論文タイトル
徳永勉、中村英人、鈴木雅博、三枝信彦
【要旨】
AC型PDP(プラズマディスプレイ)の新駆動法(CLEAR方式)を開発した。(1) 充分なアドレスマージンを確保しつつ、リセット期間を1TVフィールドあたり1回にすることができた。その結果、『黒』表示時の輝度が下がり、暗室コントラスト比 560:1を達成した。(2) 各セルのアドレスパルスを 1TVフィールドあたり1回にすることで、アドレス駆動電力を削減した。(3) サブフィールドの発光パターンを連続的に配置することにより、動画擬似輪郭妨害を原理的に解決した。
詳細はこちら(PDF 1.6 MB)川見伸、中村健二、脇本健夫、宮口敏、渡辺輝一
【要旨】
従来の蛍光材料を用いた有機エレクトロルミネッセント(EL)素子にくらべ、燐光材料を用いた有機EL素子は遙かに高い外部量子効率を示すが、長寿命を示す素子の報告が無かった。
この燐光有機EL素子の長寿命化の可能性を探り、初期輝度818cd/m2で半減寿命3,000時間、初期輝度100cd/m2であれば20,000時間を超えると予想される性能を確認した。
宮口敏、脇本健夫、舟木淳、福田善教、久保田広文 大下勇、渡辺 輝一
【要旨】
R,G,B各色毎に最適な有機発光材料及び構造の採用,異なる発光材料を高精細に塗り分ける選択成膜法等の新技術を投入し,5.2インチQVGA(Quarter Video Graphics Array)パッシブマトリックス有機ELフルカラーディスプレイを開発した。このディスプレイは,NTSC(National Television System Committee)標準に近い色純度,輝度150 cd/m2,画素ピッチ0.33 mm x 0.3 3mm,消費電力1.4 W等の特性を有している。
詳細はこちら(PDF 996 KB)越智英夫、坂本強、石塚真一、土田正美
【要旨】
有機ELフルカラーパネルを駆動するシステムと陰極、陽極ドライバICを開発した。 新しい試みとして、各色の階調リニアリティを改善するための(1)RGB各色独立ハイリセット方式、(2)隣接ICの電流設定を自動的に行う電流つなぎ方式、(3)シリアルデータによる電流値調整機能を取り入れた。今後、東北パイオニアでのカラーパネルの試作評価、デモ、実用化にむけての研究に使用される予定である。
詳細はこちら(PDF 1 MB)萩原純夫
【要旨】
機構解析をカーエレクトロニクス機器の機構部の動作シミュレーションに適用した。定電圧駆動された小型モータによる駆動機構やウォームギアによる減速機構をモデル化する手法を開発した。機構部のガタや摩擦、部品の弾性を考慮することにより、計算値と実測値が一致するようになってきた。
詳細はこちら(PDF 420 KB)莪山真一、堀内直明、梶雅代
【要旨】
エージェント技術の民生製品への応用例として、二つのアプリケーションを開発した。
その一つは、エージェントが携帯電話、家庭内オーディオシステムとカーナビゲーションシステムをインターネット経由で連携したネットワークエージェントシステムである。本システムを用いることで、利用者はエージェントを介してどこにいても自由にカーナビゲーションシステムなどを活用できる。
次に、ディジタルTV受信機において、利用者の嗜好に合ったTV番組を推薦する、TV番組エージェントシステムとそのアルゴリズムを開発した。
野原学、児玉泰輝、鈴木康悟、塩田岳彦
【要旨】
次世代携帯電話の通信方式の一つであるW-CDMA技術の開発を行った。変復調性能に関してシミュレーション値とハードウエア実測値との比較を行った。その結果、シミュレーション値と実測値が一致し、ハードウェアの性能を確認した。またW-CDMAの応用技術であるOTDOA方式による位置検出システムの開発を行った。その結果、位置検出精度は理論的には±6.6 m以内の誤差範囲であることが判明した。
