2024年 5月 20日
カーボンニュートラル
電気自動車は車種や充電時間などによっても異なりますが、多くは1回の充電で200〜600km程度の走行が可能です。本記事では、電気自動車の走行距離の車種別一覧や、バッテリーと走行距離の関係などについて解説します。
電気自動車について政府は「2035年までに、新車販売で電動車100%を実現する」と発表しています※。 しかし電気自動車は走行距離が短く充電にも時間がかかるなど、業務活用には不安な要素もあり、購入するかどうか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
メーカーも電気自動車の開発は積極的に進めており、走行距離は200〜600km程度まで幅広く、車種も増えてきています。都道府県をまたぐ移動がある、遠方の訪問先が多いなど、車の利用頻度や普段の走行距離に合わせて、丁度良い走行距離の車種を選ぶことが大切です。
本記事では、電気自動車の走行距離(航続距離)を、バッテリー容量や費用なども含めた車種別でご紹介します。走行距離に関わるバッテリーの劣化や、消耗しやすい要素、バッテリー交換などについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
※参考:経済産業省「5 自動車・蓄電池産業」(電動車の定義は純内燃機関車を除くEV・PHV・FCV・EVを指す)
5 自動車・蓄電池産業 (PDF)
電気自動車は走行距離が短く、頻繁な充電を必要とするイメージを持っている人もいるでしょう。電気自動車の走行距離は、短くて200km、長くて400〜600km程度が多くなっています。
200kmは、大体東京から静岡県や長野県まで行ける距離です。 600kmは、大体東京から兵庫県や秋田県までの距離間で、十分な距離を移動できます。 ガソリン車と比較しても遜色ない走行距離です。
電気自動車とガソリン車には、どのような違いがあるのか、以下の視点でご紹介します。
電気自動車の走行距離は、前述したとおり短くて200km、長くて600km程度です。一方で、ガソリン車は500km以上が一般的で、長くて1,500km走る車もあります。電気自動車もガソリン車も、車種によって違いが出るものの、平均的にはガソリン車の方が長く走れる傾向にあります。
電気自動車の電気代とガソリン車の燃料費を比較しましょう。バッテリー容量によりますが、事務所に設置する普通充電器で充電する場合、1回あたり数百円〜2,000円程度で充電が完了することが一般的です。
公共の充電スポットを利用する場合、月額基本料金を支払いながら、充電するたびに使用量(使用時間)分を支払うタイプが多いです。ディーラーで加入できるサービスだと、月額基本料金にプラスして、普通充電は1分あたり数円、急速充電は1分あたり数十円程度が必要となります。
一方でガソリン車の場合は特別な月額費用もなく、原油価格の状況にもよりますが基本的には1Lあたり150円程度でガソリン補充ができます。例えば、100km走行した場合の費用は電気自動車が300円程度、ガソリン車が800円程度かかるとされており、電気自動車の方がコストを抑えられるでしょう。事務所・自宅での充電や、電気代が安い深夜の充電だと、よりコスト削減につながります。
車両価格は、メーカーや車体によって異なりますが、ガソリン車の軽自動車であれば100万円台で購入可能です。一方で、電気自動車は安くても250万円程度となるため、初期費用は高いと感じるでしょう。
ただし、電気自動車の場合「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象となるため、最大85万円(条件付き)の支給を受けられます※。時期や執行予算によっては補助金を受けられない可能性もあるため、補助金が適応されるかディーラーで確認するのがおすすめです。補助金制度を活用して購入すると、初期費用を抑えられるでしょう。
通常、ガソリン車を購入すると次の税金がかかります。
電気自動車であれば、上記の税金のうち自動車税、自動車重量税、自動車税環境性能割が減税、免税されます。例えば、電気自動車は排気量という概念がないため、自動車税の適用額が低い区分になります。自動車を所持する際に税金はつきものですが、電気自動車であれば、維持費を抑えられるでしょう。
電気自動車は、消耗品にかかる費用を抑えられます。
