2008年技術論文

1.時間周波数解析手法を用いた
音響機器評価の基礎検討

好美敏和、石光俊介

【要旨】

音響システムの再生音質を評価する場合、最終的には実試聴による主観評価が重要であることはいうまでもないが、物理計測による客観的特性評価を行うことも同様に重要である。楽音を聴くことにより何らかの聴取印象を覚えるが、その印象に良好に対応した電気的計測データが得られれば、再生機器のその後の音質性能改善作業への着手が比較的に容易となるものと想像できる。この報告では、電気的計測手法として、従来の正弦波などによる「静特性」評価ではなく、聴取楽音入力に対する応答信号の時間周波数特性による「動特性」評価手法に着目し、SD法による試聴評価との対応付けを市販のオーディオアンプの再生音質評価に適用したので紹介する。また,一般的な電解コンデンサの音質評価にも同様の手法を適用した。さらに、再生音質評価とは異なる一応用例として、カーオーディオメインユニットの操作ボタン動作音の時間周波数分布とその好まれ方の対応付けを行った。

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2.音像定位制御システム設計のための定位位置推定法

太田佳樹、小幡健作

【要旨】

試聴位置周辺の音圧分布から音像位置を予測する手法を開発した。実験では、位相差だけをつけたバンドノイズを2つのスピーカで再生した。音像の定位位置と試聴位置周辺の音圧分布との関係を調べた。その結果、音像定位方向が音圧レベルの線形結合で記述できることが分かった。線形結合式は、定位角を高い精度で予測できる。予測した定位角は位相差と一対一に対応付けられているため、本手法は定位制御システムの設計に有効である。

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3.車室内音場シミュレーション技術の開発

長谷川知己、今西快友

【要旨】

車室内の音響設計を効率良く実施するための手段として, 車室内の音場特性シミュレーション技術の提供を目指した。簡易模型を用いて, 壁面, 座席, カーペットなどの物性値の扱いを検討した。次に,完成車での解析を実施した。実測と解析の比較結果を通して, 材料, 壁面の取り扱い, および課題について報告する。

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4.TAD Reference Oneの開発

高橋俊一、斉藤天伸

【要旨】

TAD Reference OneはTADブランドのホームユース・スピーカーとして開発された。
一番の特徴は、ミッドレンジとトゥイーター両方の振動板にベリリウム振動板を使用、同軸配置としたCoherent Sound Transducer (CST)を採用したことである。CSTの採用よりは250Hzのミッドレンジ帯域から100kHzまでの広い周波数帯域を、一つのスピーカーユニットでカバーすることが可能となった。このことにより、明確で安定した定位と自然な音場表現を実現することができた。
ウーファーユニットには大幅にリニアリティーを向上した磁気回路が、キャビネットには高級感溢れるクリア鏡面仕上げが採用された。

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5.高効率PDPの試み

打土井正孝

【要旨】

DW `06 (The 13th International Display Workshop)で当社が発表した高効率、高コントラストのPDPのパネル構造、ASSC 構造 (Address Space Separation Cell Structure) を紹介する(1)。
PDPはガス放電を利用したディスプレイで、各画素(ピクセル)は3原色に相当する放電単位(放電セル/サブピクセル)で構成されている。一般に、表示期間における点灯、非点灯を決める制御放電と、輝度表示を行う維持放電は、同じセル内で行なわれている。ASSC 構造では、各セルを制御セルと表示セルに分割することにより、表示セルは発光効率の向上、制御セルは制御性(安定駆動、高速駆動)の向上にそれぞれ最適化することにより、表示特性を低下させること無く高い発光効率実現した。また、不要発光を伴う制御放電を遮光された制御セルで行うことにより、黒輝度の低減ができた。試作した50型パネルで、発光効率2.8 lm/W、パネルでのピーク輝度1200 cd/m2、黒輝度0.04 cd/m2、コントラスト30000:1を達成した。

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6.知識データベースを応用したWeb取説検索システム

鎌田 喬浩、梶 雅代、堀内 直明

【要旨】

民生機器の多機能化に伴い、ユーザが手にする取扱説明書の情報量は増加し続けている。その結果、ユーザが所望の操作方法を探す際に、取扱説明書を容易に活用することが次第に難しくなってきている。そこで我々は、知識データベースを用いて取扱説明書の活用を支援する、Web上で閲覧可能な検索システム(Web取説検索システム)を開発した。本システムの知識データベースとは、取扱説明書の階層構造と特定の用語に対する多様なゆらぎ表現をデータベース化したものである。本システムを利用すれば、ユーザは思いつくキーワードを入力するだけで期待する取扱説明書の内容を素早く得ることができる。

