お役立ち情報

全固体電池とは?
種類やメリット、抱えている課題について解説

2024年 6月 3日

カーボンニュートラル

全固体電池とは、電池に採用する電解質に、固体を選択した電池のことです。固体の電解質が持つ特徴により、長寿命化や安全性の高さ、設計の自由度の高さなど、複数の利点があります。本記事では、全固体電池のメリットや種類、課題などについて解説します。

全固体電池とは、電池の中にある電解質が固体である電池のことです。液体の電解質を採用したリチウムイオン電池と比較し、以下に挙げるようなさまざまなメリットがあります。

  • 幅広い温度に耐え環境変化に対応できるため安全性が高い
  • より早い充電が可能
  • 劣化しにくく長期間使用できる
  • 構造や形状など設計を自由に行える

種類もバルク型や薄膜型などがあり、全固体電池と一口にいってもそれぞれ特徴が異なります。また全固体電池は現在でも研究・開発が進んでいる状況です。 普及によって電気自動車や電子機器のさらなる発展が期待されますが、同時に解決すべき課題も存在しています。

本記事では、全固体電池の概要やメリット、種類、抱えている課題などについて詳しく解説します。

目次

全固体電池とは?

全固体電池とは、電気を通す役割を持つ電解質(イオン)に、固体を採用した電池のことです。電気を引き起こす機能を持つ電池の活物質には、正極活物質と負極活物質の2種類があり、電池はこの2種類の活物質と活物質に接触している電解質で形成されています。従来は、電解質は液体が主流でしたが、現在では固体にする研究・開発が進められており、それが全固体電池です。詳しくは後述しますが安全性の高さや設計の自由度、寿命の長さなど、全固体電池ならではの強みがあります。

全固体電池はEV(電気自動車)への搭載を始めとした、多岐にわたる分野での利用が望まれていますが、現時点では全てが実用化に至っている訳ではありません。

全固体電池の仕組み

全固体電池の仕組みは、リチウムイオン電池と大きな差異はありません。両者ともに電池の電極には金属が採用され、放電時にイオンがプラス側に移動、充電時は、マイナス側に動く仕組みを有しています。

全固体電池とリチウムイオン電池の違いは、電解質です。全固体電池では固体の電解質を、リチウムイオン電池では液体の電解質を用います。

電解液を採用した場合、電気を通すイオンが液体の中を伝わりますが、全固体電池では、固体の中をイオンが移動します。つまり全固体電池の場合、電池からの液漏れを気にする必要はありません。また全固体電池では、リチウムイオン電池に必要なプラス側とマイナス側を隔てるセパレーターも要らないという特徴があります。

全固体電池と半固体電池の違い

半固体電池とは、全固体電池と同じく、注目を浴びている電池の一つです。全固体電池ほどの高い性能ではありませんが、リチウムイオン電池を比較すると、安全性が高いとされています。 半固体電池で使う電解質には、粘土や樹脂などの柔らかい物質やゲル状の電解質が利用されています。

全固体電池が持つメリット

全固体電池は他の電池と比較すると、複数のメリットが複数あります。ここからは詳細について見ていきましょう。

幅広い温度に耐えられるため安全性が高い

リチウムイオン電池は使用できる温度に制限があります。低温では液体の粘度上昇により内部抵抗が増加し電圧が下がってしまいます。また60度以上の高温では、セパレーターの溶解が発生するリスクもあります。特に電解液が蒸発するような高温にさらされると、電池として機能できません。

一方で全固体電池は、より広い温度範囲で性能の維持が可能です。そのため、さまざまな状況で安全性を保ちながら、安定した性能を提供できます。

より早い充電が可能

温度変化に強い全固体電池は、急速充電で生じる熱によって性能が劣化するリスクも抑えることが可能です。リチウムイオン電池は、急速な充電を行うと電池が熱くなり劣化が進んでしまうので、充電速度を制御する必要があります。全固体電池は低温だけではなく高温にも対応できる電池のため、より早い充電が可能です。

全固体電池の研究が進めば、EVを始め安全性を担保しながらも急速充電が求められる機器への搭載が進むでしょう。

劣化しにくく長期間使用できる

固体の電解質は電解液と比較すると、劣化が遅く長期間使用できる特性を持っています。電解液は電解質や電極活物質の副反応が起きて容量の低下や劣化の要因になってしまいます。

一方で全固体電池では固体電解質の中をイオンのみが伝わるので、副反応が生じにくく、長い期間安定した性能で使用することが可能です。

構造や形状など設計を自由に行える

全固体電池では、構造や形状など、比較的自由に電池設計を行えます。リチウムイオン電池では液漏れが発生しますが、前述した通り全固体電池では発生しません。そのため液漏れを回避するための強固な構造を作らずに済みます。液漏れを気にせずに小型化や薄型化だけでなく、重ねたり折り曲げたりすることも可能です。さまざまな電子機器や用途で利用できるというメリットがあります。

