シャーシ構造、シールド対策

ナビ関連の回路とオーディオ関連の回路を完全に独立レイアウトにするための構造。シャーシのインピーダンスをしっかり下げてデジタル系のノイズを効率的にシャーシへ逃す堅牢な構造とし、アナログオーディオの1点アース構造への不要なノイズ流入を防ぐ高音質設計。メインSoC基板やDTVモジュールは、空間への不要な電磁波ノイズ輻射を徹底的に抑えるため、全面シールドを採用しています。
シャーシ構造、シールド対策

高音質回路ブロック配置

ナビ関連の回路、オーディオ関連の回路、その他システム系の回路を明確に分けて、オーディオ基板からアナログオーディオに悪影響を与える回路ブロック(メインチップ、デジタル映像、マイコン、位置認識システム…etc)を徹底してカーナビ基板に集約。これにより、アナログオーディオの音質を担保するとともに、ナビ関連の回路がコンパクトに集約されることで、内部外部へのノイズ輻射を徹底的に抑制しています。

高音質回路ブロック配置

▲オーディオ基板

高音質回路ブロック配置

▲ナビ基板

高密度回路配置技術(ナビ基板)

オーディオ部への基板スペースの確保およびデジタル回路からのノイズ輻射抑制を目的とし、各デジタル回路をナビ基板へ集約。部品点数に頼らないコンパクト回路設計技術を用いて、不要な部品を削除・最適化することでシンプルな回路を実現。さらに、高いパターン設計技術により、ナビ基板での高密度回路設置を実現すると同時に、オーディオ回路ブロックへ広大なスペースを確保し、各種回路からのノイズ輻射を徹底的に抑制しています。
高密度回路配置技術(ナビ基板)

熱設計

その流れで、熱雑音による音質劣化を抑えるために、熱源はナビ基板へ集約。ナビ基板に比べオーディオ基板の定温化を実現し、高音質化。通常であれば放熱部品によるコスト増を避け、ナビ基板、オーディオ基板に万遍なく熱源を分散させる手法を取りますが、ここにも音質最優先の思想が息づいています。

ナビ基盤

▲ナビ基板

オーディオ基盤

▲オーディオ基板

流体設計

サウンドマスタークロックやD/Aコンバーター、I/V変換回路等の音質に大きな影響を与える部分は、空気の振動による音質への影響をも排除するためオーディオ基板周辺に大きな風の流れが起こらないような構造とした。これは熱源をナビ基板へ集中させたことによりこの構造が実現しています。

図は、製品正面から背面方向(矢印の方向)への空気の流れをシミュレーションしています。青から赤になるにつれて風量が大きくなっていることを表しています。下段にあるオーディオ基板の周りは、上段にあるナビ基板の周りに比べて風量が抑えられていることが分かります。熱源をナビ基板に集中させ、尚かつFANの吸引ポイントも上部に集中させることにより実現しています。

【流体解析】流体解析風量シミュレーション

振動対策

振動による音質劣化を排除。カーナビには様々な回路ブロックがあり熱源が非常に多いため、FANによる放熱は必須となります。しかしパワーアンプ部やアクティブフィルターなど大きな増幅を行っている部分は、振動による音質劣化が起こりやすいため、FANの振動による悪影響も徹底的に排除するため背面シャーシの強度を高める設計を施し、高音質化を実現。シャーシ間の固定用ビスも増量させ、堅牢で振動に強い構造としています。

制振用T字スリット

▲制振用T字スリット

背面シャーシ振動比較

▲背面シャーシ振動比較

一点アース構造

オーディオ基板においてパワーアンプ用の大容量コンデンサーのGNDを基準とし、低インピーダンス化するため、銅メッキビスを1ヶ所に限定して使用。その他のブロック、シャーシは銅メッキビスと通常のビスを組み合わせて使うことで、基準GND、シャーシへのリターン電流をコントロールする「一点アース構造」を実現。デジタル回路ブロックはシャーシGNDとの接続性を高めて、アナログオーディオ系へのGNDノイズ流入を徹底的に防いで高音質化を図っています。
一点アース構造

