2024年 4月 15日
カーボンニュートラル
脱炭素もカーボンニュートラルも、どちらもCO2の削減を行うことに変わりはありません。しかし脱炭素がCO2の排出ゼロを意味する一方、カーボンニュートラルはCO2を含む温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を保つことを意味する点に違いがあります。
脱炭素もカーボンニュートラルも、どちらも最終的な目的は地球温暖化の防止であり、どう違うか分からない方も多いのではないでしょうか。厳密にはそれぞれの意味合いや目的には違いがあります。
脱炭素はCO2の排出をゼロにする取り組みですが、カーボンニュートラルはCO2を含む温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的にゼロにする取り組みです。
本記事では、脱炭素とカーボンニュートラルの違いや、世界で脱炭素が求められる理由、脱炭素に向けた日本の具体的な取り組みなどについて解説します。
脱炭素とカーボンニュートラルは、どちらも温室効果ガスの主要素であるCO2(二酸化炭素)に着目した取り組みです。同義語として扱われるケースもありますが、厳密には意味合いや目的が異なります。
脱炭素とは、「CO2の排出自体」をゼロにする取り組みのことです。一方で、カーボンニュートラルとは「CO2を含む温室効果ガス」の排出量と吸収量を均衡させ、差し引いたとき実質的にゼロにする取り組みのことを指します。ただし文脈によりニュアンスが異なるケースもあります。
脱炭素という言葉には厳密な定義はないものの、一般的には「CO2の排出をゼロにする」といった意味合いが大きいです。また実質的にCO2がゼロになった社会のことを「脱炭素社会」と呼びます。
カーボンニュートラルとは「CO2を含む温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体で差し引きゼロにする」ことです。カーボンニュートラルに基づけば、それぞれの企業にCO2排出量の枠を設定し、超過したときは排出量の少ない企業から余った枠を買い取って均衡を計るなど、柔軟な対応も可能となります。なお、カーボンニュートラルは気候変動問題の国際的な枠組みとして2015年に採択された「パリ協定」にのっとり、2050年までの達成を目標としています※。
※参考:環境省「カーボンニュートラルとは」
カーボンニュートラルとは
脱炭素もカーボンニュートラルも、最終的な目的は地球温暖化を進行させないことです。そのために脱炭素ではCO2の排出ゼロを目標とし、化石燃料の使用を止め、再生可能エネルギーに切り替えるなどを行っていきます。
一方でカーボンニュートラルでは、CO2を含む温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡が目標です。CO2の排出削減はもちろん、植樹活動によりCO2を吸収する土台を整えたりCO2のリサイクル技術を発展させたりする取り組みも行われます。
脱炭素に向けた取り組みが世界中で進んでいる理由には、大きく分けて以下の2つがあります。
それぞれについて詳しく解説します。
地球温暖化とは、温室効果ガスの影響により地球全体の平均気温が上昇している状態です。温室効果ガスにはCO2の他に、メタン、一酸化二窒素、代替フロンなどが該当します。中でもCO2は産業革命以降増加しており地球温暖化への影響が大きい気体です。
地球温暖化が進行すると、北極圏の海氷や高山の氷が溶け、海水面の上昇と陸地の減少が始まります。この影響により島が水没したり、動植物の生活に影響が出たりする可能性があるでしょう。さらに気候変動や伝染病の範囲拡大、農作物の減少などにより人命を脅かす事態にもつながっていきます。
環境を守り健全に経済を発展させるためにも、世界で脱炭素の取り組みが求められています。
化石燃料とは、石油や石炭、天然ガスなどのエネルギー資源のことです。安価で運搬性と貯蔵性に優れ、大量のエネルギーを取り出せることから、これまで世界経済を支えてきました。
また化石燃料は、長い時間をかけ植物やプランクトンなどが変化してできた、限りある資源です。人工的に化石燃料を生成する技術はまだ研究途上のため、このまま使い続ければ石油や天然ガスは約50年、石炭は約139年で枯渇するとされています※。
化石燃料に頼らず人々の生活や経済発展を維持するためにも、再生可能エネルギーの導入などによる脱炭素の推進が必要です。
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁「第2節 一次エネルギーの動向」
第2節 一次エネルギーの動向
日本では脱炭素の実現に向けて、国・地方自治体・企業が一丸となり進める必要があるとされています。ここからは脱炭素に向けた日本で検討・実施されている取り組み例をご紹介します。
日本では、CO2の排出量のうち約4割を電力部門が占めており、そのうちの大半を占めるのが化石燃料を使った火力発電所からの排出です※。
そのためエネルギーの低炭素化として、CO2の排出量がゼロの非化石エネルギーの導入拡大が求められています。具体的には再生可能エネルギーの拡大、原子力発電の運用、低炭素燃料への変換などです。
※参考:経済産業省 資源エネルギー庁「第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」
第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組
製造業では、金属を工業炉で加熱する際に多くのCO2が排出されているため、燃焼技術の確立や燃焼炉から電気炉への変換などによって脱炭素化が進められようとしています。現時点では研究開発の段階であるため、基金を用いた社会実装までのプロジェクトが進行中です。
運輸業では自動車の利用により、多くのCO2が排出されています。ガソリンやディーゼルを燃料とした自動車から、電気自動車(EV)への転換によってCO2の排出削減が可能です。
長時間充電が必要で導入コストが高額になるなどの課題はあるものの、大手物流・運輸業界ではEVトラックの導入も進んでいます。また導入にかかる費用については、環境省から補助金も出されています。
脱炭素に向けた取り組みでは、省エネルギーの実現が求められています。例えば、企業においてはエネルギー効率の高い設備の導入、エネルギー効率を高められる設備の技術開発などの取り組みが求められる他、国民一人ひとりにおいても電気製品の無駄な使用を控えるなどの心掛けが必要です。
地域脱炭素とは、脱炭素により地方創生や地域課題の解決を目指す取り組みのことです。各自治体では脱炭素の知見を持つ人材の育成や、再生可能エネルギー施設の拡大などの取り組みが求められています。また日本では、2030年までに地域脱炭素のモデルとなる地域を100カ所以上創出することが計画されており、民生部門の電力消費に伴うCO2の排出ゼロの実現が目指されています※。
※参考:環境省「地域脱炭素ロードマップ【概要】」
地域脱炭素ロードマップ【概要】(PDF)
現在、地球温暖化の防止や化石燃料の枯渇によって、世界規模で脱炭素が求められています。脱炭素とカーボンニュートラルは最終的な目標こそ同じものの、意味合いには若干の違いがあります。脱炭素とは、一般的にCO2の排出ゼロを目指す取り組みです。一方でカーボンニュートラルとは、CO2を含む温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を保つ取り組みを指します。
脱炭素に向けた取り組みとしては、省エネルギーを徹底する、再生可能エネルギーを利用するなど簡単にできることも多くあります。環境保全と経済発展を両立させるためにも、一人ひとりが脱炭素に向けて意識をしていくことが重要です。