carrozzeria QUALITY  カロッツェリアクオリティ
第2回 車室内環境を克服するという発想。 デジタルからアナログへ
「ODR思想」から生まれたもの
アナログからデジタルへ
1990年代初頭、それはCDやMDなど音楽メディアがデジタルへ大きく変わった時期でした。
1993年、カーオーディオのハイエンドオーディオもまた「carrozzeriaX」誕生によってアナログからデジタルへ大きな変革の時代を迎えることになるのです。
当時、一般的なカーオーディオの世界はアナログ成熟の時代。各メーカーはカーオーディオの音質よりも、商品のイルミやデザインを派手に見せることに専念したものづくりを行なっていました。そんな時代に、「このままではカーオーディオがおかしくなる。本物の良い音をユーザーに届けたい。」と考えた人がいました。その中のひとり、「carrozzeriaX」の立ち上げを陣頭指揮した事業企画部の豊田は、こう振り返ります。
「当時、本体の照明が派手に光る、いわば軟派な商品が作り出されることに疑問を持っていました。派手さにも限界がありますし、オーディオである以上音への探究心を忘れてはいけないと思いました。」
「良い音をユーザーに届けたい。」
豊田はこの想いを胸に「carrozzeriaX」の開発に取り組んだと言います。当時はバブル崩壊の時期、しかし「carrozzeriaX」の商品開発に、
「今ここで止めたら二度とチャンスはない!」
という上層部の後押しもあり開発プロジェクトに約30億円もの莫大な費用を投入。こうして豊田の音への挑戦はスタートしました。

まず考えたのはクルマの中ということ。当時カーオーディオで使用されていたアナログケーブルではクルマの中でノイズの影響を受けやすく音質が劣化するという致命的な問題がありました。また、同軸ケーブルを使うとクルマの中でノイズを生み出し、車両のマイコンに影響を与えるという問題もありました。ところが光デジタル伝送であれば、ノイズの問題は全て解消。光デジタル伝送はノイズが生じやすいクルマという特殊な空間に有利という結論に達しました。
1991年「carrozzeria」ブランドのハイエンド・オーディオモデルとしてXシリーズを投入。1993年に、新たに投入した「carrozzeriaX」ブランドのデジタルシステムで、ようやく納得のいくものができたと豊田は振り返ります。当時、豊田が開発にあたって書き上げたという基本仕様は、今も「ODR(Optical Digital Reference)思想」として、カロッツェリアのハイエンド・オーディオに息づいています。
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「ODR思想」から生まれたもの
「良い音をユーザーに届けたい」という想いから生まれた「ODR思想」。 この取り組みの中から生まれたものが2つあります。ひとつは音楽の美しさを純粋なまま楽しめる高音質技術。そしてもうひとつが車室内の音響的な問題を解決する音場制御技術です。
1993年に登場した世界初デジタル伝送方式採用のシステムコントロールチューナーCD「RS-D2X」、デジタルピュアクラスAインテグレーテッドアンプ「RS-A1X」には「ODR思想」が生み出した音場制御技術のひとつとして「タイムアライメント」機能がありました。
当時、クルマの中ではリアから音が流れるという考え方が主流でした。しかし本来のステレオ再生はフロントにスピーカーを置くのが基本。ステレオの奥行き感を表現するにはホームオーディオと同じようにフロントから音が聴こえてくるのが理想的な形でした。
「本当に良い音を聴くには前から音を聴く必要があります。そこで生まれたのが前方定位という考え方。ボーカルの声を前方に持っていくためにはスピーカーから出る音の左右の時間差を調整する必要があります。その時、車室内の環境を克服するタイムアライメントの発想が出てきたのです。」
アナログではなくデジタルだからこそ、音質劣化することなく信号を自由に調整できたと豊田は語ります。
しかし、商品そのものの性能がいくら高くてもクルマは取付けでその音質が大きく変わってしまいます。そのため「RS-D2X」「RS-A1X」発売時には、販売店向けに車室内の音響特性を自動測定・補正するオーディオアナライザー「AX-1」を利用したチューニングサポートシステム「TSS」が開発されました。販売店はこれを使ってユーザーのクルマに最適な調整を行ないました。
「もちろん最終的なチューニングは人の耳です。でも人の耳で1からチューニングをするには膨大な時間がかかってしまいます。自動で測定する「TSS」だからこそ短時間でのチューニングが可能でした。」
「carrozzeriaX」の取り組みの中から出てきた「車室内環境の克服」という考え方。この考え方は、過去から現在そして未来までカロッツェリア商品全てに変わることなく息づいていくものです。第一回で述べた“あらゆるクルマで”、“誰でも”、“手軽に”、“的確に”高音質を味わえることを目指して生み出された「オートタイムアライメント&オートイコライザー」もこの考え方から生まれたテクノロジーなのです。
「ODR思想」が生んだものは革新的なテクノロジーだけではありません。「carrozzeriaX」が真のハイエンドモデルブランドとして認知されるようになった今、「carrozzeriaX」の開発に参加したいという若い技術者も少なくありません。
「30億円という莫大な費用をかけて開発したのでプレッシャーもありました。でも、やって良かったと思うのはエンジニアが育ったことです。開発当初は聴き分けられなかった細かい音が何度も音をチェックしているうちに聴き分けられるようになります。そんな経験を経て優秀なエンジニアがたくさん育ちました。彼らが中心となり、良い音をユーザーに届けるためにまだまだこれからもやるべきことが数多くあります。」
現状に満足せず、常にカーライフの先進を見据えたカロッツェリアの技術革新はこれからも続いていきます。
第3回へ続く


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