2024年 4月 8日
カーボンニュートラル
電気自動車(EV)とは、バッテリーに蓄えた電気でモーターを動かし走行する車です。走行時にCO2を排出せず、化石燃料に依存しないことから世界中で導入の動きが進んでいます。本記事では、電気自動車とは何か、現在のEV市場の動向と合わせて解説します。
バッテリーに蓄えた電力でモーターを動かし、走行する車が電気自動車(EV)です。従来のガソリン車のように化石燃料のみに依存することなく、走行時にCO2が排出されないため、環境保全の観点から世界的に導入の動きが進んでいます。とはいえ、国や地域別の普及率には大きな違いがあり、2023年上半期時点で中国の普及率は約20.5%であるのに対し、日本は約2.4%です※。電気自動車の本体価格や充電設備の充実など、国によりEV市場をとりまく環境に大きな違いがあることが普及率の差となって表れています。
本記事では、電気自動車の概要や、メリット・デメリット、他のクリーンエネルギー自動車との違い、世界と日本のEV市場の動向などをご紹介します。
※出典:東京電力.「EV DAYS|EVのある暮らしを始めよう」“EVライフQ&A 日本のEV普及率は何%?”
EV DAYS編集長がズバッ!と回答 EVライフ Q&A - EV DAYS | EVのある暮らしを始めよう
電気自動車(EV=Electric Vehicle)とは、バッテリーに蓄えた電力を使いモーターを駆動させ走行する車のことです。従来のガソリン車と異なり、走行中にCO2が発生しない、音や振動が少ない、エネルギー効率が良く経済性に優れるなどさまざまなメリットがあります。ここからはガソリン車との違いや、電気自動車の仕組みについて詳しく解説します。
電気自動車とガソリン車の仕組みの違いは、動力源にあります。従来の自動車(ガソリン車)は燃料のガソリンを燃料タンクに蓄え、エンジン内部でガソリンと空気の混合ガスを作り爆発させ、その動力をタイヤに伝えることで車を動かしています。燃えた後の混合ガスは排気ガスとしてエンジンの外に押し出される仕組みです。排気ガスにはCO2や炭化水素、窒素酸化物、一酸化炭素などが含まれるので、環境汚染や人体への有害性が指摘されてきました。
一方で電気自動車とは、ガソリンではなく電気で動く自動車のことです。ガソリン車のようにガスの燃焼を利用するのではなく、電気の力でモーターを動かし走行するため、排気ガスが生じず走行時はCO2も発生しません。またエンジンがないため、振動も少なく走行がスムーズな点も特徴です。さらに効率的にエネルギーを使用でき、同じ走行距離であればガソリン代よりも電気代の方が安く済むケースが多いでしょう。
電気自動車の充電方法には、主に自宅の設備か充電スポットを使った2つがあります。ガソリンスタンドで燃料を入れるガソリン車とは異なり、自宅でも充電スポットでもどちらでも充電が可能です。 自宅での充電では普通充電器を使う方法が一般的で、別途、EV専用のEV・PHEV充電用コンセントを用意します。また200Vのコンセントの場合、フル充電には約7.5 ~12時間 程度時間がかかるでしょう※1。 一方、充電スポットでは急速充電器を使うことが多く、高出力のため40分~90分程度で80%程度の充電が可能です。(急速充電はバッテリーへの不可軽減のため80%までで止まります。)
出典:日産自動車「電気自動車の急速充電にかかる時間はどれくらいか教えて。」
電気自動車の急速充電にかかる時間はどれくらいか教えて。 | 日産:FAQ/お問い合わせ
電気自動車は人にも環境にも優しい車です。さらに移動コストを抑えられる、税制上の優遇が受けられるなど金銭面でのメリットもあります。ここからは以下に挙げる7つのメリットについて見ていきましょう。
電気自動車は、CO2の排出量を減らせます。電気自動車は電気を動力とする構造から、走行時にCO2を排出することがありません。車両やバッテリーの製造、廃車・リサイクルの過程ではCO2を排出するとはいえ、これらの工程を含めてもガソリン車と比べると環境負荷が少ない点がメリットです。また電気自動車で利用する電気についても太陽光や風力などの再生可能エネルギーを選択すれば、より環境へ配慮できます。
