1997年技術論文

1.横結合分布帰還型半導体レーザの基本特性

総合研究所 デバイス研究部 第三研究室
渡部義昭、陳農、武井清、竹間清文

【要旨】

光CATVなどの加入者系光通信システムへの応用を目指し、再成長工程を必要としない、低コスト作製可能な1.3 μm帯 InGaAsP/InP系横結合分布帰還型リッジレーザを、反応性イオンエッチングや電子ビーム描画などの半導体微細加工技術を用いて試作した。
室温パルス発振時のしきい電流密度は1.3 kA/cm2、サイドモード抑圧比は22 dB以上であった。また、今後のデバイス最適化のための結合係数の計算も行った。

2.SHG用非線形光学結晶薄膜の気相成長

総合研究所 デバイス研究部
尾上篤、吉田綾子、竹間清文

【要旨】

有機金属気相成長法(MOCVD法)によりSi及びSrTiO3基板上にKNbO3薄膜を形成した。原料ガス組成を調節することにより、化学量論組成のKNbO3薄膜を得ることができた。膜の結晶性をX線回折及び反射高速電子線回折(RHEED)で評価した結果、基板温度850℃で(110)SrTiO3基板上にヘテロエピタキシャル成長した平滑膜が、(010)方位に配向したKNbO3単結晶膜であることが分かった。
さらに基板の屈折率 KNbO3よりも低いMgO基板上にもKNbO3単結晶膜を成長させることができた。この薄膜にYAGレーザを導波させることによりSHG光の発生が観測された。

3.VSB復調LSIの開発

LSI開発センター
阿部義徳

【要旨】

多値VSB復調用LSIの開発を行った。開発したLSIには、ナイキストフィルタ、搬送波再生、タイミング再生、AGC、波形等化、リードソロモン復号などの機能が集積化されている。
同LSIを用いることにより高性能なVSB復調器が容易に構成可能である。

4.DVDプレーヤ用LSIの開発

総合研究所ディスクシステム研究部
林英樹
所沢工場マルチメディア開発部
原口幸慶、出雲毅、舘野実、中村浩、保阪純夫、平野弘行
所沢工場マルチメディア第一技術部
舟本京太、亀山伸幸、川原康成 

【要旨】

DVDプレーヤの再生信号処理に用いるLSIを開発した。データ処理LSIは、ビタビ復号回路、8/16復調回路、誤り訂正回路、可変ビットレート制御回路を含む。ビデオ処理LSIはサブタイトル画像処理回路、GUI(Graphical User Interface) 画像処理回路、NTSC/PALエンコーダ、D/Aコンバータを含む。
また、両LSIとMPEG2ビデオデコーダ、AC-3オーディオデコーダを搭載した DVDプレーヤを開発した。このDVDプレーヤは1996年12月に発売された。

5.DVD-Rピックアップの開発

AV開発センター 記録・機構開発部
梁川直治
マルチメディア開発部
高橋真一、小山雅之、佐藤僚、長竹浩克、藤ノ木慎一

【要旨】

再生専用DVDと互換性のある追記型色素メディアDVD-Rは 4月に規格案(Ver.0.9)が発行された。筆者らはDVD-Rに対応したピックアップを開発した。光源に中心波長635 nmの高出力半導体レーザを用いた。最大光出力13 mW(パルス)を実現するために高効率光路を設計した。寿命、信頼性確保をするために半導体レーザを冷却するペルチェ素子を搭載した。記録再生特性向上のために、ディスク上のスポットサイズおよびレーザ変調特性の最適化などについて検討した。
開発したピックアップを搭載したDVD-RシステムでDVD-Rディスク(直径120 mm、最短ピット長0.44 μm、トラックピッチ0.8 μm)に、ユ-ザデ-タを約3.9 Gbyteが記録・再生可能であることを確認した。

6.DVDエンコーダLSI(PD6198A)の開発

研究開発本部AV開発センター記録・機構開発部
朴永柱、堀内崇弘、吉田昌義、石井英宏
BSCシステム第6技術部
引間洋

【要旨】

再再生専用DVDディスクと互換性のある、ライトワンス型記録メディアDVD-Rの記録システムに於いて、データをDVDの物理フォーマットにリアルタイムでエンコードするLSIを開発した。

7.DVD-Rシステムの開発

AV開発センター 記録、機構開発部
清水勇治、下田吉隆、川野英作、吉田昌義、石井英宏、井上章賢
BSCシステム第6技術部
引間洋、上田整

【要旨】

追記機能を有し記録終了後は再生専用DVDディスクと互換性のあるディスクを作製できる、ライトワンス型のDVD-Rシステムを開発した。
本システムはリアルタイムでDVD物理フォーマットのエンコードを行い、データをディスクに記録する。記録済みディスクは、DVD-ROMドライブおよびDVD-Videoプレーヤで再生可能であることを確認した。

8.DVDプレーヤのための新サーボ機能開発

マルチメディア開発部開発3課
樋口一郎

【要旨】

DVD/CD及びDVD/CD/LDコンパチブルプレーヤの商品化のため、1ビームによる トラッキングエラー生成の技術を開発、またデュアルレイヤディスク再生のためのフォーカスジャンプの技術を開発した。また、DVDプレーヤとして不可欠なディスクの種類を見分けるディスク判別をフォーカスエラーを用いて行う方法を開発した。

