2024年 4月 15日
カーボンニュートラル
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から吸収量を差し引き、実質的にゼロにしようとする取り組みです。地球温暖化の防止に効果的と考えられ、再生可能エネルギーの活用や省エネ設備の導入などが具体的な取り組みとして挙げられます。
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を実質的にゼロにしようとする取り組みのことです。温室効果ガスは昨今問題となっている地球温暖化の原因の一つとされ、このまま増加が続くと自然環境の悪化により、人々の生活が脅かされることが懸念されています。
2020年以降の気候変動問題に対する国際的な枠組みを締結した「パリ協定」では、「2050年カーボンニュートラル」の実現が一つの目標として掲げられました。協定に合意した国々では、再生可能エネルギーの導入などにより温室効果ガスの削減に向けた具体的な取り組みが進んでいます。
本記事では、カーボンニュートラルとは何か、その必要性や達成に向けた具体的な取り組み、日本の達成状況、懸念事項などについて解説します。
カーボンニュートラルとは、全体として温室効果ガスの排出を差し引きゼロにする取り組みや目標のことです。経済活動などにより排出される温室効果ガスをできるだけ削減し、やむを得ず排出されてしまった分は森林管理などによって吸収し、差し引きゼロを目指します。
カーボンニュートラルによって実質ゼロを目指す温室効果ガスには、地球の表面付近にとどまり大気を温める効果があります。温室効果がないと地球の表面温度を保てません。しかし現在では温室効果ガスの過剰な排出により地球の平均気温が上昇しており、温暖化などの環境問題が深刻化しています。
温室効果ガスの内訳としては二酸化炭素(CO2)だけでなく、メタンや一酸化二窒素、フロン類などがあります。中でもCO2は、大気中に含まれる割合が約0.04%とわずかではあるものの、特に温室効果が大きいため問題となっています※1。CO2は産業革命以降、それ以前と比べ40%程度増加しており削減に向けた取り組みが世界中で進められています※2。
※1参考:一般財団法人鹿児島県環境技術協会「温暖化について」
温暖化について
※2参考:南房総市「温室効果ガスってどんなもの?」
温室効果ガスってどんなもの?
2020年、日本政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指すと宣言しました。2050年を一つの区切りとする理由は、2015年にフランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)時に採択された「パリ協定」に基づいています。
パリ協定は、2020年以降の気候変動問題に対する国際的な協定です。先進国だけでなく途上国を含む196の締結国に、削減目標の策定や行動が義務付けられています。世界共通の長期目標として「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2度より十分低く保つとともに、1.5度に抑える努力を追求すること」が掲げられました。※
※出典:JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センター「パリ協定」
パリ協定
上記の達成に向け、120以上の国と地域で「2050年カーボンニュートラル」が目標とされたため、日本でも達成に向けた取り組みが続いています。
カーボンニュートラルを実現するためには、国・企業・国民一人ひとりが具体的な取り組みを進める必要があります。温室効果ガス(主にCO2)の排出・削減から吸収・再利用までどのような取り組みを行えるのか、具体例をご紹介します。
太陽光や風力、地熱など自然界に存在し枯渇せず、CO2を増加させないエネルギーを「再生可能エネルギー」といいます。石油をはじめとする化石エネルギーは資源が限られているだけでなく、使用時にCO2を排出する点が問題です。
会社のオフィスや工場、家庭で再生可能エネルギーを導入すれば、CO2の大幅な排出削減が期待できます。屋上などに太陽光パネルを設置して発電するだけでなく、再生可能エネルギー由来の電力を購入するなどをするのも有効です。
省エネ(省エネルギー)を徹底すれば、温室効果ガスの排出を削減する効果もあります。特に、日本はエネルギーの多くを化石燃料由来の火力発電に頼っているので、工場の設備や家電などで省エネを徹底するだけでも温室効果ガスの削減につながるでしょう。
省エネの方法としては無駄な電気を使わないことの他、省エネ設備や省エネ家電の導入もあります。温室効果ガスだけでなく、電気料金も削減できるというのが特長です。
カーボン・オフセットとは、排出量を削減してもどうしても排出されるCO2について、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資するなどして埋め合わせる、という考えです。
日本では、2013年から国がCO2の排出削減量・吸収量をクレジットとして認証し、購入・売却できるようにした「J-クレジット制度」が始まっています。削減・吸収した温室効果ガスの市場取引が可能となり、CO2の排出削減が間に合わない企業は、削減努力を続けた企業からクレジットを購入可能です。なお、クレジットを売却して得た資金は、事業の拡大や省エネ機器の導入などさまざまな用途で利用できます。
樹木は光合成の過程でCO2を吸収し、酸素を発生させることが可能です。また炭素を蓄えて成長するためCO2の貯蔵庫としての機能もあります。
それぞれの樹木がどの程度CO2を吸収するかは成長段階や手入れの仕方により異なるものの、36~40年生のスギ人工林1ヘクタールあたり、1年間で約8.8トンのCO2を吸収するとされています※1。なお、2021年度の世帯あたりの年間CO2排出量は2.74トンとされるので、約3世帯分のカーボンニュートラルになる計算です※2。そのため企業やボランティア団体が主導となって行う植樹活動もカーボンニュートラルに有効な取り組みです。
※1参考:林野庁「森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?」
森林はどのぐらいの量の二酸化炭素を吸収しているの?
※2参考:環境省「令和3年度 家庭部門の CO2排出実態統計調査 結果の概要(確報値)」“Ⅰ 結果の概要. 1 全国の結果”
令和3年度 家庭部門の CO2排出実態統計調査 結果の概要(確報値) “Ⅰ 結果の概要. 1 全国の結果” (PDF)
カーボンリサイクルとは、CO2を資源として再利用する取り組みです。CO2の利用先としては、ウレタンなどの化学品、ガス・バイオなどの燃料、コンクリート製品などの鉱物などが想定されています。
カーボンリサイクル技術が発展すれば、CO2の排出を抑制するだけでなく、排出したCO2の削減も可能です。カーボンリサイクルはそれぞれの分野で発展段階にあり、2030年頃からの普及に向けて研究が進められています。
環境省の報告では、日本の2021年度の温室効果ガスの排出・吸収量は、2013年度と比較して20.3%減少しました※1。新型コロナウイルス感染症拡大後の経済回復など、特別な事情を除けばCO2の排出量は年々減少傾向にあります。
しかし、2050年までにカーボンニュートラルを実現するのは難しいとされており、その理由が火力発電所からのCO2の排出です。日本ではCO2の約4割が電力部門、残りの6割が非電力部門(産業・運輸・過程)から排出されています。※2
火力発電所は安定した電力の供給が可能で、供給量が自然環境に左右される再生可能エネルギーを支えているのが現状です。カーボンニュートラル達成のためには、今後は水素・アンモニアなどのCO2フリー燃料やCO2の貯留・利用(CCUS)により、火力発電所の代替を進める必要があります。
※1参照:環境省「2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について」
2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について
※2参照:資源エネルギー庁「第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」
第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引き、実質ゼロにする取り組みです。産業革命以降増加した温室効果ガスの影響により地球温暖化が深刻化し、自然環境の悪化から人々の生活を脅かす事態に発展しています。
気候変動問題に対する国際的な枠組みとして採択されたパリ協定では、2050年のカーボンニュートラル実現を一つの目標としています。企業や自治体だけではなく、一人ひとりがカーボンニュートラルの実現のためにできることはないか意識することが大切です。