詳細はこちら(PDF 1.36 MB)宮里肇、橋本道一、中村毅
【要旨】
MPEG-7は2001年9月の国際標準化を目標として策定作業が進められている。
本稿ではまずMPEG-7の概要を述べる。MPEG-7は「マルチメディアコンテンツの記述インターフェース」といい、マルチメディアコンテンツの内容を記述するための枠組みを規定するものである。
次に現在筆者らが開発している2種類のMPEG-7アプリケーションについて説明する。1つはマルチメディアコンテンツからGUI (Graphical User Interface)を利用してMPEG-7データを作成する「MPEG-7エンコーダ」であり、もう1つはMPEG-7データを用いてマルチメディアコンテンツの検索や再生などを行う「MPEG-7クライアントアプリケーション」である。
樋口正生、森 隆一郎、稲垣勝利、戸崎明宏
【要旨】
HAViは家庭内においてネットワーク接続されたディジタルAV機器をメーカーや機種にとらわれることなく相互に運用するための仕様である。HAViアーキテクチャはホームネットワーク上の分散型アプリケーションを開発するためのAPIのセットとサービスを提供する。本稿ではHAVi仕様の概要として機器制御モデルとソフトウェアアーキテクチャについての紹介を行う。
詳細はこちら(PDF 959 KB)岩村宏、菅谷和実、佐々木努、河原哲也、山崎博司、遠藤秀人、守義明
【要旨】
ディジタルウォーターマーク(=電子透かし)は、コンテンツそのものに著作権管理情報などを埋め込む技術である。埋め込み前後で画質劣化が少なく、またその消去が困難であることから、ディジタルコンテンツ時代に有効なコピープロテクション技術として有望視されている。ここでは、ウォーターマークを利用したコピー保護システムと、その標準化動向について概説する。
詳細はこちら(PDF 137 KB)小黒貫太、雨矢俊幸、星仁、佐藤久芳、渡部保日児
【要旨】
高速ネットワークを活用して各地に分散する高度映像制作施設間で協調して編 集可能なDVDオーサリングシステムを開発した。本システムには「ロスレス圧縮技術」と 「アダプティブ映像再生技術」を開発し、導入した。
本システムは、「映像素材共有」、「同期再生」、「DVDビデオ検証」、「DVD作成支援」の4 つの機能ブロックから構成されている。映像素材・同期再生部は、各地に分散しているCGデータをはじめ、さまざまな映像素材からDVD用コンテンツを作成するのに有効である。 また、DVDビデオ検証・作成支援は、コンテンツの有効性を確認するのに効力を発揮する。 実際に上述の機能を評価し、DVD制作の効率化の向上に貢献することを確認した。
坪沼寛、福島憲彦、佐藤久芳、川口智之、星仁、細井雅幸、伊藤直人
【要旨】
社内におけるDVDプレーヤ、DVDレコーダなどの開発や、DVD Forumにおける検証活動で必須であるテストストリーム(ディスク)を作成することを主目的として、各種DVDオーサリングソフトウェアを開発した。要求されるテストストリームは特殊かつ複雑な仕様であり、市販のオーサリングシステムでは作成が困難なものである。オーサリングソフトウェアそのものも、社内研究用ツールとして他研究部門に供給した。
詳細はこちら(PDF 455 KB)柳平雅俊、安士光男、杉浦康司、南野政明、望月正人
【要旨】
心疾患に起因する事故防止を目的としたドライバー状態検出装置を開発した。ハンドル部に電極を配置し、電位差により心電図を計測して運転者の状態をモニターする。またハンドルと両手間の接触センサによって、両手保持もしくは片手運転の検出を行い、両手を保持している区間において、体動などによるノイズ判別を行って心電図を検出する。これらの記録情報は一定時間のフレーム毎にメモリカードに記録する。本装置を用いた実験データ例と、今後の可能性について示す。
