2024年 4月 15日
カーボンニュートラル
化石燃料とは、石炭・石油・天然ガスなどの燃料資源のことです。化石燃料にはコストパフォーマンスが高い、用途が幅広い、貯蔵・輸送が容易などのメリットがある一方で、資源の枯渇、環境問題、価格変動などのデメリットもあります。世界各国が化石燃料の問題に取り組んでおり、企業や人の意識改革が求められています。
化石燃料とは、動植物の化石から発生した石炭・石油・天然ガスなどの燃料資源のことです。身近な資源の一つで、私たちの生活の至るところで活用されています。
化石燃料のメリットは、少ないコストで多くのエネルギーを作れること、運搬や貯蔵を容易に行えることなどです。一方で、燃料の枯渇や地球温暖化ガスの排出など、いくつかの問題点やリスクも抱えています。
これらの問題は地球環境に大きな影響をもたらすことから、近年は化石燃料からの脱却や他の資源への転換を求める動きが世界中で高まっています。日本も例外ではありません。企業や国民一人ひとりに向けて、化石燃料に頼らない事業活動や生活が要求されています。
本記事では化石燃料の基礎知識や、化石燃料を利用するメリットとデメリット、化石燃料に頼らないために心掛けたいポイントについて解説します。
化石燃料とは、動植物の化石から発生した燃料資源のことです。
数百万年以上前に存在していた動物、植物、プランクトンなどの死骸は、海底で微生物によって分解された後、土や海水によって強い圧を掛けられたり、地熱で温められたりします。こうして燃焼しやすい物質に変化したのが化石燃料で、代表的なものには石炭・石油・天然ガスなどがあります。それぞれの概要は以下の通りです。
最近では、有機物を多量に含むオイルシェールという堆積岩から科学的に生成したシェールオイルや、シェール層から採取される天然ガスのシェールガス、メタンガスが水分子と結び付いてできるメタンハイドレートなどの利用も広がっています。
化石燃料は家庭から工場まで、幅広いシーンで活用されています。代表的な使い道は以下の通りです。
化学燃料 | 使用用途の例 |
---|---|
石炭 | 発電所の燃料、ガス製品の生産、製鉄の材料など |
石炭 | 自動車のガソリン、軽油、航空機の燃料、ゴム製品、プラスチック製品、ポリエステルなどの化学繊維の原料など |
天然ガス | 発電所や工場の燃料、都市ガスなど |
シェールオイルやシェールガス、メタンハイドレートはそれぞれ石油や天然ガスの代替燃料として活用が検討されています。
化石燃料を使用するメリットは大きく分けて4つあります。詳細をご紹介します。
燃料のコストパフォーマンスが高いか否かは、エネルギー密度によって判断されます。エネルギー密度とは、体積や重量あたりのエネルギー量のことです。エネルギー量が多く密度が高ければ高いほど、コストパフォーマンスの高い燃料とみなされます。
化石燃料はエネルギー密度が他の燃料より高く、少ない量でより多くのエネルギーを生み出すことが可能です。使用する燃料の量とコストは一般的に比例関係にあるため、化石燃料はコストパフォーマンスの高い燃料として重宝されています。
前述の通り、化石燃料は自動車や航空機の燃料、家庭の都市ガス、ゴムやプラスチック、化学繊維の材料など、幅広い用途に活用されています。産業用から家庭用まで、多彩なシーンに利用できるオールマイティな燃料であることも化石燃料のメリットです。
大容量の火力発電所を建設するには所定の条件を満たす必要がありますが、条件の数や内容は使用する燃料によって異なります。
化石燃料を使用する火力発電所の場合、他の燃料に比べて立地条件の制限が少なく、建設へのハードルが低い傾向にあります。需要やニーズの高い場所に大容量発電所を建設しやすいため、安定したエネルギーの供給が可能です。
日本のエネルギー自給率は2020年度で11.3%と 低く、ほとんどのエネルギーを諸外国から輸入しています※。化石燃料は貯蔵・輸送方法が確立されているため、エネルギーの確保を海外からの輸入に頼っている日本にとって扱いやすい燃料とされています。
