2024年 4月 8日
カーボンニュートラル
車の燃費は「走行距離(km)÷給油量(L)」で求められます。燃費の基本を理解すれば燃料費の節約や、燃費の良い車を探す上でも役立ちます。なお、EVの場合は電力消費率と表記されるため注意しましょう。燃費計算の方法やガソリン車とEVの燃費の違いをご紹介します。
自動車が1Lの燃料で走行できる距離を表した数値を、燃費といいます。カタログに記載されている燃費と実際の燃費(実燃費)には誤差があるため、正確な数値を知りたいなら燃費計算で求めるのがおすすめです。燃費の基本が分かれば、ガソリン代の節約につながるだけでなく、他の自動車とも比較がしやすくなります。
なお、EV(電気自動車)では動力に電気を使うため、燃費ではなく電力消費率と表記します。ガソリン車とEVを比較した場合、一般的にはEVの方が燃料費(電気代)は安いため、走行にかかる燃料コストを抑えることが可能です。
本記事では、ガソリン車とEVの燃費計算の方法と燃費の比較、燃費・電力消費率をより良くする方法などについてご紹介します。
見た目や性能、価格など、自動車を選ぶ基準はさまざまにあるものの、使い続ける上で確認しておきたいのが燃費の良さです。そもそも燃費とは、1Lのガソリンで車が何km走行できるかを数値で表したもので、km/Lのように表します。なお、正式名称は燃料消費率です。
燃費は数値が大きいほどよく、20km/Lと60km/Lの車なら、60km/Lの車の方が少ないガソリンで長く走れます。燃費はカタログで調べたり、燃費計算アプリで計ったりする以外に、自分で計算することも可能です。これを燃費計算といいます。
自動車のカタログに掲載されている燃費と、実際に走行したときの燃費には誤差が生じるケースが多いです。カタログの燃費は国際基準にのっとった試験規格により算出された数値が掲載されています。一方、実際の走行時の燃費は実燃費といい、運転時の気候や道路状況、個人の運転のクセに大きく左右されます。そのため実燃費を知りたいときは、燃費計算により算出しなければなりません。
ここからは、燃費計算の方法を解説します。個人で簡単にでき、比較的精度の高い燃費の計算方法に満タン法があります。満タン法では、一度ガソリンを満タンまで入れ、次回給油時にもう一度満タンに入れることで、その差分から走行距離に対し、どの程度ガソリンを使ったかを割り出す方法です。詳しい手順は以下の通りです。
それぞれの手順について詳しく解説します。
始めにガソリンスタンドなどに行き、燃料を満タンまで入れましょう。正確に測定するためにも、給油後は燃料計がF(フル)の表示になっていることを確認してください。満タンまで入れ終わったら、トップメーターをゼロ(リセット)にして、走行距離を計測します。なお、リセット方法はトリップスイッチを長押しするなどがあるものの、車種により異なるため取扱説明書を確認しましょう。
準備が整ったら普段通り走行します。実燃費の計算であるため、普段は利用しないような道路(高速道路など)をあえて選ぶのではなく、通勤や買い物などで走り慣れた道を選ぶのがおすすめです。また合計走行距離は、短いよりも長い方が平均的な実燃費を算出しやすくなります。給油ランプが点灯する前、ガソリンの残量が3分の1程度を目安に走行するとよいでしょう。
ある程度の距離を走行し、ガソリンが減った後は再び満タンまで給油します。燃費計算ではこのときの給油量が必要となるため、給油機のメーター、またはレシートを確認し、忘れないように残しておきましょう。走行距離はトリップメーターから確認します。
給油量と走行距離が分かったら、以下の式で実燃費を計算します。
例えば、トリップメーターの走行距離が362km、給油量が23Lの場合、実燃費は約15.74km/Lと分かります。なお、ガソリン車の平均燃費は15.0km/Lといわれています。
燃費計算で算出した実燃費は、カタログなどに記載されている燃費よりも悪いことが多くあります。そのため実燃費を正しく把握することにより、なぜ燃費が悪いのか、燃費向上を考えるきっかけにもなるでしょう。
ここからは燃費を計算するメリットについて詳しく解説します。
車の燃費が悪化する原因は、天候や道路状況、個人の運転のクセ、車本体の不具合などが考えられます。定期的に実燃費を計測していると、どのような理由から燃費が悪化しているのか、予測を立てやすくなるでしょう。
例えば購入して間もない車なのに燃費が悪い場合、急加速や急ブレーキ、アイドリングなどガソリンを消費しやすい運転の仕方が原因かもしれません。