ガソリン車を維持するには、ブレーキパッドやエンジンオイル、オイル周辺の消耗品の定期的な交換が必要です。走行距離や車の状態を適宜点検しながら、タイミングを見て交換をする必要があり、都度交換費用がかかります。
一方で電気自動車であれば、エンジンオイルを使用していないため、その分の交換費用はかかりません。 ブレーキパッドの利用も減るため、交換頻度が少なくなります。ガソリン車のように、消耗品に関わる頻繁な出費はなくなるでしょう。ただし電気自動車でも使用を重ねる中でバッテリーの劣化や不具合が発生する可能性もあるため、状態に応じて交換が必要となるケースも存在します。
環境性能はガソリン車よりも電気自動車の方が高い場合が多く、環境保全に貢献できるでしょう。ガソリン車の場合は、CO2(二酸化炭素)以外にもCO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)などが含まれる排気ガスを排出するため、地球温暖化に悪影響をもたらすとされています。
一方で、電気自動車は電気を燃料としているため、排気ガスが排出されません。現状は発電時に化石燃料も多く利用していますが、それでもトータルで見る環境負荷はガソリン車よりも優れます。政府としても「乗用車は、2035年までに、新車販売で電動車100%を実現。」と発表し、電気自動車の導入を推進しています※。
※参考:経済産業省「5 自動車・蓄電池産業」
5 自動車・蓄電池産業 (PDF)
国産電気自動車と輸入電気自動車の主な違いは、車体の大きさやデザイン、価格などがあります。日本の電気自動車では軽自動車やコンパクトな普通車が多く販売されていますが、輸入車の電気自動車ではスポーツカーやSUVなどの車も多く販売されています。
ガソリン車と同じで、BMWやメルセデス・ベンツなどのメーカーは高額な電気自動車も多いですが、韓国のヒョンデなどは、国産電気自動車とも近い価格帯となっています。
電気自動車の走行距離は200〜600kmが一般的だとご紹介しましたが、実際に販売されている電気自動車の走行距離はどれくらいでしょうか。ここからは国産電気自動車と輸入電気自動車に分けて、走行距離や価格などについてご紹介します。
主な国産電気自動車の走行距離一覧は、次のとおりです※。
車種 | 走行距離 | バッテリー容量 | 販売価格(税込) |
---|---|---|---|
スバル「ソルテラ」 | 487〜567km | 71.4kWh | 627万円~ |
トヨタ「bZ4X」 | 540~567km | 71.4kWh | 550万円〜 |
日産「サクラ」 | 180km | 20kWh | 254.8万円~ |
日産「リーフ」 | 281~550km | 40kWh・60kWh | 408.1万円〜 |
日産 「アリア」 | 470km | 66kWh | 539万円〜 |
ホンダ「ホンダe」 | 259~274km | 35.5kWh | 495万円〜 |
マツダ「MX-30 EV MODEL」 | 256km | 35.5kWh | 451万円〜 |
三菱「eKクロスEV」 | 180km | 20kWh | 254.6万円~ |
レクサス「RZ」 | 494~599km | 71.4kWh〜 | 820万円〜 |
レクサス「UX300e」 | 512km | 72.8kWh | 650万円〜 |
なお、ホンダ「ホンダe」は2024年1月に生産終了 しており売り切れ次第、販売終了となります。またトヨタ「bZ4X」はリース販売が中心でしたが、スバル「ソルテラ」と共に一般販売も開始しています。日本の電気自動車は軽自動車もあるため、法人車としての活用目的に合わせた車種を選べるでしょう。
※参考:株式会社スバル「SOLTERRA SPECIFICATIONS」
SOLTERRA SPECIFICATIONS (PDF)
※参考:株式会社スバル「見積もりシミュレーション」
見積もりシミュレーション
※参考:トヨタ自動車株式会社「トヨタ bZ4X 主要諸元表」
トヨタ bZ4X 主要諸元表 (PDF)
※参考:トヨタ自動車株式会社「bZ4X」
bZ4X
※参考:日産自動車株式会社「日産サクラ主要装備一覧」p. 2
日産サクラ主要装備一覧 (PDF)
※参考:日産自動車株式会社「日産:サクラ [ SAKURA ] 軽自動車|価格・グレード」