※参考:経済産業省資源エネルギー庁『日本のエネルギー 2022年度版「エネルギーの今を知る10の質問」』
日本のエネルギー 2022年度版「エネルギーの今を知る10の質問」
化石燃料には多くのメリットがある一方で、デメリットやリスクも指摘されています。詳細について、見ていきましょう。
前述した通り、化石燃料は数百万年前の動植物などの死骸を元にして生まれたものです。これら化石燃料ができるまでには長い年月が必要ですが、日々の生活で大量のエネルギーを利用している現代においては供給が需要に追いついていません。
例えば、2020年末時点の世界の石油確認埋蔵量は1兆7,324億バレルで、このままだと2073年頃には枯渇する可能性があるといわれています。天然ガスの世界で確認された埋蔵量は2020年末で約188.1兆立方メートルで、2069年頃には枯渇の危険性があるとされています。石炭の確認埋蔵量は10,741億トンです。石油や天然ガスに比べるとやや余裕があるものの、2159年頃には枯渇する可能性があります(※1)。
各種化石燃料の枯渇が懸念される一方、発展途上国を中心に化石燃料の使用量は増加傾向にあり、2040年における世界のエネルギー需要量は2014年の約1.3倍 にまで増加すると推測されています(※2)。
場合によっては化石燃料が枯渇するまでの年数が短くなる可能性もあることから、早急なエネルギー資源の安定的な確保が求められています。
※1参考:経済産業省資源エネルギー庁「第2節 一次エネルギーの動向」
第2節 一次エネルギーの動向
※2参考:関西電力「世界のエネルギー事情」
世界のエネルギー事情
化石燃料を使用すると、空気中の酸素と炭素が化学反応を起こし、二酸化炭素(CO2)が発生します。CO2は化石燃料を使用し続けると地球温暖化を促進する原因になるといわれている、温室効果ガスの一種です。地球温暖化が進むと、各地で気候変動が発生したり海の水が増えて陸地が減少したりする可能性があり、環境に大きな影響をもたらすことが懸念されています。
また化石燃料を燃やしたときに発生する硫黄酸化物や窒素酸化物は、酸性雨の原因物質にもなります。酸性雨は森林破壊や土壌・湖沼の汚染、それに伴う生態系への悪影響を及ぼす恐れがあるでしょう。建材にもダメージを与える原因になることから、文化財への被害も問題視されています。
化石燃料の価格は、世界情勢によって大きく変動します。前述の通り、日本は化石燃料の大半を諸外国からの輸入に頼っているため、何らかの理由で燃料の価格が高騰した場合、輸入コストも大幅にかさんでしまいます。光熱費やガソリン代などの価格が急騰すると、人々の家計や生活に大きな支障をきたす原因にもなるでしょう。
化石燃料使用のデメリットやリスクは、世界規模の問題・課題となっています。2023年11~12月に掛けて開催された第28回国連気候変動枠組条約締約国会議では、今後約10年間で化石燃料から転換することなどを盛り込んだ成果文書が採択されました※。
化石燃料からの脱却を目指すには、再生可能エネルギーなど化石燃料に代わる新たなエネルギーの安定的な確保・供給が必要になるのはもちろん、企業や家庭における化石燃料の使用量削減が必須となります。
※参考:外務省「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)結果概要」
国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)結果概要
化石燃料は私たちの生活に必要不可欠な燃料ですが、資源の枯渇や地球温暖化の促進などさまざまなデメリットやリスクをはらんでいます。さらに日本は化石燃料の大半を海外からの輸入に頼っている関係上、価格変動の影響も受けやすいところがネックです。今後は再生可能エネルギーの活用やエネルギーの使い方の見直しに取り組み、化石燃料からの脱却を目指す必要があります。