一方で突発的に燃費が悪化した場合、タイヤの空気圧の低下やセンサー類の故障の可能性があるため、整備工場で点検してもらうとよいでしょう。年々燃費が悪くなっているなら、エンジン類の不具合が考えられます。場合によっては新しい車に買い換えた方がよいかもしれません。最近は燃費計が搭載された車種も登場しています。
燃費計算によって実燃費が分かれば、月々にかかるガソリン代の予測にも役立ちます。燃費からガソリン代を計算する方法は以下の通りです。なお、走行距離は月平均を用います。
ガソリンの単価が上がっていると分かれば、走行距離を抑えたり燃費の良い走り方をしたりしてガソリン代の節約にもつながるでしょう。
給油のタイミングは人それぞれではあるものの、実燃費が分かればより適した給油タイミングが分かりやすくなります。特に、自動車の燃料メーターとガソリン残量がそれほど正確に連動していない車もあるため、給油ランプが点灯してから入れようとすると間に合わず、走行できなくなるかもしれません。実燃費が分かれば残りの燃料でどの程度走行できるかを把握できるため、事前に近隣のガソリンスタンドを探しておけます。予想外のガス欠で慌てる心配もありません。
実燃費の計算では給油する人によって、誤差が出ることがあります。またトリップメーターをゼロにし忘れるなど、初歩的なミスにも注意が必要です。ここからは燃費計算時の注意点をご紹介します。
ガソリンを満タンに入れるとしても、給油する場所や人により若干誤差が出ることがあります。できるだけ正確に計算したいなら、同じガソリンスタンドで同じ人が給油するようにしましょう。セルフのガソリンスタンドを使うのもおすすめです。
実燃費は、給油量と走行距離が分からなければ計算できません。ガソリンを入れる際に給油量の確認が漏れたり、レシートを捨ててしまったりしないようにしましょう。
また走行距離はトリップメーターをゼロにし忘れて計測できないことがあります。どちらも忘れないようにメモなどに残しておきましょう。
EV(電気自動車)はガソリン車とは異なり、電気で動くため燃費ではなく電力消費率で表します。電力消費率は1kWhの電気で車が何km走行できるかを意味し、単位はkm/kWhで表記します。電力消費率の単位は自動車メーカーにより若干差があり、kWh/kmで表記されることもあるので注意してください。同じ電力消費率であっても表記方法が違うと、以下のように意味合いも異なります。
EVの電力消費率計算の方法は以下の通りです。
考え方はガソリン車の燃費と同様です。充電した電力量は満充電までに何kWh使ったか確認しましょう。例えば、走行距離300km、充電までに50kWh使ったときの電力消費率は6km/kWhとなります。
EVの場合、車内のディスプレイや専用アプリでも確認が可能です。車内のディスプレイでは、電力消費率情報などの項目から現在の瞬間電力消費率や平均電力消費率を確認できます。またEVメーカーの公式アプリでは、過去の走行履歴から実電力消費率の確認ができるものもあります。いずれも詳しい使い方は取扱説明書などを確認しましょう。
2024年現在のEVの平均電力消費率は6~7 km/kWhとされているため、1kWhの電気で6~7kmほど走行できると分かります。なお、実電力消費率は走行環境による差が大きい点に注意が必要です。その理由としてEVは自動車の走行だけでなく、エアコンやオーディオなど周辺機器も同じ電力で動かすためです。同じ場所で同じ走行距離であっても、エアコンをフル稼働させれば、当然電力消費率は悪化します。カタログに記載されている数値や平均値は目安として参考にしましょう。
EVの充電方法には家庭などで行う普通充電と、公共施設などの充電スポットを利用する急速充電の2種類があります。それぞれ電気料金に違いがあるため、どちらの方がコストを抑えられるか比較して見ていきましょう。
普通充電とは、家庭用の200V の交流電源を使い、数時間以上かけてゆっくりと充電する方法です。バッテリーに負担がかからず、コストも抑えられる点がメリットです。電気料金は各電力会社との契約により異なるため、ここでは公益社団法人全国家庭電気製品 公正取引協議会の目安単価、1kWhあたり31円(税込) を使い計算します※。電力消費率7km/kWhのEVであれば「31円÷7km/kWh=約4.42円」という計算で、1km走行あたりのコストは約4.42円となります。
※参考:公益社団法人全国家庭電気製品 公正取引協議会「よくある質問 Q&A」“カタログなどに載っている電気代はどのようにして算出するのですか?”
