報道資料:強誘電体結晶への超高密度記録再生に成功

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Pioneer
2002年 9月 9日
東北大学電気通信研究所
パイオニア株式会社

強誘電体結晶への超高密度記録再生に成功~記録密度1.5Tbit/inch2の可能性を実証~

東北大学電気通信研究所とパイオニア株式会社は、強誘電体結晶への記録再生に独自のSNDM(Scanning Nonlinear Dielectric Microscopy)を用いて超高密度記録再生に成功、記録密度1.5T(テラ:1012)bit/inch2実現の可能性を実証しました。

この技術は、9月9日から13日までスペインで開催されるナノテクノロジーの国際学会『TNT2002』および9月15日から19日までフランスで開催される強誘電体材料の国際学会『ISFD7』で発表いたします。

IT(Information Technology)の普及発展により、伝送されたり蓄積されたりする情報量が飛躍的に増大しています。大容量の情報蓄積メディアとして普及しているHDD(Hard Disc Drive)の記録密度は垂直磁気記録が実用化されても1Tbit/inch2程度が限界といわれています。5~10年後にはこの限界に達することが予想され、この限界を打破できる超高密度記録技術が求められています。

HDDの原理は磁気記録で、その記録材料は強磁性体です。これに対し強誘電体は情報記録が電気的に可能な材料であり、磁石に対して電石ともいえるものです。この強誘電体は半導体メモリーの分野で開発が進められている強誘電体メモリーで知られている材料でもあります。
強誘電体記録は50年程前の発見当時から磁気記録とともに情報記録への応用が検討され、高密度記録媒体としては磁気記録以上の可能性が期待されていました。しかし、電気的に記録された情報がイオンや電子によって中和されてしまうために適切な再生方法がなく、これまで高密度記録再生への応用は困難な状況でした。

東北大学とパイオニアは、強誘電体結晶への記録再生方法として独自のSNDMを用いることにより超高密度記録再生に成功、記録密度1.5Tbit/inch2実現の可能性を実証しました。
SNDMは走査型非線形誘電率顕微法といわれるもので、これは東北大学電気通信研究所の長康雄教授が1994年に発明した技術で、強誘電体に記録された情報を電気的に1nm以下の分解能で読み出すことが可能です。このSNDMはすでに誘電体の分析装置に使用されており、ナノテクノロジーの研究に活用されつつあります。

これにより、従来にない大容量かつ高速転送可能な強誘電体プローブメモリーの実現(将来的には10~100Tbit/inch2)が期待できるようになりました。これは究極の記録密度と優れた省電力性を有する近未来のストレージ装置となるものです。今後、ナノテクノロジーの分野で研究が進められているマイクロマシン技術を応用してシステムを小型化し、従来にない小型大容量ストレージ装置の実現を目指します。

【参考】

磁気記録は磁区サイズ(10nm程度)での記録、すなわち6Tbit/inch2程度が究極の記録密度といわれるのに対し、強誘電体記録は結晶格子サイズ(0.4nm程度)での記録、すなわちP(ペタ:1015)bit/inch2オーダーが究極の記録密度といわれています。

強誘電体結晶薄膜における高密度記録 強誘電体結晶薄膜に記録した文字とDVDピットの比較

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