Piomatix LBS API 導入事例

国際航業株式会社 様

“エネがえる”&“カーボンニュートラルAPI”で、
EV・V2H利用時のエネルギー可視化へ

用途:カーボンニュートラル化の経済効果測定ツールにおける
EV消費電力とCO2排出量可視化

国際航業株式会社は2023年よりパイオニアと協業し、
「Piomatix LBS API」の「カーボンニュートラルAPI」を
自社開発システムに導入しています。

持続可能なエネルギーをフル活用するために、
異分野のリーディングカンパニーが協業

1990年代よりカーナビゲーション事業に取り組むパイオニアは、蓄積されたプローブデータを活用し、「カーボンニュートラルAPI」へと進化させました。

「カーボンニュートラルAPI」で可能となった、走行ルートごとにEV(電気自動車)の消費電力量を高精度に算出する「EV消費電力推定技術」を、2023年より太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーションサービスを展開する国際航業に提供。同社の「エネがえるEV・V2H」の高精度化に寄与しています。

両社の協業によってGX分野にどのような変革がもたらされるのか。また「エネがえるEV・V2H」を導入することによるメリットは何なのか。事業担当者である国際航業の公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーグループ・桑田正英氏とパイオニアモビリティサービスカンパニーの戦略チームディレクター・小川慶輔が深掘りします。

走行中の車から通信ネットワークなどを通じて得た位置や速度などのデータ

V2H : ビークルトゥホーム(Vehicle to Home)の略称。 EVやPHV(プラグインハイブリッド車)のバッテリーに蓄えられている電力を住宅の分電盤に接続し、家庭内の照明や家電製品などを動かす電力として使用するシステムの総称。

お二人はどのような業務に携わっておられるのでしょうか。
桑田「自己紹介を兼ねてお話ししますと、私は国際航業のエンジニアで、『エネがえる』プロジェクトのシステムの開発から運用までを手掛けています。

国際航業 公共コンサルタント事業部カーボンニュートラル推進部デジタルエネルギーグループ 桑田正英氏

特に、太陽光や蓄電池を導入する際の最適な電気料金プランの提案に力を入れていて、今では100社、3000プランという、業界内でも類を見ない規模を管理しています。もちろん、将来的には競合も出てくるでしょうが、この部分は『エネがえる』の大きな強みですね。 またパイオニアさんとの協業で始まったEVやV2Hの導入効果シミュレーション『エネがえるEV・V2H』の開発に関しても、私が中心となっています」
小川「私はパイオニアでEVとCO2排出量算出API排出量の可視化に関する新規事業開発に力を入れております。

パイオニア モビリティサービスカンパニー 戦略チームディレクター 小川慶輔

実はEVとCO2排出量の可視化の技術は、パイオニアに10数年前からありました。日本で初めてEVが販売された時期に、EVがどれくらいの電気を消費するのかを計測するナビゲーションを開発したのです。 近年カーボンニュートラルへの取り組みが加速する中で、私どもはこの技術を高め、さらに広範囲に展開しています。 国際航業さんにご協力している『エネがえるEV・V2H』のプロジェクトでは、EV(電気自動車)を使用した際の電力消費量の予測技術『EV消費電力推定技術』を駆使し、『エネがえるEV・V2H』サービスの精度向上に貢献しています」
「エネがえるEV・V2H」とはどのようなサービスなのでしょうか。
桑田「太陽光発電システムや定置型蓄電システム、EV、V2Hを導入した際の経済効果を簡単に診断できるシミュレーションサービスです。既に多くの企業に導入していただいている既存サービスの『エネがえる』に、EV、V2Hの導入シミュレーションを追加したものとなります」
小川「車の利用頻度や走行ルートに関しては、所有者ごとに多様なので非常に予測が難しいものです。その点に関してパイオニアは『カーボンニュートラルAPI』というソリューションを持っていますので、今回の協業に至ったというわけです」

「エネがえるEV・V2H」正式版とパイオニアの「EV消費電力推定技術」を連携させることにより、EVの出庫・帰庫のタイミング(駐車時間帯)や帰庫時のEV充電状態(SoC:State of Charge)、出庫時に必要なSoCの高精度な予測が可能になる

エネルギーマネジメントに興味があり、EVを保有している企業にとっては、活用度の高いサービスになりそうです。
桑田「従来から『エネがえる』を活用されていた太陽光発電システムのメーカーや施工販売店、設置事業者の方々に加えて、EVを扱うカーディーラーやEVのリース会社の方々にも活用していただけるのではないかと期待しています。我々2社で協力し、国内におけるV2Hの利用や太陽光発電の普及を促進していきたいと考えています」

