Piomatix LBS API 導入事例

株式会社NextDrive 様

NextDriveとパイオニアが可視化する、
EV活用のコストメリット

用途:EV充放電制御システムにおけるEV使用電力の可視化

NextDriveは2023年よりパイオニアと協業し、「Piomatix LBS API」の
「カーボンニュートラルAPI」を自社開発システムに導入しています。

「走れる蓄電池」EV活用のために必要な、
エネルギーマネジメント

“モノ(ハード)×コト(サービス)”で新しいソリューションを提供する会社への変革を進めているパイオニアは、地域エネルギーマネジメント(CEMS)、ホームエネルギーマネジメント(HEMS)のサービスを提供するNextDriveと、2023年より協業し「EV充放電制御システム」の開発に取り組んでいます。 グリーントランスフォーメーション(GX)の核となるエネルギーマネジメントで協業するNextDriveとパイオニア。両社のキーパーソンである、NextDriveの執行役員・小長井教宏氏とパイオニアモビリティサービスカンパニーの戦略チームディレクター・小川慶輔が、2社協業の意義について語ります。

それでは、最初にお二人の経歴について教えていただけますか?
小長井「以前は野村総合研究所でインフラのコンサルティングに携わっておりました。 当時からスマートシティ計画の実現に注力していましたが、実際のプロジェクトでは、壁に突き当たることも多くありました。その経験から、街のデータ収集と効率的な活用には、専門的なシステムが必要だということを痛感しました。

NextDrive 執行役員 小長井教宏氏

そこで約4年前に、エネルギー分野に特化したデータ収集・分析、制御システムの構築に取り組むNextDriveに転職した経緯があります。将来的にこの取り組みが、ビジネス、モビリティ、生活サービスの分野へ展開し、スマートシティの実現に貢献することを期待しています」
小川実は私も前職ではコンサルティング会社に在籍していました。パイオニアに転職したのは、この会社がハードウェア事業からソフトウェア事業への転換期にあることに興味を持ち、私のコンサルティング経験が役立つのではないかと思ったからです。

パイオニア モビリティサービスカンパニー 戦略チームディレクター 小川慶輔

入社後は新規事業に携わり、特に電気自動車(EV)関連が主なテーマとなっています。大学時代に交通工学を研究していたので、その興味が現在の仕事に繋がっています。コンサルティング企業での経験やインフラに関する興味など、小長井様とは共通点を感じますね」
小長井「小川さんとは初対面から、交通系の話題で意気投合しました。私自身も大学時代に交通工学を研究していたので、小川さんとは共通の知識ベースがあるのです。データを活用するアイデアについても、有意義なディスカッションができました。今日に至るまでその関係は大きなプラスとなっていて、良いご縁をいただいたと感じています」
今回2社で「EV充放電制御システム」を開発しますが、充放電制御システム…つまりエネルギーマネジメントシステムにEVを組み込むことにどのようなメリットがあるのでしょうか。
小長井「世界的に脱炭素を目指す流れから、工業用・家庭用問わず動力源を再生可能エネルギーによって電化していくことが急がれています。そういった中で今、EVが非常に注目を浴びている状況です。 その背景には、発電した電気を貯める蓄電池としてEVを使うV2H(Vehicle to Home)の技術があります。EVはCO2を削減できる乗り物という観点に加えて、エネルギーを貯める機器として、もっと普及が進むのではないかと思われているわけです」

V2Hシステムがあると、電気を双方向で使うことができ、使っていないEVの電気を活用できる

現状では蓄電池は非常に高価なので、車と兼ねられればコストメリットがあるということですね。
小長井「その通りです。しかしながらEVは当然、交通手段としての役割があるので、どのタイミングならば蓄電池として使えるのかということが分かっていないと、活用できません。そういった課題を解決するべく、交通側のデータを持っているパイオニアと協業したのです」