日産:サクラ [ SAKURA ] 軽自動車|価格・グレード
※参考:日産自動車株式会社「日産リーフ主要装備一覧」p. 2
日産リーフ主要装備一覧 (PDF)
※参考:日産自動車株式会社「日産:リーフ [ LEAF ] | 価格・グレード」
日産:リーフ [ LEAF ] | 価格・グレード
※参考:日産自動車株式会社「日産:日産アリア [ ARIYA ] SUV|価格・グレード」
日産:日産アリア [ ARIYA ] SUV|価格・グレード
※参考:本田技研工業株式会社「Honda e」
Honda e
※参考:本田技研工業株式会社「Honda e 主要諸元」
Honda e 主要諸元 (PDF)
※参考:マツダ株式会社「MAZDA MX-30」
MAZDA MX-30
※参考:マツダ株式会社「マツダ、初の量産電気自動車「MAZDA MX-30 EV MODEL」を発売」
マツダ、初の量産電気自動車「MAZDA MX-30 EV MODEL」を発売
※参考:三菱自動車工業株式会社「eKクロス EV|主要諸元|スペック|三菱自動車」
eKクロス EV|主要諸元|スペック|三菱自動車
※参考:レクサス「LEXUS RZ|価格・パッケージ比較」
LEXUS RZ|価格・パッケージ比較
※参考:レクサス「主要諸元表」p. 1
主要諸元表 (PDF)
※参考:レクサス「UX300e」p. 58~59
UX300e (PDF)
主な輸入電気自動車の走行距離一覧は、次のとおりです※。
車種 | 走行距離 | バッテリー容量 | 販売価格(税込) |
---|---|---|---|
シトロエン「Ë-C4 ELECTRIC」 | 405〜459km | 50kWh | 424.9万円〜 |
テスラ「モデル3」 | 573km | 非公表 | 561.3万円〜 |
テスラ「モデルY」 | 605km | 非公表 | 563.7万円〜 |
BMW「iX3」 | 508km | 80kWh | 922万円〜 |
ヒョンデ「IONIQ 5」 | 498~618km | 58~72.6kWh | 479万円〜 |
フォルクスワーゲン「ID.4」 | 435〜618km | 52kWh・77kWh | 514.2万円〜 |
プジョー「SUV e-2008」 | 380〜457km | 50kWh | 576.4万円〜 |
プジョー「e-208」 | 395km | 50kWh | 469.4万円〜 |
ボルボ「C40 Recharge」 | 590km | 73kWh | 699万円〜 |
ボルボ「XC40 Recharge」 | 590km | 73kWh | 679万円〜 |
メルセデス・ベンツ「EQB」 | 468〜520km | 66.5kWh | 822万円〜 |
メルセデス・ベンツ「EQA」 | 555km | 66.5kWh | 782万円〜 |
輸入車の電気自動車は、走行距離が400km以上のモデルが多く、長距離移動が多い場合にも向いています。価格帯も幅広く、高級車と呼ばれるブランドから、新規参入ブランドまでさまざまであるため、法人車の運用方法に合わせて選べるでしょう。
※参考:シトロエン「CITROËN C4 & Ë-C4 ELECTRIC スペシャルサイト | シトロエン公式サイト」
CITROËN C4 & Ë-C4 ELECTRIC スペシャルサイト | シトロエン公式サイト
※参考:シトロエン「Equipment」 p. 2
Equipment (PDF)
※参考:テスラ ジャパン「Model 3をお好みのデザインに | テスラ ジャパン」
Model 3をお好みのデザインに | テスラ ジャパン
※参考:BMW「BMW iX3 (G08) : モデル、主要諸元および価格」
BMW iX3 (G08) : モデル、主要諸元および価格
※参考:ヒョンデ「IONIQ 5|仕様」
IONIQ 5|仕様
※参考:フォルクスワーゲン「ID.4」
ID.4
※参考:フォルクスワーゲン「バッテリー/航続距離」
バッテリー/航続距離
※参考:プジョー「PEUGEOT 2008/e-2008」
PEUGEOT 2008/e-2008
※参考:プジョー「PEUGEOT 208/e-208」
PEUGEOT 208/e-208
※参考:ボルボ・カー・ジャパン「C40 Recharge Pure Electric - オーバービュー」