強みは豊富な電気料金プランの策定実績と
車両プローブデータの蓄積量

近年は特にGX(グリーントランスフォーメーション)を目指す流れが加速していますが、両社ともかなり以前からエネルギー改革の分野に取り組んで来られたのですね。
桑田「我々がエネルギー測定事業を始めたのは8年以上前、仙台でスマートシティのコンサルティングをさせていただいたときに遡ります。そのなかでスマートハウス化を提案し、住宅にエコキュートや太陽光パネルを導入するプロジェクトを手掛けたのですが、その電気プランの最適化のために電気料金の比較を行うようになりました。

同事業から発展して、太陽光蓄電池のシミュレーションや電気自動車(EV)など、さまざまなツールの経済効果を可視化するサービスを展開することになったのです。8年前の当時は電力自由化の認識も低かった頃からですから、業界では草分け的存在といえるのではないでしょうか」
小川「パイオニアは10数年以上にわたってカーナビゲーションサービスを提供し、車のプローブデータを収集してきました。このデータを利用して『Piomatix』というモビリティAIプラットフォームを開発したのです。

これは非常に精度の高い渋滞情報や到着予想時刻を提供できるプラットフォームで、このデータをEVの消費電力予測に活用したものが『カーボンニュートラルAPI』というわけです」
長年の取り組みの結果、蓄積されたデータやノウハウがもたらすアドバンテージには、どのようなものがあるでしょうか。
小川「一番にはデータにしっかりとした裏付けがあることですね。パイオニアは日本全国の道路総延長にして、70万㎞もの走行データを収集しています。道路状況や渋滞情報の蓄積データの裏付けにより、EVの消費電力やCO2排出量算出API排出量を算出しているのです。 電力消費は道一本の違いで変わります。具体的には渋滞の発生しやすさ、時間帯、また信号の多い都市部か静かな地方かによっても、消費量は大きく異なる。私たちにはこの全てのデータがあり、どのルートを選ぶかによって、特定の日時での所要時間と燃費を予測できます。そこが大きな強みですね。

実際、使用するルートによって電力消費量は3倍、4倍と大きく変わることがあります。ここまでの大きな差を無視して、一律の平均値を元にしたシミュレーションを提供してしまえば、最終的にはユーザーに不利益をもたらすことになりかねません」
桑田「まさにその点が、パイオニアさんと協業する魅力です。EVに関してはシミュレーションのための一次データを手に入れるハードルが高いですから。 統計データや二次データならば、手に入りやすいのですが、一般的すぎて具体的なシチュエーションに当てはめるのが難しい。ですから実際に走行する車を直接測定した一次データを使わなければならないのです。しかしこれは集めるのにも、活用するのにも時間とコストがかかります。その点パイオニアさんは、この分野の先駆けで、既に一次データを膨大に持っていらっしゃる。

我々の『エネがえるEV・V2H』を精緻化するうえで非常に心強く感じています」
一方、国際航業の「エネがえる」は太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーションサービスの分野で国内シェア1位です。その優位性はどのようなところにあるのでしょうか。
桑田「各社の電気料金プランの比較検討というプロセスに、多くの会社が課題を感じているなか、我々は独自のフローを確立しているところが強みです。電力会社ごとの料金情報はホームページで公開されてはいるものの、これを自動収集して比較するのは非常に難しく、多くが人の手作業によって行われています。我々も手動で行っているのですが、長年のノウハウで、ある程度効率化して行える点が、他に真似できない部分だと思います。

さらに、太陽光や蓄電池のシミュレーション提供時の操作性や見やすさにもこだわりがあります。多くのサービスが専門的な知識を要求する中で、私たちは知識がない人でも使いやすいことを心掛け、「むずかしいシミュレーションを誰でもカンタンに」をモットーに、とことん追求しています。他社に対してのアドバンテージとして、今後も磨いてゆきたい部分です」
小川「GX業界には様々なプレーヤーが存在しますが、再生可能エネルギーの活用に早くから取り組み、長い間、地道に事業を展開してきた国際航業さんの実績と信頼性は非常に価値があります。 我々双方が強みを生かし合い、エネルギー活用の新たな時代に向け、ともに貢献できることが嬉しいですね」

目標は2030年。
カーボンニュートラル達成の第一歩は
エネルギーの可視化

世界規模でCO2排出量算出API削減の取り組みが進行するなか、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言し、2030年までに脱炭素化を進めることを決定しました。それに伴い日本企業も脱炭素に取り組む姿勢が問われています。
小川「そうですね。ESG経営の観点からも、企業が率先して再生エネルギー利用に踏み切る姿勢が求められています。しかしながら実際に私たちが様々な企業の方とお話するなかで、EVの導入はその難易度やコスト面が障壁になり、検討の優先度が上がりづらい企業が多いように感じています。

スコープ1、2、3という温室効果ガス排出のカテゴリーがありますが、比較的多くの企業がスコープ1や2における再生可能エネルギーへの切り替えに取り組み、進展しています。そうなると、次のステップとしてスコープ3の取り組みが焦点になるはずです。スコープ3の優先順位は企業によって異なりますが、特に車両を多用する物流業界などでは、車両のEV転換が大きな課題になると予想されます。