1.可聴帯域外高周波成分を含む
音刺激に対する認知能力の評価

新商品開発プロジェクト
佐藤宏、吉田秀和
情報通信開発センター
安士光男

【要旨】

一般健聴者を対象として、48 kHzまでの周波数成分を含む音と、この音から24 kHz以上の成分を除いた音との主観的印象の違いを、一対比較法によって定量化した。その結果、いくつかの音源については、両者の主観的印象の間に、統計学的に有意な差(p<0.05)が認められた。

2.音声認識のための簡易的騒音学習アルゴリズム

大島商船高等専門学校
石光俊介
川越工場第3技術部
齋藤宏、藤田育雄、羽生田隆、田村史雄、岩田孝洋、加藤政行

【要旨】

音声認識が実際に使用される環境はオフィスのような比較的静かな環境から当工場で対象とする自動車内など様々である。人間はこのような様々な環境でもコミュニケーションを達成している。音声認識システムも人間と同じように環境にあまり左右されずに動作することが望ましい。
本開発において、様々な走行環境においてその環境を簡易的に学習し、単純な前処理として組み込み可能なアルゴリズムを開発した。また、実験によって無処理の場合と比べて2倍程度、認識率が向上する事を確認した。

3.境界要素法を用いた音場解析

MEC技術統括部技術課
萩原純夫

【要旨】

境界要素法を用いた音場解析プログラムを開発し、従来の解析的方法では予測できなかったような音響機器の特性を予測できるようになった。
スピーカ・システムから外部空間に放射される音場とキャビネットの内部にできる音場をそれらの相互作用を考慮に入れて解析できるような機能も開発した。
最新の高性能なEWSを用いれば、乗用車の車室内のオーディオ帯域における音場を実用的な時間で計算することが可能であった。

4.PRD(Partial Resonant Diaphragm)スピーカの開発

総合研究所音響システム研究部
山本順子、馬場輝男、小谷野進司

【要旨】

PDPに内蔵できる薄型スピーカ・システムを開発した。その振動板とボイスコイルを長円形とし、小容積キャビネットにもかかわらず十分な低音と広帯域再生を可能とした。
音圧周波数特性を改善するために振動モード解析および実験を行った。振動板とボイスコイルは長円であり、振動板より短いボイスコイルは振動板を内側と外側の部分に分割している。外側の振動板をシステム全体の最低共振周波数より低い周波数で共振させることにより低域の音圧レベルを上昇させた。また、中域における強いピーク・ディップを改善するため振動板の質量分布を変化させることによって振動板のモードを分散させ周波数特性を平坦化した。

5.リニアパワースピーカの開発

総合研究所音響システム研究部
張子青、山本順子、熊田訓、小谷野進司

【要旨】

スピーカシステムの小型化に伴い、重低音を再生することが困難になった。原因として、共振周波数の上昇、放射抵抗の減少、そして体積速度の減少が上げられる。小型スピーカで大型スピーカと同等の低音再生能力得るためには、これと等しい体積速度を確保することが必要である。しかし、従来のスピーカではエッジのリニアリティが不十分なため大きな体積速度を得ることが困難であった。今回、小口径でも大きな体積速度を得るためにエッジレス構造及び駆動部構造を新たに開発し、15 cm口径で±15 mm以上の振幅及び、100 dB(50 Hz)の音圧レベルを可能とした。

6.96 kHz×24ビットサンプリング対応
高精度サンプリング・レート・コンバータ

AV開発センター信号処理開発室
岩村宏、寺尾恭一

【要旨】

汎用DSPを用い、96 kHz×24ビットサンプリングに対応した業務用高精度サンプリングレートコンバータを開発した。主な特長は以下の通りである。

  1. 各入力レート(96/88.2/48/44.1 kHz)、出力レート
    (96/88.2/48/44.1/32 kHz)間を高精度ダイレクト変換
  2. 変換による周波数変動がない
  3. 変換ノイズが極めて低い(THD+N 約-143 dB)
  4. 可聴折り返し雑音の発生がない
  5. 特性選択可能なディザとノイズシェーパーによるビットマッピングが可能

7.MPEG-2 Advanced Audio Coding(AAC)方式の解説と
MPEG-4 Audioの標準化動向

総合研究所音響システム研究部
鈴木 雅美

【要旨】

MPEG-2AACは64kbps/chのビットレートで原音と遜色のない音質を達成するマルチチャンネルオーディオ符号か方式であり、1997年4月に国際標準となった。一方、MPEGでは通信・放送などのアプリケーションでの仕様を想定したMPEG-4の標準化作業が進行中である。
本稿では、始めにMPEGにおけるオーディオ符号化の経緯を述べ、AACとMPEG-4Audioの位置付けを明確化する。続いてAACの概要と、そのアルゴリズムで使用されている個々のブロックについて詳しく解説し、最後にMPEG-4Audioの概要と標準化動向を紹介する。

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