C40 Recharge Pure Electric - オーバービュー
※参考:ボルボ・カー・ジャパン
ボルボ・カー・ジャパン
※参考:メルセデス・ベンツ日本株式会社「EQB」
EQB
※参考:メルセデス・ベンツ日本株式会社「EQA」
EQA
電気自動車の走行距離は、200kmから600km程度まで幅広く設定されています。企業で電気自動車を導入する場合は利用スタイルに合わせて、不自由なく利用できる電気自動車を選ぶとよいでしょう。訪問先が片道1時間以内で近い場合や、車移動が少ない場合は200km程度、長距離移動が多い場合は400km以上の走行距離の車の検討がおすすめです。
法人で訪問先が近い場合や、1回あたりの走行距離が20〜30kmの場合は、走行距離が200km程度の電気自動車で問題ないでしょう。最寄りの訪問先を1日に複数回る場合は、1日の利用距離を計算しておくのがおすすめです。 多くは1日走り終えたら会社に設置した充電器に繋げておくと、次の日までに充電が完了するような利用イメージになるはずなので営業時間には問題なく利用できるでしょう。
法人で長距離移動が多い場合は、400km以上がおすすめです。どの車種にも記載があるWLTCモードでの走行距離は、市街地、高速道路、郊外の平均的な使用時間分配で構成された測定方法で算出されています。 信号や渋滞の影響による平均速度や坂道の有無などによって、走行距離は変動するため、実際の利用距離よりも多めの走行距離の自動車を選ぶとよいでしょう。
例えば、片道150km程度であれば、走行距離400kmでも往復できると想定されますが、渋滞や坂道が多いなど道の状況によっては、帰り道での充電対応が必要な場面がでてくるかもしれません。
電気自動車の走行距離は、WLTCモードで記載されており、市街地、高速道路、郊外での運転で平均的な使用時間から算出されています。ただし前述したとおり、走行距離が300kmと記載があっても、他の要素が関わって走行距離が短くなる場合があるため、注意が必要です。電気自動車の走行距離に影響が多いと言われる3要素は、次のとおりです。
それぞれの要素と走行距離の関係を知っておくと、より電力消費率の良い走りにつながるでしょう。
電気自動車に搭載するバッテリーは、メーカーや車種によって異なりますが、一般的に8年の利用または16万kmが保証されています。ガソリン車のメーカー保証が5年または10万kmほど、寿命は13年または15万km程度といわれているため、ガソリン車と同等の期間は問題無く乗れるでしょう。
放電回数や急速充電の回数が多かったり、充電がまったくない状態で放置したりと、扱い方によってもバッテリーの寿命は変わります。ただしバッテリーの劣化で走行距離が減っても、もともと走行距離が長い電気自動車であれば問題無く利用できるでしょう。
電気自動車は、真冬や真夏などの冷暖房の使用が多い季節は、電力消費率が悪くなります。ガソリン車はエンジンの熱を暖房に利用する仕組みのため、暖房による燃費の悪化は殆どありませんが、電気自動車は暖房も直接電気を利用しなければなりません。
冷暖房を利用すると電力消費がかさみ、走行距離も短くなってしまいます。窓ガラスが曇ったときに使用する除湿暖房(デフロスター)も運転には欠かせない機能ですが、消費電力が大きいため走行距離も短くなります。冷暖房を切って消費電力を節約すると、冷暖房をつけているときよりも走行距離が長くなるでしょう。
上り坂は、ガソリン車の燃費が悪くなるのと同様に、電気自動車でも電力消費率が悪くなるため走行距離が短くなります。一方で、下り坂は運動エネルギー回生システムが働くため、充電を回復させることができます。
回生システムでのバッテリー回復量は車種によって異なりますが、運動エネルギーを電気へ変換できるため、下るほど走行距離は伸びます。ただし上り坂で消費した電力を下り坂で全て回収することはできないので、ガソリン車同様に坂が多くなればなるほど電力消費率は悪くなります。
電気自動車のバッテリー劣化は、メーカーの保証期間と利用状況を照らし合わせたり、充電時の変化からある程度確認できたりします。詳細について解説していきます。
電気自動車のバッテリーの劣化は、メーカーの保証期間を目安にどれくらい利用したかを確認すると、大体の劣化具合が分かるとされます。 例えば、スバル「ソルテラ」の場合は新車登録から8年、もしくは16万km走行するまで、バッテリー容量が保証されています。 もし自身が乗っている車が登録から5年で10万km走行したのであればまだ保証期間内のため、使用上問題ないといえるでしょう。
