近年注目を集める自動車の安全運転支援機能。カーナビを使ったリスク回避のワンシーンを、
短編小説にしました。読み方によっては、脱力系企業小説としても楽しめるかも?
それはわたしが決して楽しいとはいえない会議に出席しているときのことだった。昼休み後ということもあって眠気に襲われていたわたしは、もう少しで意識を失う寸前だった。
ポケットの中で私用のスマートフォンが振動しなければ、課長に大目玉を喰らっていたかもしれない。
どうやらメールを受信したらしい。普段なら仕事中にチェックはしないのだが、あまりに退屈だったため、わたしはこっそりメールを開いた。
文面を読んでも、最初は何のことだかわからなかった。しかし添付されている画像を見て、ようやくわたしは得心がいった。少しヒヤッとしたが、大丈夫だったようだ。おかげで眠気もさめた。
と、またスマートフォンが振動し始めた。妻からの電話だ。ちょうどいい。「のっぴきならぬ電話が……」という顔をして、わたしは会議室を抜け出した。
あなた聞いてよ!危ないところだったのよ!」と妻。
「うん。運転中に自転車とぶつかりそうになったんだろ?」とわたし。
「え!?……なんで知ってるの?」
「見てたから」
「どこで!?」
「嘘だよ。ウチのカーナビ、セキュリティ機能がついてるだろ。急ブレーキを踏んだときの振動を検知して、その様子を撮影して俺にメールしてきたのさ」
そんなことできるんだ、このカーナビ。あなた、
これまで教えてくれなかったじゃない」
「え……、だって、聞かれなかったからさ」
「ふーん。そのメールって、わたしにも届くようにできるの?
あなたよくぶつけるから、その証拠も残せるってことでしょ?」
あ、ごめん、今大事な会議中でさ、俺がいないと進まないから切るね……」
わたしは慌てて電話を切った。しまったな、余計なことを妻に知られてしまった。口は災いのもとだな。
ふと顔を上げると、そこには課長の顔が。
「会議なら終わったぞ。お前が退席したおかげで、いつもよりスムーズに進行したよ」

走行中も駐車中も様々なリスクからドライブをサポートする
マルチドライブアシストユニットと連動するカーナビは、「サイバーナビ」だけです。