々が相手だから、すべてが思い通りにならないのは、いつもの常でして(笑)。
西村 面谷さんはハワイだけでなく、たとえばニューヨークのハーレムの教会へゴスペルを歌いにいくツアーを開催したこともあるそうです。東京で何回か練習して、ハーレムに着いてからも何度か練習して、あとはいきなり本番で歌い上げるらしい。これはいいな。サウンドバムのニューヨーク編はまだ企画されていないけど、いつか形にしてみたい。

岡田さんが、今回いちばん印象に残っている音は?
岡田 ワイピオ渓谷のホーストレッキングかな。あと、ボルケーノ国立公園の溶岩流。
西村 溶岩流....。あれは筆舌に尽くしがたい。
岡田 馬の話をつづけるとさ、サウンドバムと相性がいいよね。シーカヤックが、音を聴きながら旅する道具として良かったように(#01フィジー編参照)。その流れでいうと、自転車もいいのかもね。
西村 馬は走らない限りはいいですな。本格的に走ると痛いんでね、お尻が....。

岡田 溶岩流の音はね、雨が降っていたせいもあって、流れたりはぜる音より、表面が急激に冷えて固まっていくときの音が印象に残っている。本当になんていうか、厳粛な気持ちになったね。
西村 岡田さんもですか。僕もです。
岡田 木の棒を刺して、遊んでいたじゃない。
西村 いや、本当にすごいなって感激していたんですよ。あんな風景、まったく見たことがないですよね。なんですかあれは。いったいどれだけの月日が経ったら、あそこに土が堆積し植物がはえ、虫や鳥が来て、森になるんだろう。ワイピオ渓谷は、もういい感じになっていたけど、なんていうか、人間のライフタイムと違う尺の時間を想像せざるを得なかった。
岡田 音は聴けなかったけど、アラスカバムで体験した満天のオーロラを思い出した。宇宙の神秘を感じる、貴重な体験だったね。
西村 サウンドバムというより、地球大紀行って感じになってしまいましたね。(笑)

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