「よくある質問 Q&A」“カタログなどに載っている電気代はどのようにして算出するのですか?”
一方急速充電とは、高圧電源を引き込み専用の充電器を利用することで早ければ30分程度の短時間でバッテリーを80%まで 充電できる方法です。充電スポットの多くは事前にEV充電認証カードの作成が必要で、それぞれのカードにより月額利用料や従量課金の方法が異なります。低コストの急速充電力消費率用でも1分15円かかると考えておきましょう。現在の日本国内の急速充電器は20~50kW出力のものが多いため 、30kW出力と仮定し計算します。
30kW出力の場合「30kW÷60分=0.5kW」の計算で1分あたり0.5kWhの充電が可能です。料金が15円/分であるため「15円÷0.5kWh=30円/kWh」の計算で1kWhあたりの電気料金は30円と分かります。また「30円/kWh÷7km/kWh=4.28円」で1km走行あたりのコストは約4.3円です。 ただしカードの月額利用料も加算されるため、実際には4.3円以上のコストになると予想されます。
ガソリン車とEVはどちらの方が低コストで走行できるのか、それぞれ比較してみましょう。数値はそれぞれの平均値を利用します。
比較項目 | ガソリン車 | EV |
---|---|---|
燃費または電力消費率 | 15km/L | 6km/kWh |
燃料費または電気代 | 165円/L | 31円/kWh |
1,000km走行するために必要な費用 | 1万890円※1 | 4,433円※2 |
「1,000km÷15km=66L」「66L×165円=10,890円」により計算
「1,000km÷6km=142.8kWh」「約143kWh×31円=4,433円」により計算
以上のように、ガソリン車とEVを比較すると同じ距離を走るために必要な燃料コストに2倍近い開きがあります。ただし上記は単純な計算式での比較のため実燃費や実電力消費率によっても結果は異なります。
ガソリン車とEVでどちらの車の方がコストに優れるか確認するときは、メンテナンス費用や充電スポットの利用費用など、総合的に確認した方がよいでしょう。
ガソリンや軽油を配送し、車などの内燃機関でエネルギーに変換するコストと、発電所で発電し送電された電気をモーターでエネルギーに変換するコストを比較すると、後者が安くなります。そのため、ガソリン車よりEVの方が電力消費率に優れると言うことができるでしょう。
※参考:経済産業省資源エネルギー庁「日本のエネルギー」
日本のエネルギー (PDF)
ガソリン車もEVも基本的には同様の方法で燃費・電力消費率をより良くできます。なお、EVはエアコンの使用により電力消費率が悪化するため、空調に頼らない方法で温度を調整するとさらに効果的です。ここからは燃費・電力消費率をより良くするための具体的な方法をいくつかご紹介します。
急発進・急ブレーキを控える、車間距離にゆとりを持つなど、安全運転を心がけましょう。安全運転は、無駄なガソリンや電力を消費しないエコドライブにもつながります。自分の運転のクセが分からないときは、安全運転やエコドライブをサポートするアプリを活用するとよいでしょう。
タイヤの空気圧は1カ月で5%程度 低下します。適性値から不足すると数%程度燃費や電力消費率が悪化するため、こまめに点検・整備しましょう。
燃費や電力消費率は車の荷物の重さにも影響されます。無駄な荷物は極力車から降ろすようにしましょう。また車は空気抵抗の大きさにも敏感なため、不要な外装品は外しておくのがおすすめです。
渋滞やルート変更などにより、走行時間が長くなればその分ガソリンや電力を消費します。混雑する時間帯は避け、余裕をもって出発しましょう。
夏場は内気循環モードを活用する、冬場はシートヒーターを使うなどして、エアコンに頼りすぎないように工夫しましょう。走行以外でのバッテリー消費を節約できます。
燃費とは1Lのガソリンで何km走れるかを表した数値で、EVでは電力消費率といいます。自分で燃費を計算すれば、燃料費を意識する上でも効果的です。一般的にガソリン車とEVでは、EVの方が燃料コストを抑えることができます。
燃費・電力消費率の基本を理解すれば、今後、自動車を選ぶときの参考にもなります。車を購入した後も本記事で紹介した燃費・電力消費率をより良くする方法を押さえて、なるべくお得に車を走らせましょう。