詳細はこちら(PDF 604 KB)畑野秀樹、田中覚、山路崇、善尚、松下元
【要旨】
当社がこれまで文部科学省無機材質研究所と共同で進めてきた、ホログラムメモリー用定比組成LiNbO3単結晶の開発をメインに、最近のホログラムメモリー用記録材料の進展についてレビューする。筆者らは、従来のLiNbO3単結晶材料における問題点を明確にするとともに、LiNbO3の不定比制御技術により新たなブレークスルーを見いだした。不定比を制御して育成した定比組成LiNbO3においては、従来の一致溶融組成結晶に比べさまざまな物性を改善した。その結果、これまで最大の課題とされてきたメモリーの不揮発化を達成し、さらに紫外光の照射によって選択的に光初期化が行える新記録方式、"PREX"を開発した。
詳細はこちら(PDF 684 KB)細田康雄、三森歩美、神野智施、光畑孝典、工藤秀雄
【要旨】
今回、共晶系のGeInSbTe系材料を用いて、厚さ0.1 mmのカバー層を持つ、容量22.5 GBの相変化記録ディスクを開発し、当社が開発したリミット・イコライザを用いて、高密度記録の実現を検討したので報告する。
リミット・イコライザを用いることにより、通常のイコライザに比べて大幅なジッタ改善が得られ、高密度化や再生マージン拡大に有効であることが確認できた。
八子勲、福島学、柳川博文
【要旨】
本研究は、双方向音場共有ネットワーク(ISFN : Interactive Sound Field Network)を実現するため、知覚に基づく音響事象記述言語(AEML : Acoustic Events Modeling Language)を制定することが目的である。そこで、
1) 音場の知覚特性を調べることを目的に音場を表現する言葉(音場表現語)の選定
2) 音場表現語の類別
3) 音場表現語「広い」に対する知覚量の制御
を行った。
1)では国語辞典から選定を行った。結果として19語が選定できることがわかった。
2)では実音場のインパルス応答と音声信号で生成した刺激音を用いて主観評価実験を行った。
結果として
I) 音色性因子・高域因子
II) 音色性因子・低域因子
III) 空間性因子
IV) 自然・明瞭性因子、
の4枝に類別できることがわかった。
3)では選定された音場表現語の中から特に音場表現で重要な言葉「広い」に着目し、
a) 主観評価実験結果の尺度化および尺度値と対応する物理指標の検討
b) 対応する物理指標を変化させて知覚量が変化するかの調査
を行った。
a)でインパルス応答の初期部のエネルギーの振る舞いが「広い」に影響していることが明らかとなったため、b)で直接音・間接音比率が異なるインパルス応答を用いて主観評価実験を行った。結果として直接音の振幅を制御することで「広い」に対する知覚量が制御可能であることがわかった。
太田佳樹、松下文雄、石原博幸、小谷野進司
【要旨】
マルチチャンネル・オーディオにおける最適なリスニング環境の創生を目的とした自動音場補正システムを開発した。
最適リスニング環境は、各スピーカと受聴位置間で、周波数特性、レベル、タイムアライメントがほぼ一様になることで得られる。本システムでは、音場測定用マイクロフォンを搭載し、最適リスニング環境を得られるように上述のパラメータを自動的に補正することを可能にした。
フィールドテストで検証した結果、高い精度でこれら3つのパラメータを補正していることを確認した。
浜田博幸、細井慎太郎
【要旨】
DVDオーディオフォーマットによるマルチチャンネル再生を良好に実現するため、評価用ソフト、マルチチャンネルスピーカのセッティング法、およびそれによる聴感上の相違などの研究開発を行った。
