リスボン(ポルトガル)
Lisboa (PORTUGAL)
ヨーロッパの西端に位 置するポルトガルは、17世紀を「発見の時代」にした国。
長い歴史の中で、時間を刻んでいる。
直行便はないため、ヨーロッパの別 の都市で乗り換え、リスボン空港へ向かう。乗り継ぎを含み、 日本からの所要時間は約15時間。時差の関係で、その日の うちにリスボンに到着する。
市街なのでホテルは豊富。ちなみに今回のバムでは、リスボン中心部のHOTEl ORION EDENに宿泊。キッチンの付いた清潔な宿でお薦め。
貴族の城や修道院を 改装したポサーダ(Pousada)は、事前の予約が必須。
10~11月は雨期。一日中降りつづけることはなく、降ったりやんだりの天気だった。夏場を除き、寒すぎもせず暑すぎもしない過ごしやすい気温。
ロケハンツアーは11月に開催したが、春から夏にかけて街の音はより賑やかになるはず。アルファマなどでは、家の前の路上に置かれた炭火焼きのコンロで魚を焼き、夕食をいただくという。その頃は、鳥の鳴き声もより賑やかだろう。街バムとしては、伝統音楽としてのファド、そして国民的スポーツであるサッカーなどの音も欠かせない。
日本語になったポルトガル語は多い。有名なのは、「パン」「テンプラ」「カッパ」「カボチャ」など。「ありがとう」の語源は、ポルトガル語の「オブリガード」であるという説もある。街中で人々の会話に耳を澄ましていると、時々聞き覚えのあるような音が混じり不思議な気持ちになる。郊外の街や村も、静かで味わいがある。
音の旅の行く先として、ポルトガルはどうでしたか?
岡田 期待どおりでした。
期待とは?
岡田 今回は、街の音を録ろう・聴こうという旅でしたよね。リスボンやその郊外の 街々で拾った、教会の鐘、石畳を走る車の音、狭い露地まで入り込んでくるトラム (市電)の音、そしてポルトガルの伝統音楽「ファド」。歴史のある、ヨーロッパの 街らしい音たちに出会えて、顔はニッコリです。
リスボンは、確かに歴史を感じさせる街でしたよね。
岡田 18世紀に大地震があって、それ以前の街の姿はかなり失われたと聞くけど、少なくとも人に歴史が残されていますよね。
人は良かったですね、本当に。
岡田 都市のリスボンでさえ治安は良かったし、不思議な懐かしさと温かさを感じました。
その懐かしさは、料理の味付けからきているのでは?
岡田 いやあ、行く前からいろんな人に聞かされていたけど、本当に日本人好みの味 付けですよね。魚は炭火焼きだし、それが肉であっても。とにかく美味しかったけど、....音の話からそれてしまいそうだな。とにかく料理は素晴らしいです。
他の都市との違いは、どう感じました?たとえば、ヨーロッパの。
岡田 そうだなあ。....意外に、路上演奏に出会わなかった。
そうですね。
岡田 唯一、街の中央の歩行者用街区で、通りの真ん中に座って小さなアコーディオンを弾いていた少年に出会ったくらいで....。
若者はあまりお金を持っていないので楽器を買えないんだ、と現地の人が言って いましたが。
岡田 どうなんでしょうね。路上の音楽といえば、バイロアルトの裏通りで、ファド のCDを流しているクラシックカー風の屋台車のおじさんがいました。あの音が、周りの雰囲気をグッと良くしていたなあ。あれがもし生の演奏だったら、さぞかしいいでしょうね。
街の音・人の音を録る・聴くという今回の目的は、達成できました?
岡田 うん。でも、やはりもう少し時間があったら、早朝の市場やアルファマ(旧街区)の人々の生活音を、さらにジックリ録ってみたかったなあ....。
もう一度行きたい、ということですね。
岡田 もちろんです(笑)。リスボン周辺の村には、少ししか足を伸ばせなかったけど、日帰りできる距離に魅力的な街がたくさん点在している。今回も、ロケハン先の選択に困ったよね。
行った先で、いちばん印象に残っている音は?
岡田 マフラの修道院跡で聴いた、カリヨンの音。リスボンからだと、車で2時間ぐらいかな。少し遠いけど行く価値はありますよね。巨大な王宮の中庭で、床石を鳴らして降りつづける雨音を背景に聴いた鐘の音はとても荘厳で、心が浄化されていく思いがしたましたよ。(70mの塔の内部に113個の釣り鐘があり、様々なメロディを奏でる。毎週日曜日・夕方4時から演奏される)
あそこは良かったですね。雨音の合奏状態も。バムから戻って聴いた録音からだと、いちばんお薦めの音は?
岡田 街中を走るトラムの車内の音。あとは、ファドレストランのライブ演奏。これはもう、エンドレスで聴いています。
ガイドの人が事前に録音交渉をしておいてくれて、本当に助かりましたね。普通 はすごく高いお金を要求されるそうです。日本の放送局はいくら出したとか。
この後、ポルトガルへ行こうというフィールドレコーダーの人達に、なにかアドバイスは?
岡田 リスボン市内でも、アルファマの路地裏などは「どろぼう市」もあったり、独特な響きがあって楽しいです。けど、魅力的な生活音がする場所ほど、少しばかり危険な場所だったりする。録音に集中しすぎて、スリやかっぱらいに会わないよう、注意してください。
どこに行っても、いちばん怖いのは人ですよね。
岡田 でも、確かに人が出す音は、どこかしら暖かみがあっていいんですよ。街ごとに違いがあるけど、ポルトガルのそれには、なにかこう不思議な懐かしさを感じました。でもひょっとすると、世界中のあらゆる都市生活者が、リスボンやポルトガルの音を、そう感じるような気もしますね。(01/02)