GNDノイズセパレーションまでも考慮した、各回路専用の高性能電源を採用

数多くの回路ブロックが搭載されるカーナビにおいては、一般的にコストダウンやスペース効率のために電源出力を様々な回路で共有する設計が行われることが多い。また、電力設計や熱設計の事情により、高性能シリーズレギュレーターではなく、ノイズ発生が多いものの大電力を供給できるスイッチング電源を様々な回路で共有せざるを得ない場合が多い。ただし、この電源共用化とスイッチング電源の採用は、アナログオーディオにとっては音質を大きく阻害する要因であり、「高音質を実現する」という観点では極力各回路専用の高性能電源を使用することが理想となる。供給電源から各回路に流れた電流は、供給側のGNDに戻ってくる。オーディオ系回路と、その他のデジタル回路などのノイズ源となり得る回路で電源を共有した場合、電源のみならずGNDにも他の回路からノイズが混入してしまう。オーディオ回路ブロック内であっても、系統別の独立電源が理想的である。さらに各系統で電源回路を専用化することにより負担を軽減し、余裕のある電源供給が可能となります。
GNDノイズセパレーションまでも考慮した、各回路専用の高性能電源を採用

▲GND系統分割イメージ

「マスターサウンド・アーキテクチャー」により、スペースの確保、熱源の最適化、放熱設計の最適化をはかることにより、各オーディオ回路ブロックにおいて専用の高性能電源を用意した。

  • DSP回路用 専用シリーズレギュレーター
  • DACデジタル回路および、サウンドマスタークロック 専用シリーズレギュレーター
  • DACアナログ回路用 専用シリーズレギュレーター
  • 「I/V変換回路、LPF、電子ボリューム回路ブロック」 専用シリーズレギュレーター

上記以外にも一般的にはスペースやコストの関係で採用できていないことが多い、オーディオ回路専用の負電源回路を搭載。通常の中点電源を基準とした信号伝送ではなく、クリーンでインピーダンスの低い信号伝送方式を採用し、高S/N比と低歪みを実現しています。

高音質パターンニング

差動パターンレイアウトや電源GNDパターンなどにおいては、閉ループを極力小さく設計し、回路間の相互干渉、ノイズ混入を抑え込んだ高音質パターンニングを実施。高音質回路ブロック配置技術と相まって、抜群の数値性能を確保。最終出力のスピーカーラインの差動出力も「+-」をペアで引くことで、シールド効果を持たせながら低インピーダンス化によるノイズの混入防止と音声信号の安定を図っています。
スピーカー出力パターン図

▲スピーカー出力パターン図

ストレート回路設計思想

DAC以降のI/V変換回路、ローパスフィルター(LPF)を経由して電子ボリュームに流れるアナログ変換された後のオーディオ信号経路をストレートに配置し、最短でパワーアンプまでもっていくパターンニングを実施。これにより、センシティブなオーディオ信号をピュアな状態を保ったまま出力し、スピーカーまで送り届けています。
ストレート回路設計思想:パターン例

▲ストレート回路設計思想:パターン例

パイオニア リファレンスチューニングと製品の音質評価体制

カロッツェリアでは、特にオリジナル音源を忠実に再現する原音再生にこだわりをもち、部品のクオリティを最大限に活かしたチューニングを施しています。製品の基本設計の後、常に飽くなき追究を続け回路設計の最適化を実施し各回路ブロックの定数を見直しをすることで、常にハイレベルな領域を目指して取り組んでいます。

  • 開発準備フェーズでは主要パーツの緻密な部品選定。
  • 製品開発では、抵抗やコンデンサーの細かい定数も より高音質になるよう追い込み。
  • 開発終盤フェーズでは、カーナビ事業部門のみならずスピーカー・アンプなどに携わっている
    各事業部から選りすぐりのメンバーが集まり、数十名からなる音質委員会という組織が、
    パイオニアとして音質的に世に送り出して良い製品に仕上がっているかのジャッジメントを実施しています。