録音系では、1)音場には、音源、アンビエント音をそれぞれ単独に録音・ミックスダウン後、重ね合わせる「SLM法」を適用、2)マイクロフォンにはサラウンド音場での集音に適するようにステレオペアマイクを発展させた「KHマイクアレイ」の開発、3)ミックスダウン時に各チャネルの時間干渉を低減させる時間整合(位相調整)、を行い、機器開発、およびセッティングノウハウの開発に適するように、評価用ソフトを制作した。
マルチスピーカの配置はITU-R配置が最適と判断し、正三角形を用いる「H1ルール」と二等辺三角形を用いる「H2ルール」用いて簡単、かつ正確に実現する方法を考えた。さらに群遅延特性を重視したサブウーファーの使用方法を開発した。
また、スピーカの設置方法により、1)空間の拡がり感、2)後方への拡がり感、3)横方向への拡がり感、が変化することを確認した。
さらに、本研究ではスピーカの性能向上だけでなく、アンプなどの機能・性能向上の要素を抽出できた。
市川俊一
【要旨】
本稿では次世代メディアとして誕生したDVDの中から、この膨大な情報量を音楽再生のための特化したDVD-AUDIOの可能性を追及した。ハード・メーカーである当社がなぜDVD-AUDIOのソフトを制作しなければならないのかを、国内の音楽業界のDVD-AUDIOに対する現在の状況を通じてその理由を解説。また5.1チャンネルという新しい立体音響のソフト制作をおこなうことで得られたノウハウは多岐に亘っている。さらにDVD-AUDIOに不可欠なエンコード及びオーサリングのための設備の導入と環境作り、これから先のハードウェアの開発においてなぜソフト作りが大切であることを明確にした。
詳細はこちら(PDF 50 KB)高橋真一、川村誠
【要旨】
DVD-R/RW、CD-R/RW共用記録ピックアップにおいて、光路が持つ収差を最適化し、良好な記録状態を確保する方法として従来行われてきたディスクを使用した光学調整に代わり、対物レンズによるディスク上の光スポットの集光状態を直接観察し、収差最小となるスポットを実現する手法(1)を確立したので報告する。
詳細はこちら(PDF 284 KB)加藤隆宏、宮森潤、里見邦也、斉藤豊、石田信夫
【要旨】
P9ピックアップは、対物レンズを単独で調整する新スキュー調整方式、アクチュエータ一体型ピックアップケース、樹脂端子レンズホルダ、スライド金型不使用のメタルレス軸受けピックアップケースなど 斬新な設計を取り入れ 従来モデルに対して大幅なコストダウンを実現した車載用CDピクアップである。
詳細はこちら(PDF 1.1 MB)杉本晃、吉田綾子、宮寺敏之
【要旨】
有機ELフィルムディスプレイは、非常に薄くて軽く、そしてフレキシビリティをもったディスプレイデバイスである。われわれは有機ELフィルムディスプレイの開発するにあたって、その要素技術の検討を行なった。
まず、樹脂基板上の防湿バリア膜として窒化酸化シリコン(SiON)膜の検討を行った。窒素と酸素の比を最適化したSiON膜を用いることで、有機ELにとって十分な光学特性と防湿性を持つものを得ることができた。次に、防湿バリア膜に存在する欠陥の低減を試みた。樹脂基板の平滑化を行なうことで防湿膜のピンホールを減らし、環境試験後の発光特性を改善することができた。
そして、これらの技術を集約して3インチモノカラー有機ELフィルムディスプレイの試作を行った。
原澤直希
【要旨】
フィルム有機ELディスプレイの用途開発につながった、デザイン主導型先行開発の紹介を主軸に、有機ELの可能性をデザイナーの視点で考察した。
開発の基本コンセプトとして、ユビキタスとエージェントの世界を探求していく中で、いちばん人間に近い部分にスポットを当ててアドバンスデザインの組立を行った。既存の考え方である「ウェアラブルコンピュータ」の次の概念として「メディアファッション」を位置付け、情報機器と被服の新しい形を創造した。この過程で、フィルム有機ELが最適な要素技術のひとつであることに着目している。その応用範囲としてロボットなどの新産業分野への可能性も見据えている。