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安全運転管理者とは?
業務内容や違反時の罰則を解説

2025年 3月 3日

安全運転管理

令和4年の道路交通法施行規則改正により、安全運転管理者の選任義務違反時の罰則が強化されました。安全運転管理者の行う業務内容も拡大されているため、企業は改正内容を把握し適切な運用を行う必要があります。 本記事では安全運転管理者とは何か、業務内容や選任条件、安全運転管理者の選任が必要な事業所の条件や違反時の罰則などを解説します。

「安全運転管理者業務、みんなどうしてる?」実態調査レポート

目次

安全運転管理者とは事業主に代わり安全運転管理をする者のこと

安全運転管理者とは事業主に代わり職場で自動車の安全運転を確保するために、さまざまな業務を行う者のことです。安全運転管理者の選任は一定台数以上の自動車を保有する事業所に求められ、条件を満たした時は業種にかかわらず管理者を選任しなければいけません。選任される管理者も年齢や実務経験年数、過去に違反がないことなど複数の要件を満たすことが定められています。
令和3年の道路交通法施行令の改正により安全運転管理者の業務内容は拡充し、令和4年からは罰則規定も強化されたため、企業は早急に制度に即した安全運転管理制度の実施を行う必要があります。

副安全運転管理者とは安全運転管理者の業務を補助する者のこと

一定の要件を満たす事業所では、安全運転管理者の業務を補助する副安全運転管理者の選任も必要です。補助役とは言え業務内容は安全運転管理者と違いはなく、不在時などは代わりに業務を行う必要があります。

安全運転管理者の選任は事業所単位で必要

安全運転管理者の選任は企業全体ではなく、それぞれの事業所単位で選任する必要がありますので注意しましょう。選任後は、事業所を管轄する公安委員会に届けを行います。

安全運転管理者の業務内容

安全運転管理者の業務内容として、国家公安委員会が公表する交通安全教育指針や内閣府令で定める安全運転管理業務に則り、以下のことを行います。

安全運転管理者の9つの業務

1

運転者の適性の把握

2

運行計画の作成

3

交替運転者の配置

4

異常気象時の措置

5

点呼・日常点検

6

運転日誌の備付け

7

安全運転指導

8

酒気帯び有無の確認

9

酒気帯び確認内容の記録

①運転者の適性の把握

従業員の運転適性や技能、知識、道路交通法などの法令を遵守しているかを把握するための措置を取ります。

②運行計画の作成

速度違反や放置駐車違反、過積載の防止、過労運転の防止など安全運転確保のための運行計画を作成します。

③交替運転者の配置

長距離運転や夜間運転は疲労により安全運転ができない恐れがあるため、あらかじめ交替する運転者を配置します。

④異常気象時の措置

異常気象や天災などで安全運転の確保が難しいと判断される時は、運転者に対し必要な指示を出したり、安全運転の確保のための措置を講じたりします。

⑤点呼・日常点検

従業員に点呼を行い、自動車の運行前点検の実施状況、過労や病気ではないか、正常な運転ができるかを確認します。併せて、安全運転の確保に必要な指示をします。

⑥運転日誌の備え付けと記録

運転の開始・終了の日時や運転者名、運転距離など必要事項を記録する運転日誌を備え付けて、運転を終了した運転者に記録させます。

⑦安全運転指導

運転する従業員に対し、交通安全教育指針に基づく教育や運転に関する技能・知識、安全運転を確保するために必要な事項を指導します。

⑧酒気帯びの有無の確認

運転前・運転後の従業員に対し、酒気帯びの有無を目視などで確認します。令和4年4月1日施行の道路交通法施行規則により追加された業務です。

⑨酒気帯び確認内容の記録・保存

酒気帯びの確認の結果は、1年間保管が必要です。令和4年4月1日施行の道路交通法施行規則により追加された内容です。

※出典:安全運転管理者等法定講習 警視庁 (tokyo.lg.jp)

安全運転管理者の業務について詳しくは

「安全運転管理者業務、みんなどうしてる?」実態調査レポート

安全運転管理者の選任は自動車の所有台数により異なる

安全運転管理者の選任が必要か否かは、自動車の種類や所有台数などにより、以下のように異なります。

  • 乗車定員11人以上の自動車(マイクロバスなど):1台以上
  • その他の自動車(普通自動車、トラック、バイクなど):5台以上

上記に該当する場合、安全運転管理者の選任が必要です。

安全運転管理者の選任が義務づけられる場合 乗車定員が11人以上の自動車が1台以上ある→1台ごとに1名選任、またはその他の自動車が5台以上ある→事業所ごとに1名選任、※自動二輪車(原動機付自転車を除く)は 1台を0.5台として計算、※業務で使用する車両を台数として計算、出典:安全運転管理者(道路交通法施行規則第9条の8)/警視庁HP