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7.CSSを使用したDVD-Videoコンテンツ配信の概要

清水 晃

【要旨】

DVDプレーヤーで再生可能な形でCSSコンテンツを記録できる記録型DVDメディアとその記録技術を開発した。
それらをDVD Forumに提案し、DVD-R Generalのオプションスペック、DVD download disc for CSS Managed Recording, Rev 1.0として2007年1月にPart1 物理規格が、同年2月にPart2 ファイルシステム規格が承認された。
この規格によって、DVD-Videoコンテンツを電子配信しDVDにCSS記録することができ、世界中に普及したDVD再生環境を利用できるビジネスの実現が可能となる。
本稿では、CSSを使用したDVD-Videoコンテンツ配信の概要として、DVD Download ディスクの構造とCSS Managed Recordingの特徴について述べる

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8.スマートループの開発

佐々木優、村田利幸、海津浩之、武田賢司

【要旨】

当社のカーナビゲーションシステムである「サイバーナビ」において、ネットワークを利用して、ユーザーの交通情報を活用することで、時々刻々と変化する交通事情に対応して最適なルートの探索が可能な「スマートループ」機能を開発した。
「リアルタイムプローブ」は、ユーザーから携帯電話で、実際に走行している車の状態をサーバーにデータを蓄積する。
「蓄積型プローブ」は、走行履歴や「オートパーキングメモリー」などの情報を「ブレインユニット」に比較的長い時間蓄積し、これらの情報を「リビングキット」を使い、ブロードバンドによる通信で専用サーバーに蓄積する。
「スマートループ」機能は、「リアルタイムプローブ」の情報、「蓄積型プローブ」の情報およびオンデマンドVICS情報を一括管理し、最適化してユーザーに提供することで、予想所要時間の精度を高め、最適なルート探索を実現した。

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9.サラウンド音響・最近の話題から

沢口真生

【要旨】

各種調査、アンケート結果に基づいて、最近のサラウンド音響を取りまく動向について述べる。各種調査結果から、サラウンド音響が理論や技術的な手法開拓分野は一段落し、普及のための環境整備といったいわばソフト面でのインフラ整備の段階にきている。

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1.ガラス洗浄工程最適化と官能評価の品質工学的扱い

石原孝之、熊坂治

【要旨】

プラズマディスプレイの高精細化により重要度が増してきた基板洗浄力に関し、品質工学技法を用いて汚れ種を誤差因子とし、7つの制御因子でパラメータ実験を行ない、ばらつき、洗浄力とも大幅に改善する条件を見出した。
また清浄度の官能的評価につき7種類の数値変換を比較した結果、品質工学SN比の優位性が明らかとなった。

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2.品質工学を適用したリブ形成条件の最適化

板谷旬展、熊坂治

【要旨】

プラズマディスプレイパネル(PDP)の隔壁(リブ)形成に使われるサンドブラスト工法の条件最適化を品質工学の動特性および静特性解析により試みた。
工程の内乱因子に影響されにくく安定して、しかもリブの頂幅、裾幅を独立して調整することが可能な条件を見出した。

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3.FR-1基板における、高密度実装量産化

吉野利明

【要旨】

従来、DVDドライブ用メイン基板には、FR-4基板(ガラスエポキシ基板)を使用していた。さらに製品コストの競争力を高めるために、FR-4基板より安価だが、寸法精度のバラツキが大きいFR-1基板(紙フェノール基板)をDVDドライブのメイン基板に採用し、高品質を維持して、量産化を実現した。

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4.新規はんだ付け工法の導入

松本充広、新井洋介

【要旨】

OEM車載製品の生産工程で、両面リフロー+フローの部品高さ11 mmに対応したはんだ付け工法を開発した。既存のフローはんだ付け装置では、両面リフロー+フロー工程の場合、フローはんだ付け面に配置できるリフロー部品の高さは4.5 mm以下で設計、生産を行っていた。これは、部品の高さが、4.5 mmを超えると、はんだ噴流が荒れ、はんだブリッジが発生するなど、製品の信頼性確保が困難になるからである。そこで、新規に工法を開発した。各種生産工法の検討を行なった結果、フラットDIP装置での生産化が最適と判断し、この方式で品質の安定化を目指した。本方式での生産では、品質に大きな影響をあたえるフラックス塗布、基板加熱、はんだ噴流と温度について確認、改善を行った結果、量産初期品質0.03%を達成することができた。