電気自動車はモーターにより車を動かすため、エンジン音が出ずに騒音を防ぐことが可能です。自動車の騒音以外にも、事業活動や生活に伴う騒音はありますが、一定基準を超えた騒音は周囲の人々の健康や生活環境を脅かす恐れがあります。道路沿いの住宅では24時間、エンジン音や風切り音などに悩まされることも少なくありません。その点、電気自動車であれば無音に近い、モーター音のみとなるので、深夜や早朝に走ったとしても迷惑にならないでしょう。
電気自動車には、振動が少なく乗り心地が良いというメリットがあります。電気自動車は電気が供給されなければ作動しないため、アイドリングのように停車時に振動や騒音が生じません。 また発車時も燃焼などの工程が必要なく電気信号で素早く動作するのでスムーズに始動でき、操作性が高いです。アクセルペダルの踏み加減で、スピードのコントロールも容易です。
電気自動車は大きなバッテリーに電気を蓄えるため、そのまま蓄電池として利用できます。例えば、電気料金の低い夜間電力を契約しているなら、その分を蓄えて自動車を利用していない日中の家の電力として使ってもよいでしょう。また停電時や災害時は電気自動車から電力を供給すれば、数日程度 であれば利用できます。ただし電気自動車から家庭に電力を供給するときは、専用の設備が必要です。
電気自動車は、補助金や減税が適用される場合があります。新車で電気自動車を購入する際に条件を満たせば国や地方自治体の補助金を利用できるケースもあり、購入費用を抑えて電気自動車が導入することも可能です。さらにエコカー減税、グリーン化特例、環境性能割などの各種減税も適用されます。
電気自動車は、ランニングコストを抑えられます。環境省では、電気自動車とガソリン車の走行距離別の費用を以下のように試算しています※。
年間走行距離 | 5,000km | 10,000km |
---|---|---|
ガソリン車でかかる費用目安 | 59,350円 | 118,700円 |
電気自動車でかかる費用目安 | 17,900円 | 35,800円 |
ガソリン車と電気自動車で同じ距離を走ったときに、電気自動車の方が年間41,450~82,900円ほど安くなることが分かります。
※出典:環境省.「Let's ゼロドラ!!(ゼロカーボン・ドライブ)」.“EV等を購入された方の声!「あなたの購入要因はなんですか?」”
Let's ゼロドラ!!(ゼロカーボン・ドライブ)
電気自動車に乗っていれば、無料充電スポットや無料駐車場を利用できることがメリットの一つです。カーディラーや公共施設、ショッピングセンターの中には、電気自動車の無料充電スポットが備えられていることがあります。また一部の国立公園などでは、電気自動車だと駐車料金が無料になるケースもあります。
日本のEV市場はまだ発展途上にあるため、電気自動車も車種が少なく、公共機関の充電設備も十分に整っていないのが現状です。また環境により1回の充電で走行できる距離が変わる、バッテリーの寿命が短いなど、ガソリン車にはないデメリットもあるため注意しましょう。ここでは以下に挙げる主なデメリットについて解説します。
車種が少なく本体価格が高い点が、電気自動車のデメリットの一つです。トヨタ自動車や日産自動車などの国内メーカーの他、BMWやメルセデス などの海外メーカーの電気自動車も日本国内で購入できるものの、選べる車種はガソリン車と比べて少なく、本体価格も高額です。車種間の価格差も大きいため、適した車を選びづらいというデメリットもあります。
電気自動車を自宅で充電したいなら、充電設備の設置が必要不可欠です。充電設備の本体価格自体は数千円~1万円前後と手軽であるものの、ブレーカーの工事をする場合は10万円程度 の費用がかかります。また賃貸物件や集合住宅は、個人だけでは充電設備の設置可否の判断がつきません。この場合、近隣の充電スポットを探して利用するしかありません。
前述した通り、電気自動車は急速充電でも80%充電するまでに20~40分程度 の時間がかかります。さらに日本ではまだ充電スポットも充実していないため、連休中の高速道路などでは充電スポットに列ができる可能性もゼロではありません。充電と待ち時間を合わせると、目的地に到着するまでに想定以上に時間がかかってしまう場合があります。
フル充電をしていても、電気自動車は利用環境により走行できる距離が変わります。電気自動車は走行だけでなく、エアコンなどの機器も同じ電力で動かすため、ガソリン車に比べるとこれら機器利用の影響が大きいのが特徴です。逆に下り坂では回生によりエネルギーを回収することができるため、航続距離が伸びるといったこともあります。