※出典:安全運転管理者(道路交通法施行規則第9条の8)/警視庁HP

副安全運転管理者の選任が必要な台数

副安全運転管理者の選任は、乗車定員数や車種に関係なく自動車の使用台数が20台以上である場合、以降20台増加するごとに副安全運転管理者も1人ずつ選任しなくてはいけません。例えば、20台以上40台未満であれば1名、40台以上60台未満であれば2名の選任が必要です。

0.5台で換算する車両

大型自動二輪車や普通自動二輪車は台数を計算する際、それぞれ0.5台で換算します。ただし、総排気量が50cc未満の一種原付は台数に含みません。

※出典:福岡県警察 安全運転管理者制度(pref.fukuoka.jp)

安全運転管理者の資格要件

安全運転管理者や副安全運転管理者を選任する際は、以下の資格要件を満たす者でなければいけません。

安全運転管理者の必須要件

安全運転管理者は、年齢は20歳以上(副安全運転管理者を置く場合は30歳以上)で、都道府県によっては以下の要件が加わります。

  • 2年以上の運転管理の実務経験を有する

実務経験が2年以下の者を選任したい場合、公安委員会が行う教習を修了する(自動車の管理経験が1年以上の者のみ)、または公安委員会の個別の認定を受けるなどの方法もあります。詳しい内容は所管の公安委員会に確認が必要です。
安全運転管理の業務の性質上、課長相当以上の役職者が望ましいとされています。

※出典:安全運転管理者等の資格要件|静岡県警察(pref.shizuoka.jp)

安全運転管理者の除外要件

安全運転管理者の除外要件もあります。安全運転管理者の要件を満たしていても、公安委員会の解任命令により解任された日から2年を経過していない従業員は選任できません。
また、ひき逃げや酒酔い運転等、過労運転や放置駐車の容認行為、妨害運転に係る罪など、法令や安全運転義務に違反した日から2年を経過していない者も除外されます。詳細は警視庁のホームページを確認してください。

※出典:安全運転管理者等法定講習 警視庁(tokyo.lg.jp)

副安全運転管理者の資格要件

副安全運転管理者は、年齢が20歳以上で、都道府県によっては以下の条件が加わります。

  • 運転管理の実務経験が1年以上ある
  • 運転経験が3年以上ある

上記に当てはまらない者を選任したい場合、公安委員会に同等以上の能力があると認められなければいけません。自動車の運行を直接管理する係長や相当職以上にある役職者が望ましいです。副安全運転管理者の除外要件は、安全運転管理者と同様です。

※出典:安全運転管理者等の資格要件|静岡県警察(pref.shizuoka.jp)

安全運転管理者の選任はなぜ必要なのか

安全運転管理者等の選任は、任意ではなく道路交通法第74条の3第1項、第4項に定められた義務です。要件に該当する事業所では、適切な人数の安全運転管理者を選任しなければいけません。※1また民法715条では、従業員が業務中に起こした事故は、使用者である企業も賠償責任を負うこととされています。※2
悲惨な交通事故が起きれば、被害者はもとより事故を起こした従業員の将来も左右されるでしょう。事故防止を徹底していなければ、雇用する企業の信頼失墜にもつながります。企業と従業員の双方を守るためにも、安全運転管理者を適切に配置するのはもちろん、日頃の業務から安全運転を徹底する必要があります。

※1 出典:e-Gov法令検索「道路交通法(第74条の3第1項、第4項)」道路交通法 | e-Gov法令検索

※2 出典:e-Gov法令検索「民法(第七百十五条)」民法 | e-Gov法令検索

安全運転管理者選任後は公安委員会に届出が必要

事業所で安全運転管理者を選任した後は、15日以内に事業所を管轄する警察署経由で公安委員会に届出が必要です。

必要書類

安全運転管理者等の選任や変更の届出には以下の書類が必要です。ただし都道府県によっては追加で必要な書類などもあるため、提出前に必ず各都道府県警察のホームページをご確認ください。

  • 安全運転管理者等に関する届出書
  • 戸籍抄本または本籍(外国人の場合国籍等)の記載のある住民票の写し
  • 運転記録証明書(発行から1カ月以内のもので過去3年または5年分)
  • 運転免許証の写し