本図は資源エネルギー庁の情報をもとに、自社作成

知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは

(資源エネルギー庁のサイトに移動します)

企業でEVの導入が進まない原因は、太陽光発電だけではなくEVの導入を考えた時のシミュレーションが分かりにくいことが挙げられるでしょう。しかし実際には、EVを蓄電池として使うV2Hの観点からもCO2排出量算出API削減の観点からも、EVの導入はメリットがあります。 ですから今後はEV導入も含めたスコープ1、2、3を包括するシミュレーションを提案して、啓蒙活動を進めることが重要です。そのためにも私たちは国際航業さんと協力し、『エネがえるEV・V2H』の普及を推進していきたいのです」
桑田「企業での大規模な太陽光エネルギーの活用に関しても課題は残っており、私はその課題解決の可能性のひとつがV2Hの技術にあると考えています。 企業で太陽光エネルギーを活用する際の設計では、できる限りエネルギーを使い切るようにするものの、工場の稼働状況によってはどうしても余剰が生じることがあります。これをどう活用するかという課題があり、その解決方法のひとつに余剰部分をEVで活用することが挙げられます。

企業における新たなエネルギー活用の可能性を切り拓くには、さまざまなパターンについてコストとメリットを明確にすることが必要です」
現在最も再生可能エネルギーが普及しているのは、どういった分野なのでしょうか。
桑田「太陽光発電の活用に関しては、一般家庭の方が先行しています。太陽光と蓄電システムを組み合わせると、15年くらいで投資分が戻ってくるというシミュレーションがあり、導入しやすいのです。災害時にも、太陽光で発電して蓄電しておけば、家の基本的な電力が確保できるという安心感もあります。更に近年電気代が上がっていますし、節約的な面でも自家発電への関心が高まっています。 国際航業は、これまでにも環境配慮型のまちづくり等を通じて公共施設や一部家庭向けに太陽光発電を提供してきましたが、電気代の上昇とともに、太陽光と蓄電池の需要がどんどん高まっています。それに伴い我々の『エネがえる』の売上もかなり伸びています。 蓄電池はコストが高くて、本来であれば手が出しにくいものなのですが、今は国や自治体が補助金を出しているケースが多くあり、お得感があります。だからこそ15年で先行投資が回収できるというシミュレーションが成り立つわけです」
今のところ最も再生可能エネルギーが積極的に導入されている市場は、個人需要ということですね。国の政策としてカーボンニュートラルを目指してゆくとなれば、企業も補助金を活用できるのではないでしょうか。
桑田「はい、環境省が各自治体を通して給付する企業向けの補助金は潤沢ですし、今後も拡充されていくと思います。しかしなかなか再生可能エネルギーの導入が進まない。そこは自治体も、もどかしいところかもしれません。

『なぜ企業がそういった補助金を使わないか?』というと、やはり事前に効果が見えない不安があるでしょう。そこで我々としては、再生可能エネルギーの給付金活用も含めた経済メリットを可視化することで、各企業と自治体を繋げるハブになりたいと考えています」

誰でも使える測定ツールが、
エネルギー転換期の課題を解決する

企業や自治体が再生可能エネルギーを導入しやすくするために、今後はどのような価値を提供していくのでしょうか。
桑田「繰り返しになりますが『見える化』が重要なステップだと考えています。ここがパイオニアと国際航業の得意分野であり、原点です。測定して可視化することで、再生可能エネルギーの活用メリットを増やす方策が立てられ、それは企業の利益に直結するでしょう。 さらに、社会全体の視点から見ると、『エネがえる』のような複雑な問題をシンプルに解決することの価値は大きいと自負しています。特に、専門性が高く知識の習得に時間がかかるエネルギー分野においては、分かりやすいシミュレーションを手軽に得られるようにすることが重要です。これは人材の育成や労働力の効率化にも貢献できるはずです。実際『エネがえる』を活用することで、経験の少ない新入社員が太陽光蓄電池の販売をサポートできるなど、営業人材の育成につながっています。担当者の異動が多い自治体においても、誰でも使いやすい太陽光・蓄電池の経済効果シミュレーションのツールがあれば、継続的な行政サポートが実現できるのではないでしょうか」

小川「私どもの視点から見ると、太陽光などの再生可能エネルギー推進は、日本政府が長年にわたって力を入れてきた分野なので、かなり進展していると感じています。その後にEVが登場したという順序で、導入はこれからというところです。 社会では再生可能エネルギーの本格的な導入や検討が進んでいます。今年は先ほど触れたスコープ1、2段階を経て社有車などの細かな部分にも注目が集まり始め、スコープ3の段階に入ってゆき、車両のEV転換への関心も高まってゆくでしょう。 私たちは国際航業さんのようなパートナーと協力してEVと太陽光の連携を進展させ、2024年をEV分野の事業開発を本格的に進めていく年にしたいと考えています」

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