形状の違いによる全固体電池の種類

全固体電池は形状の違いにより、バルク型と薄膜型に分類され、それぞれ異なった特徴を持っています。バルク型と薄膜型の特徴について詳しくご紹介します。

バルク型

バルク型は、箱型の全固体電池です。電極に厚みを持たせやすい特徴があり、蓄えられるエネルギー量が多いため、大容量と高出力という強みがあります。また強固な電池ケースに入っているため、硫化物系の危険物質を電池で用いる場合でも問題なく製造が可能です。

容量と出力、安全性が求められる、EVのバッテリーなどでの利用が期待されていますが、サイズが大きくなりがちというデメリットもあります。

薄膜型

薄膜型の全固体電池は、極めて薄い形状をした膜状の電解質を重ねて製造され、設置場所や形状を選ばないという強みがあります。

小型で耐久性や寿命の観点では優れた全固体電池ですが、バルク型ほどの出力と容量はありません。薄い電解質の膜を積み上げる製法により、貯め込めるエネルギー量に限りがあるためです。

一方、バルク型とは異なり、薄小型で自由な形状であることを活かし、小さな電子機器への搭載が進むと推測されます。

使用する電解質の違いによる全固体電池の種類

全固体電池は、形状だけではなく使われる電解質の種類によっても分類が可能です。ここからは酸化物系、硫化物系、ポリマー系の3つの種類について解説します。

酸化物系

全固体電池で酸化物系の電解質を利用する際は、薄膜型の形状が選択されることが多く、薄膜型が持つ安定性や耐久性、寿命の長さが特徴です。また小型の特徴を活用し、電子基板に極薄の全固体電池の貼り付けも可能です。場所やサイズを問わずに設置できるので、大きさの制約がある機器に好まれています。

柔軟性に富んでいる一方で、酸化物系はイオン伝導率が低いため、大きいエネルギーの出力が必要な電子機器などには、適していません。現時点ではEVなどには活用できないでしょう。

硫化物系

硫化物系は、硫黄などの化合物を電池の電解質に使用しており、大容量で高出力という特徴を持っています。また電解質の素材の選択や、製造手段が多種多様です。

これらの特徴から、EVに搭載する電池としても適しています。自動車メーカーを始め、化学メーカーや電気メーカーでも多額の予算を費やした開発が進行中です。

しかし硫化物系の全固体電池では、リチウムイオン電池ほどではないものの硫黄などの危険物質を扱うため、安全性への対策が求められます。

ポリマー系

ポリマー系は、高分子化合物(ポリマー)を使用しており、全固体電池の欠点を補えるものとして、開発が推し進められています。

全固体電池の電解質には固体が使われていますが、電気を放ったり貯めたりするときに、変形が生じ性能が落ちるケースがあります。ポリマーには弾力があるため、変形による性能が低下する可能性が少ないです。一方で容量が上げにくく、容量を増やそうとすると安全性の低い素材を利用しなければならないなど、改善するポイントが複数あります。

全固体電池が抱える課題

全固体電池にはさまざまなメリットがある一方で、課題も抱えています。全固体電池の主な課題について解説します。

固体電解質の開発における課題

全固体電池では固体の中をイオンが移動するため、液体の電池と比較して移動する際の抵抗が大きくなり、出力が上がりにくいという課題があります。近年では研究が進み、新しい固体電解質の発見にも至っていますが、完全なものではないため、より高い性能を目指した固体電解質の材料の調査と開発が必要です。

製造設備や工程における課題

全固体電池では製造設備や工程が確立されていないので、量産体制が敷かれていません。実用化し量産するには電池を製造する設備や、効率良く製造できるプロセスの構築が求められます。全固体電池の製造プロセスは、リチウムイオン電池とは大きく異なるため、設備の共有はできません。

また、全固体電池の製造には特別な設備が必要なケースもあります。例えば、全固体電池の電解質に、水分に触れると化学反応を引き起こす硫化物系を用いる際にはドライルームなどを設ける必要があります。新たな設備や効率的な工程を作るには、コストがかかってしまうというのがデメリットの一つです。

全固体電池は幅広い分野への展開が期待できる存在

本記事では、全固体電池の概要やメリット、種類、課題などについてご紹介しました。全固体電池とは、電解質に固体を用いた電池のことです。低温・高温に耐えられる、劣化しにくく寿命が長いなど、従来のリチウムイオン電池に使われる液体の電解質にはないメリットを持っています。電解質の形状や種類によって、さまざまな電子機器に利用できる可能性があるでしょう。

一方で固体電解質は開発や製造において、いくつかの課題があります。現在でも研究・開発が進められているので、固体電池のさらなる発展を期待しましょう。

関連記事

導入事例 株式会社NextDrive様 NextDriveとパイオニアが可視化する、EV活用のコストメリット

導入事例 国際航業株式会社様 “エネがえる”&“カーボンニュートラルAPI”で、EV・V2H利用時のエネルギー可視化へ

導入事例 株式会社電脳交通様 高精度なルートテクノロジーで、タクシー配車の効率アップに貢献 クラウド型タクシー配車システムにPiomatix LBS APIを採用

お問い合わせ・
資料ダウンロード

お役立ち情報