また、以下に該当する場合、別途居住証明書を作成し提出しなければいけません。書式は任意です。

  • 従業員の住民票住所や免許証住所と、実際の住所が異なる時
  • 従業員の住民票住所と、事業所の住所の都道府県が異なる時

※出典:安全運転管理者 警視庁(tokyo.lg.jp)

届出方法

届出方法は所轄警察署の交通課窓口に直接持参します。令和4年1月4日から電子申請も対応可能となりましたが、郵送やFAXでは受け付けていません。詳しい方法は各都道府県警察のホームページを確認してください。

安全運転管理者の解任や変更時も届出が必要

安全運転管理者は選任時だけでなく、解任や安全運転管理者などに変更があった時も届出が必要です。具体的には以下のとおりです。

  • 安全運転管理者を解任する
  • 安全運転管理者を変更する
  • 本社や事業所の名称が変更になった
  • 事業所住所が変更になった
  • 使用する自動車の台数に増減があった
  • その他、変更が必要な事項が発生した

それぞれ届出様式や必要書類が異なるため、事前に確認し手続きを行いましょう。

安全運転管理者は法定講習の受講も必要

安全運転管理者は年に1回、公安委員会が実施する安全運転管理者等講習の受講が必要です。受講通知書が送られてきたら、日程を確認し、安全運転管理者本人が受講します。代理受講は認められていないため注意しましょう。近年は会場講習の他、オンライン講習の選択も可能です。実施する都道府県により異なることもあるため、前もって確認しましょう。

受講時間や受講手数料

  • 安全運転管理者:4,500円
  • 副安全運転管理者:3,000円

※出典:警視庁「安全運転管理者等法定講習(安全運転管理者等に関するよくある質問)」qa.pdf(tokyo.lg.jp)(PDF)

持参するもの

会場で安全運転管理者等講習を受ける際は、以下のものを持参します。

  • 安全運転管理者等講習受講申出書
  • 身分証明書(運転免許証など)
  • 安全運転管理者手帳
  • 筆記用具
  • 受講手数料

講習終了後は、安全運転管理者手帳に講習修了の証明がされます。

安全運転管理者が未選任だった場合の罰則とリスク

以前は安全運転管理者を選任しなかった場合5万円以下の罰金が、選任しても届出をしなかった場合2万円以下の罰金がそれぞれ課されていました。令和4年の道路交通法改正により、安全運転管理者の選任にかかわる罰金額が引き上げられています。

未選任時は50万円以下の罰金

令和4年10月1日以降、以下に当てはまる場合50万円以下の罰金が科される恐れがあります。

  • 安全運転管理者等が未選任の場合
  • 是正措置命令について従わなかった場合(安全運転管理者等の解任など)

※出典:徳島県警察 安全運転管理者制度について(pref.tokushima.jp)

選任の届出漏れには5万円以下の罰金

道路交通法改正により、選任または解任から15日以内に公安委員会に届出をしなかった場合、5万円以下の罰金が科される恐れがあります。

※出典:徳島県警察 安全運転管理者制度について(pref.tokushima.jp)

安全運転管理者を選任しないリスク

安全運転管理者制度の運用や罰則が強化された背景には、2021年6月、千葉県八街市で発生した八街児童5人死傷事故が挙げられます。同事故では、元運転手の呼気から基準値を超えるアルコールが検出されたこと、事業所は選任要件を満たしているにもかかわらず、安全運転管理者が未選任であったことが問題視されました。
事件後、道路交通法や道路交通法施行規則が改正され、罰則も強化されました。今後、安全管理を怠り同様の事故が発生した場合、世間から事故を起こした企業に向けられる目はより厳しいものとなるでしょう。損害賠償訴訟でも不利になるだけでなく、事業の継続が困難になるほど社会的信用を失うリスクもあります。

「MobilityOne 安全運転管理」で安全運転管理者業務を効率化

安全運転管理者の選任の必要性は、車種や車両台数によっても異なります。安全運転管理者制度の罰則も強化されており、改正法に則った管理方法の導入やシステムの見直しも必要です。なお、システム導入の際は、安全運転管理者が日々の業務を効率的に行えるよう、アルコールチェックや運転日報などの項目を一元管理できるシステムを選ぶのがおすすめです。

パイオニア株式会社の「MobilityOne 安全運転管理」は、アルコールチェックや運転日報などの安全運転管理業務を一元化できるシステムです。ドライバーのアルコールチェックを漏れなく実施・管理する、ドライバーが入力した運転日報を確認する、ドライバーの位置を管理画面で把握するなどをフロー化して実行できることから、安全運転管理の日常業務がスムーズになります。従業員の安全運転の確保と、安全運転管理者の業務負担の軽減を両立したいご担当者様は、ぜひご相談ください。

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