小川「私どもパイオニアは、EVにおける電力消費量を計測するノウハウを持っています。ですから、かねてからEVの普及にコミットしたいという考えがありました。 そんななかで、再生可能エネルギーの活用に積極的な企業が、蓄電池との両用で活用できるという文脈でEVに注目していることを知ったのです。それならばエネルギーマネジメント分野の企業と協力し、エネルギーマネジメントシステムとの連携を強めることで、EVの普及に貢献できないかと考えました。 そこでNextDriveにアプローチさせていただいたところ、タイミング良くEV分野での協業相手を探していたということで、意気投合した次第です。後に触れますがお互いにユーザーに提供できるメリットで共通するところもあり、非常に相性が良いですね」

EVも含めたトータルな電力把握で、
再生エネルギー活用を最適化

パイオニアが持っている交通関係のデータとは、どのようなものでしょうか。
小川「私たちは20年以上にわたり、カーナビゲーションの提供を通じて、車のプローブデータ(走行中の各車両からインターネットで送信される、位置や速度などのデータ)を収集してきました。収集した膨大なデータは渋滞情報への変換や、到着予想時刻の精度向上に役立てています。 現在はその発展形として、プローブデータをベースにEVの電力消費やCO2排出量を可視化する‟カーボンニュートラルAPI”を展開しています。例えば、各道路における時間帯ごとの渋滞の発生のしやすさや勾配といった燃費・電力消費率に影響のあるデータをもとに、電力消費量を算出する技術です」

カーナビ事業で蓄積したデータを、EVの消費電力可視化に役立てているというわけですね。
小川「具体的で膨大なデータをベースに、ルートによる所要時間や燃費を予測します。我々の計測によると、ルートによって、消費電力が3倍、4倍も違うことがあるので、平均的な予測に頼らず、ルート別の細やかな予測が必要だと確信しています。 EVの消費電力予測の正確性がアップすることで、EVの利便性向上のみならずV2Hの活用にも貢献できると考え、取り組みを進めています」
協業によって、GXに向けた新たな一歩を踏み出せそうです。
小長井「ESG経営の観点から、脱炭素をはじめとしたサステナビリティ向上への関心が高まっています。そういった背景から再生可能エネルギーの活用のために、太陽光パネルや電気自動車、蓄電池などの設備投資をする企業も増えています。

すると次のフェーズとして、これらの設備をどのように効率的に管理すれば良いのか、という点が注目されます。我々NextDriveは地域エネルギーマネジメント(CEMS)、ホームエネルギーマネジメント(HEMS)を提供する実績があるので、‟カーボンニュートラルAPI”と提携することで、EVも含めた包括的なエネルギーマネジメントを提供しようということです」

NextDriveとパイオニアの包括的なエネルギーマネジメント協業の枠組み

小川「EVに限っていうと、現在はいくつかの課題があります。例えば、走行可能距離がまだ短い、価格が高い、そしてエネルギーマネジメントとのバランス。これらの難しさが、EVの導入を躊躇させる要因となっています。 我々が協業することでソリューションを提供し、これらの課題を乗り越え、EV普及のブレイクスルーに貢献したいと考えています」
企業でEVを蓄電池として活用する際、具体的にどのような運用が考えられるでしょうか。
小川「実は多くの企業では、社用車が日中使われずに停まっている時間が多いのです。例えば、10台の社用車がある場合、平均すると3台は日中動いていないこともあります。このような状況でもしもガソリン車を所有していたら、車両数を減らさなければならないという発想になるでしょう。 しかし、これらの車をEVに変えると、事情は変わります。EVは蓄電池として機能するため、太陽光発電による余剰電力を利用して充電することが可能になります。このため、10台すべてをEVに変更することで、太陽光エネルギーの有効利用が期待できます。 さらに、民間企業の多くが週末を休みとしているため、週末に太陽光発電で充電が完了できるケースもある。その場合も燃料費のコスト減になります。このように、太陽光エネルギーを活用することで、車両運用の効率化が図られます」