電気自動車のバッテリーの保証期間は8年程度 といわれています。8年を超えても利用はできるものの、劣化により充電量が少なくなったり走行距離が短くなったりします。
走行時にCO2が全く出ない、または少ない自動車のことをクリーンエネルギー自動車といいます。電気自動車だけでなく、ハイブリッド自動車や燃料電池自動車などクリーンエネルギー自動車にはさまざまな種類があります。詳細を見ていきましょう。
ハイブリッド自動車(HV・HEV)とは、エンジンとモーターなど複数の動力で走る車のことです。日本国内のクリーンエネルギー自動車の中でも特に普及している種類で、低燃費と環境への優しさを実現しています。エンジンは直接駆動できるものから、専用発電機として回すタイプなどいくつか種類があります。
プラグインハイブリッド自動車(PHV・PHEV)とは、ハイブリッド自動車の中でも外部の充電口から充電できるタイプを指します。バッテリー容量が大きく燃費も良いため、ハイブリッド車以上に電気のみで長く走れる点が特徴です。
燃料電池自動車(FCV)とは水素と酸素の化学反応により得られたエネルギーを使い、モーターを駆動させて走る車です。走行しても水しか排出されず、一度の燃料補充で長距離を走れる点が特徴です。ただし、水素ステーションで水素の補給が欠かせません。
世界各国で電気自動車の普及に向けた動きが進んでいます。しかし電気自動車の普及状況には国や地域による差が大きく、特に日本では遅れが生じているのが現状です。ここからは世界と日本のEV市場の動向について解説します。
2023年上半期の世界各国のEV・PHEV普及率(新車販売台数に対するEVの割合)は以下となります※。
国・地域 | EV・PHEV普及率 |
---|---|
中国 | 約20.5% |
ヨーロッパ(EU・EFTA・英国) | 約14.2% |
アメリカ合衆国 | 約7.2% |
自動車市場が拡大している中国では、全体の2割以上を電気自動車が占めています。中国では電気自動車の価格自体が安いだけでなく、補助金の導入や国が販売者側に対する政策を積極的に行なっていることも、普及の大きな要因でしょう。
またヨーロッパではこれまで環境意識の高さからEV市場の成長が加速していました。アメリカでは税額控除など国を上げた政策がある他、それぞれの州により補助制度や優遇策に違いがあります。そのため地域によって普及率に大きな差があるのが現状です。
※出典:東京電力.「EV DAYS|EVのある暮らしを始めよう」.“EVライフQ&A 日本のEV普及率は何%?
EV DAYS編集長がズバッ!と回答 EVライフ Q&A - EV DAYS | EVのある暮らしを始めよう
本のEV普及率は世界的にみても低く、約2.4%に とどまっています※1。日本国内のEVの普及が進まない理由としては以下のポイントが挙げられます。
特に、ガソリン車と異なり1回の充電で走行できる距離が短い点が買い替え時に二の足を踏む要因とされています。そのため日本では、同じクリーンエネルギー自動車なら、電気自動車よりもハイブリッド車の方が人気です※2。
なお、2030年にはEV・PHEVシェア20〜30%にするという国のビジョンがあるため、今後、補助金の拡充や車種の拡大などによる普及が期待されています。
※1 出典:東京電力.「EV DAYS|EVのある暮らしを始めよう」.“EVライフQ&A 日本のEV普及率は何%?”
EV DAYS編集長がズバッ!と回答 EVライフ Q&A - EV DAYS | EVのある暮らしを始めよう
※2 参考:国土交通省.「EV/PHV普及の現状について」
EV/PHV普及の現状について (PDF)
バッテリーに蓄えた電気を動力源として走行する電気自動車は、走行時にCO2や一酸化炭素などを排出しないため、環境保護の観点からも世界で注目を集めています。
2024年時点ではガソリン車に比べて普及が進んでおらず、本体価格が高い、充電スポットが少ないなどデメリットもありますが、ランニングコストを抑えられたり蓄電池としても利用できたりと電気自動車ならではの魅力も豊富です。今後は性能の改善などにより、さらなる市場拡大が期待されています。