8年または16万kmの保証期間を設定しているメーカーや車種を一部ご紹介します※。
その他、メルセデス・ベンツ「EQS」で10年または25万km の保証があるな ど、車種やメーカーによって保証期間は異なります。
※参考:株式会社スバル「ソルテラの駆動用バッテリーの保証期間を教えてください。」
ソルテラの駆動用バッテリーの保証期間を教えてください。
※参考:日産自動車株式会社「航続距離・バッテリー」
航続距離・バッテリー
※参考:マツダ株式会社「駆動用バッテリーの容量保証期間を教えてください。(MX-30 EV MODEL)」
駆動用バッテリーの容量保証期間を教えてください。(MX-30 EV MODEL)
※参考:テスラ「車両保証」
車両保証
※参考:メルセデス・ベンツ「EQケア」
EQケア
電気自動車購入時に比べて、急速充電に時間がかかるようになった場合、劣化が進んでいる可能性が考えられます。例えば、スバル「ソルテラ」は、急速充電器(50kW出力)で40分程度充電すると、80%程度まで充電可能です※。もしバッテリーが劣化していると、同じ40分の充電時間でも50%までしか充電できないケースが生じます。ただし、バッテリーが劣化しても充電すれば問題なく走行できる上に、急に劣化するわけではないため、あくまでも目安として知っておくのがおすすめです。
※参考:株式会社スバル「航続距離・バッテリー」“短時間で一気に充電できる”
「航続距離・バッテリー」“短時間で一気に充電できる”
セグメントとは、バッテリーの劣化具合が分かる指標で、メーター部分に表示されています。新品の電気自動車が12セグメントなのに対し、11、10と目盛りが欠けていくと、満充電時でも容量が減っていると判断できます。セグメントが次第に減っていくことを「セグ欠け」とも呼び、大体の劣化具合を視覚的に確認可能です。
バッテリーのメーカー保証期間内にも「8セグメントになったら、修理で9セグメント以上に復帰する」といった、セグメント指標の記載があるため、確認しておくとよいでしょう。
電気自動車のバッテリーは、時間の経過や充電の仕方などの影響を受け、次第に劣化していきます。バッテリーが劣化した際の対処法には、主に次の2つが挙げられます。
対処法を把握しておき、バッテリー劣化時期に備えておきましょう。
電気自動車のバッテリーが劣化したタイミングが、メーカーの保証期間内であれば、新しいバッテリーに交換できます。例えば、日産「サクラ」の場合、保証期間は新車登録から8年間、または16万kmまでのどちらか早い方と定めており、該当する場合はメーカーへ相談可能です※。
サクラの場合は、リチウムイオンバッテリーの容量が8セグメントになった車を、9セグメント以上に修理してもらえます。セグメントとは前述のとおり、バッテリーの劣化を表すサインで、新車登録時はセグメントが最大の状態です。
一方で、メーカーの保証期間に該当しない場合のバッテリー交換は、高額になりがちです。バッテリー交換するよりも乗り換えた方がコストパフォーマンスに優れる可能性もあります。ガソリン車でも乗り換えのタイミングがあるように、電気自動車にも寿命があります。新しいバッテリー交換をしても、車の寿命はいずれ訪れるため、定期的に乗り換えることも検討しましょう。
※参考:日産自動車株式会社「航続距離・バッテリー」
航続距離・バッテリー
バッテリーが劣化したら、より快適な車を見つけて乗り換えるのがおすすめです。前述したとおり、メーカーの保証期間外のバッテリー交換は、費用が高額になるため、法人車としての維持費もかさんでしまいます。自家用車で愛着がある場合は、バッテリー交換を検討する選択肢があるものの、法人車として業務で車を利用するのであれば、長く乗れる車を購入する方が無駄なコストを削減できます。購入や廃棄に手間はかかりますが、長期的に考えれば次の車の購入を検討する方が経済的といえるでしょう。
ここからは電気自動車の走行距離について、よくある質問とその回答をご紹介します。
電気自動車の1回の充電時間は、普通充電か急速充電によって異なります。
自宅や事務所などに設置する普通充電器では、約8時間の充電時間がかかるため、日中帯に使って夜に充電するのが一般的です。時間の目安は車種によっても異なるため、次の計算式で算出するとよいでしょう。普通充電器の出力は、約3〜6kWです。
