カーナビでのハイレゾネイティブ再生においては、ナビゲーション機能など幾つもの処理プロセスが動作する中で、高速な演算処理で高音質デコードを行う必要があります。従来よりも高性能なクアッドコアSoCを用いながら、各種プログラムの動作優先順位を最適化し、パフォーマンスを確保しながら、高音質デコードを実現。
メインチップにおいて、入力されたFLAC/ALAC/WAV/DSD/mp3…など各種フォーマットの音声データからリニアPCMの音声を取り出し、後段の「SRC:Sampling Rate Converter」にて96kHz/24bitへの変換を行っています。
カーナビでは、タイムアライメントやイコライザーといったデジタル信号処理を行うため、1bitの信号もリニアPCM信号へ変換する必要があります。この変換処理はロスレスファイルの変換などとは違い、動作原理の違うフォーマットへの変換処理のため、SoC内でデジタルフィルターを用いた高負荷な演算処理を行う必要があります。よりアナログに近い特性を持つDSD音源の高音質再生を実現するため、FIRフィルターを用いた音質最優先の「DSD-PCM変換処理モジュール」までも独自開発しています。
44.1kHz等の既存ファイルは高音質再生を行うため、デコード処理後にSRCにて96kHzへアップコンバート。この処理は、サンプリング周波数の変換処理のため、歪成分が原理上発生する。今回、各種フォーマットの音声データをハイレゾ相当にしっかりと音質向上させる「マスターサウンドリバイブ(MSR)」の下支えとして、アップコンバート処理による音質劣化を徹底的に抑制するため、SRCには、独自開発の高性能FIRフィルターを採用することで、線形位相を実現し、高精度なサンプリング周波数拡張を行っています。加えて、急峻なカットオフ特性を誇るLPFで折り返しノイズ/イメージングノイズを徹底的に排除。後段のDSP回路ブロックへ伝送し、ピュアなファイル変換、信号伝送を実現することで高音質再生を担保しています。
▲メインチップ:高性能クアッドコアSoC
デジタル音声信号処理の要となるDSPには、フルタイム52bitの高精度・高速演算処理DSPを搭載。全てのソース音声を96kHz/32bitでデジタル信号処理し、ハイレゾ楽曲の高音質そのままに、高度な音場コントロール機能を実現。さらに非ハイレゾ音源もパイオニア独自技術「MSR」でハイレゾ相当に音質補正し再生することが可能。イコライザーやカットオフなどの演算処理時に原理上演算誤差が発生しやすい処理部では倍精度演算処理を実施、これにより音質劣化を徹底排除。また、調整時、試聴時共に内部処理が変わらないため、最終的な音を聴きながら、徹底的に音質を調整することが可能です。
DSPモジュールでは、高精度なフィルターを使用した演算には誤差が発生しやすいため、処理数が多くなってしまうものの「倍精度演算」を用いて正確なデジタル演算処理を行っている。例えば、31Bandグラフィックイコライザーで超低域のレベルを0.5dBという極微小な値を変化させようとした場合、変化量の値が小さすぎるため、通常の演算では正確な計算処理ができません。また、録音レベルが微小な音声信号に対してカットオフした周波数帯域においても、演算誤差が発生してしまいます。
このように通常のフィルターを使用した演算では、微小ではあるものの誤差が発生してしまうため、「倍精度演算フィルター」を用いて、通常のフィルターでは処理できない、より精密な演算を行っています。
「倍精度演算」では、16bit音源と24bit音源の差を表現する場合などに重要となる”微小信号のわずかな変化”に対しても的確に演算を行うことができます。またインストーラーが意図した音創りができる様、精密なカットオフ処理の実現のために、細心の注意をはらってDSP演算処理プログラムの開発を行っています。
搭載しているDSPは、RAMベースのDSPであるため、製品開発においては、意図した性能を実現するために独自の高性能フィルターなどを搭載することが可能となります。したがって、同じDSPを使っても製品開発者によってその結果は全く違うものとなります。パイオニアでは、永年の歴史で培ったノウハウを最先端のデジタル技術にも応用し、原音に忠実なデータをピュアなまま伝送するという、デジタル技術が担う役割を全うすることで最終的な出音の高音質を実現しています。