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5.気象データの車室内環境への適用

磯野紀夫

【要旨】

高品質なカーオーディオ、カーナビゲーションなどの製品を全世界で販売するためには、製品が使用されている各地域の温度環境、湿度環境を把握して、製品の開発、設計、および信頼性試験などを行う必要がある。
製品の信頼性試験条件の設定、あるいは不具合解析の際に照会する温度・湿度・結露・静電気など、製品が使用されている世界の各地域の気象条件に関わる情報を提供可能にするため、当社独自のデータベースを構築した。それには、各地点名が地図上のどの辺りに位置するのか、そこの地形が持つ気象上の特徴などの情報も含んでいる。
データベースの構築は、気象庁から入手したデータに基づいて、全世界ベース1920地点の最低気温-2σ、最高気温+2σ、平均湿度に変換することで実現した。さらに、このデータベースを用いて、車室内の最低温度想定値および、ある想定による湿度変化の指数を算定し、試験条件設定や故障解析などに適用できる情報へ変換した。

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6.シミュレーションによる
基板の反り解析システムの導入評価

松永清二、馬見塚尚志

【要旨】

プリント配線板の多層化・小型化・高密度実装化に対応して、実装方式にはリフロー方式が採用されている。また、無鉛ハンダの採用により、リフロー加熱時の温度が高くなり、基板に反りが生じ、はんだ付接合部の不良が発生する。我々は、このトラブル対策として「実測による反り評価システム」を導入し、はんだ接合部の不良発見などで実績を上げている。しかし、この方法では、製品導入の遅れ、生産コスト高などの問題が生じる可能性もある。そこで、反りの発生を基板設計の段階で予測し、それに対応した基板を設計することで、はんだ付接合部の不良の発生を防止することが可能かを検討した。加熱処理時の温度を240 ℃とし、有限要素法によるシミュレーションでプリント基板の反り挙動の解析を行い、それに基づいて反りの発生を予測した。
反り解析のシミュレーションの結果を評価するため、「実測による反り評価システム」で反りの挙動を調べた。その結果、両者の反りの挙動は、ほぼ、同じであることを確認した。シミュレーションによる反り挙動の解析は、はんだ接合部の不良を未然に防止するのに有効な手段であることが分かった。

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【一般論文】
PDP放電シミュレータの開発

皆川登、阿部裕之

【要旨】

PDPのセル内部で起きている放電現象を解明し、セル構造、駆動方法などの最適設計に供するため、3次元放電シミュレータを開発した。実測では困難なセル内部の各量の時間空間変化が求められ、放電現象の理論的解明が可能になった。また、PDPとしての各種特性量(壁電圧伝達曲線、動作電圧の範囲、エネルギーバランス、紫外線効率など)を求めることも可能になった。
本シミュレータの計算結果は公知の事実や実測と良く一致し、その有効性を確認することができた。PDPのさらなる高精細化、高効率化を進めるには、有力な設計ツールになるものと期待される。

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【部門紹介】
十和田パイオニア(株)の紹介

嶋村光芳

【要旨】

十和田パイオニア(株)はパイオニアグループ内で生産を担当する子会社である。
当社は2008年2月にFORD社向けナビゲーションシステムの納入実績に対し、Q1 Award を受賞した。また、3年前から取り組んでいる5S・VM活動ではVM本賞を受賞、それらの活動をベースにした生産革新活動が評価され、パイオニア社長賞を受賞することも出来た。これらの活動内容を中心に十和田パイオニアの紹介を行う。

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東北パイオニア(株) FA事業部の紹介

堀井俊孝

【要旨】

東北パイオニア株式会社は、パイオニアグループの関連会社の1つで、スピーカー事業部、メカトロ事業部、OLED事業部、部品開発事業部、技術開発センター、FA事業部の6事業部から成る。
本稿では、東北パイオニア(株)のFA事業部の概要、経営方針、製品の流れ、品質への取り組み内容、取り扱い製品の技術的内容を紹介する。

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