例えば、バッテリーの容量が20kWhの電気自動車を、出力6kWで充電する場合、3時間20分程度かかります。計算式は下記のとおりです。
車種によって異なるため、計算式に当てはめて算出してみましょう。
出先の道の駅やサービスエリアなどは、急速充電器が設置されています。急速充電は、出力数が20〜150kWのため、普通充電よりも短い時間で多くの充電が可能です。1回あたり30分までと、時間制限がある急速充電スポットが多いです。長距離の移動では複数の急速充電スポットを把握しておくと走行中にバッテリー残量が不足するリスクを低減できるでしょう。
バッテリーの容量が20kWhの電気自動車を、出力20kWで急速充電する際の充電時間は、次の計算式で算出できます。
普通充電で3時間20分かかった車でも、急速充電なら1時間で済みます。午前に営業先を訪問し、お昼休みに充電して午後から次の訪問先に行くことも可能です。ただし、急速充電はバッテリーへ負荷をかけてしまい、バッテリーの劣化を早めてしまう可能性もあるので注意しましょう。
ガソリン車は燃料がなくなることをガス欠と呼びますが、電気自動車は電欠と呼びます。万が一、走行中に電欠しそうになったら、次の対処をしましょう。
万が一に備えて、それぞれの対処法について詳しく知っておきましょう。
電欠のサインが表れたら、安全な場所を探して早めに停止しましょう。一般道の場合は近隣の駐車場、高速道路の場合は近くのサービスエリアやパーキングエリアが望ましいです。路側帯での停止は、追突事故の元になるため、なるべく避けましょう。
安全な場所に停止したら、近くの充電スポットを探し、走行できる場合は運転を再開します。走行が難しい場合は、次に解説するロードサービスの依頼を行いましょう。
ロードサービスは、会社が契約している自動車保険会社やJAFなどに電話で依頼します。最寄りの充電スポットまでレッカーで運んでもらったり、給電設備搭載の車から電気を供給してもらえたりと、電欠にも対応してもらうことが可能です。社用車の場合、車が加入している保険内容を確認しておき、万が一の場合にも備えておくとよいでしょう。
なお、JAFの利用理由は「EVの駆動用電池切れ(電欠)」が全体の10%程を締めています※。 走行距離が長くても、乗り方によって電欠は起こり得るものです。今後、電気自動車を利用する方が増加するにつれ、電欠によるJAF利用も増えていくと予想されています。
※参考:JAF「JAFロードサービス、電欠はEVトラブルの10%! EV充電サービス、試験運用開始!」
JAFロードサービス、電欠はEVトラブルの10%! EV充電サービス、試験運用開始!
電気自動車で長距離移動をする際には、充電するスポットをあらかじめ確認しておくと安心です。事前に調べておくと、走行距離に合わせて丁度良いタイミングで充電できます。充電スポットは他の人が利用している可能性もあるため、3つ程度は候補を挙げておくとよいでしょう。
北海道や青森など雪が降る寒冷地でも、電気自動車はガソリン車に負けない走行性能を有しているとされています。雪道で急ブレーキを踏むと、スリップ事故につながる恐れがありますが、電気自動車ではアクセルを離した時の減速レベルを調整できる車種もあります(ガソリン車のエンジンブレーキを利用するのと同様のイメージ)。ブレーキをかけずに車速を調整できるため、雪道での事故のリスクを減らすことが可能です。
またガソリン車だとエンジンが温まるまで暖房が効かず、冷たい風が出てきてしまいますが、電気自動車の場合はすぐに暖房が効き始めます。短い距離の移動であっても、暖かい車内で過ごせるため、お客さまを乗せて移動する社用車にもおすすめです。
ただし、前述したとおり、暖房をつけると消費電力が大きくなるため、早めの充電が必要になります。走行距離を確認し、充電スポットの計画を立てて運転するようにしましょう。
電気自動車と一口にいっても、短距離の移動を主とした車種や、長距離の移動に向いている車種などさまざまなものが発売されています。普段の利用状況に合わせて、適切な電気自動車を選ぶのがおすすめです。
また今後、バッテリー性能が向上し、さらに長距離を走れる電気自動車が普及する可能性もあります。低コストのリチウムイオン電池などの研究開発が進み、低価格車種の普及が進めば、電気自動車はさらに身近な存在になっていくかもしれません。