後付け可能で導入しやすく、
設備変更にも柔軟に対応できる共通点を活かす

同様の事業に取り組んでいる企業もあると思うのですが、この協業の独自性はどういったところにあるのでしょうか?
小川この中立的なポジションは、パイオニアが提供するカーナビゲーションやその他のソリューションにも共通しており、特に様々なメーカーが存在する市場においてはアドバンテージになると思います」

小長井「お互いにハードを持っている会社ではないという点が、今回の協業で非常にやりやすい点ですね。身軽な立場で『一緒にソリューションを作って、一緒に売り込んでいきましょう』というスタンスで取り組みができることに、魅力を感じています」
エネルギーマネジメントの機器を後付けすることが可能であれば、導入を進める過程にある企業にとっても、取り入れやすいですね。
小川「GXを一気に成し遂げることは難しく、まずは様子を見ながら、という企業が殆どです。ですから既に導入する機器にも取り付けられて、先々の導入計画に柔軟に対応できる点は、企業にとってメリットになるのではないでしょうか」

5年先を見据えたシミュレーションモデル構築し、
GX実現を加速する

再生可能エネルギー活用やEVの普及など、協業によって目指しているゴールに対して、現在はどのようなステップにあるのでしょうか。
小長井「私たちが目指しているのは、例えば50台規模の公用車や社用車を持つ企業において、どのタイミングで電気の充電や放電を行うことが最適かを、データで可視化し、電力コスト削減につなげることです。

脱炭素に向けた再生可能エネルギーの利用が、コスト面でのメリットに結びつく環境を提供することで、その利用率を高めることに貢献できると考えています」
GXが利益に直結することが、何よりの再生可能エネルギー利用の推進力になりそうです。
小川「あと数年もすれば価格的な課題が解決され、EV普及が加速すると言われています。私たちの目標は、数年後にEVが大量に導入された際に、効率的で使いやすいエネルギーマネジメントのツールを提供することです。 そのためにも、今はESG経営に先進的に取り組まれている企業への導入をサポートし、実際にメリットを感じていただくモデルケースを積み重ねていく必要性を感じています」

小長井「EVの導入や再生エネルギーの使い方に関して、現在はまだ多くの人々が十分に理解していない状況です。きっと実際にこれらを使っていただくなかで『こんなことができたらいいな』というような具体的なニーズやウォンツが生まれるのだと思います。 既に再生可能エネルギーやEVを利用されている先進的なユーザーの意見を参考にし、サービス改善に活かしてゆきます」
将来的に再生可能エネルギーの利用が主流になると、どのような社会変化が見られるでしょうか?
小長井「再生可能エネルギーの利用率を上げることは、世界的な潮流となっています。とはいえ、太陽光や風力といった自然の力による発電は、その時々の状況に依存するので、エネルギー供給のタイミングの調整が課題となり、私たちはここにチャレンジしているわけです。 もちろん全国規模で再生可能エネルギーの需給のバランスを取ることは容易ではありません。結果的に足りない分に関しては、ガスや石油などのエネルギーで補うということになります。しかし再生可能エネルギーの発電タイミングと消費を合わせてゆくことで、従来型のエネルギーに依存する割合をできるだけ少なくすることが可能です。

従来型のエネルギーへの依存割合が低下すると同時に、地域ごとに自立したエネルギーシステムが形成されていけば、全国的に見てもエネルギーは地産地消モデルへと向かっていくでしょう。地域ごとに確立したエネルギーシステムは災害対策にもなりますし、地域内で経済を循環させることもできます」
小川「実はEVの普及は、都市部に比べて地方で加速しています。これは、過疎化が原因のガソリンスタンドの減少に伴う、自然な流れです。ガソリンスタンドが遠いといった悩みも、自宅もしくは地域ごとにEVの充電設備があれば解消ができます。 そう遠くない未来に家庭や公共施設で充電器が普及し、重要なインフラとなるでしょう。都市部でも駐車場と充電器の組み合わせが一般的になることで、EVはより快適でサステナブルな移動手段へと進化していくはずです。再生可能エネルギーとEVの普及が、新たな社会構造の基盤を築くと信じ、その実現に向けて情熱を持って取り組んでゆきたいと思います」

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