2025年 3月 27日
アルコールチェック義務化
2022年4月1日から、運転前後でのアルコールチェックが必須となりました。さらに2023年12月1日からは、チェック時のアルコール検知器の使用と確認記録の保存も義務付けられています。加えて、安全運転管理者の選任義務違反に対する罰則も、以前は5万円以下の罰金であったのが、2022年10月1日からは50万円以下の罰金に引き上げられています。
これらはすべて、飲酒運転の撲滅が目的です。飲酒運転による事故などの防止と正しいアルコールチェックの実施は、業務で車を使用する企業にとって、健全な経営を続けていくための義務となります。
そこで注意したいのが、検知の際の不正です。 この記事では、過去にあったアルコール検知の不正に関する具体的な事例とその対策、正しいチェックの方法、飲酒運転が発生した場合の影響について解説します。
ドライバーの安全運転に関して、経営者や管理者が徹底した管理体制を敷く必要があることはいうまでもありません。しかし、どれだけ仕組みや体制を整えたとしても、すべての不正を見抜くのは困難です。また、仮にドライバー側の不正だったとしても、そのドライバーを雇用している企業や経営者側に責任が問われます。いずれにせよ、ドライバーの不正のあるなしにかかわらず、飲酒運転が発覚したとなれば事業停止処分となり、経営にも影響が出ます。今後の企業イメージにも大きな打撃となるでしょう。
そういった事態にならないよう、実際にあった不正について知り、事前に対策をしておきましょう。
不正の手法として、まずは身代わりによる不正があげられます。たとえば、1回目のチェックでアルコールが検出されたため、2回目以降のチェックの際、他の運転手に検知器を提出させるパターン。あるいは、管理者が目を離している間に他の運転手が身代わりに測定を行うパターンも過去に存在したと報告があります。特に遠隔での調査の場合や、同時にチェックする対象者が複数人いる時などは注意しなければいけません。アルコールチェック時に管理がしっかり行われていないと、チェック対象者が別の誰かに息を吹き込ませるといった、身代わりによる不正が起こりえます。
対処法としては、直接目の届くところでチェックする方法が考えられます。目を離すことなくチェックできるのであれば身代わりを用意することは難しいはずです。
直接のチェックが難しい場合は、カメラ付きのチェッカーを用いて検知しているところを撮影し身代わりを防止する。あるいは、遠隔でチェックする際も2箇所にカメラを設置する。このような工夫によって、チェック体制を徹底することが大切といえます。
続いて気をつけるべきは、ストローへの細工です。チェックに使う機材に細工を加えて不正を図るもので、これも非常に悪質な手口といえます。具体的には、アルコール検知器に使用するストロー部分に穴をあけてチューブを差し込み、小型ポンプから空気を吹き込んだ事例があります。また、同じように穴をあけて差し込んだチューブから、別のドライバーが横から息を吹き込んだという事例も報告されています。
対処法としては、チェックする前に検知器に不審な点がないか、細工されたあとがないかをしっかり確認するなどの対応が必要です。
最後は、息を吐ききるつもりで吐き、残った息を検知器に吹きかけるという不正の方法です。きちんと検知器に息を吹きかけているようで、実はチェックに引っかからない程度の息しか吹きかけておらず、検知を免れるという悪質なものです。一見すると真面目にチェックに対応しているように見えるため、注意しなければいけません。
対処法としては、安全運転管理者が直接アルコールチェックを行い、対象者に不審な動きがないかも含めチェックすることです。こればかりは目視で確認するほかありません。
いずれの方法も手口は巧妙ですが、事前に不正の可能性を把握しておけば、それに見合った対策が打てるはずなので、管理体制の参考にしましょう。
白ナンバー事業者のアルコールチェック義務化について一から理解したいという方は、『アルコールチェックの義務化の対象者とポイント』をご参照ください。
実は、アルコール以外にも検知器が反応することがあります。普段の生活でも馴染みのある食材や習慣が影響することもありますので、ここでは検知器が反応する可能性のあるものを解説します。「お酒を飲んでいないのにアルコールチェッカーに反応したことがある」というケースについて、その原因も併せて紹介します。
具体的にアルコール検知器に反応する可能性のあるものを見ていきましょう。
身近な食べものが原因で、検知器が反応することがあります。具体的には、キムチや味噌汁、あんパンなど。これらに共通するのは「発酵」食品であることです。キムチや味噌はいうまでもありませんが、パン類も製造に「発酵」の過程があるため、稀に検知器が反応することがあるのです。また、製造過程で微量のアルコールを使っている食品の場合は、それが残存していることも考えられます。
飲みもので見ると、栄養ドリンク、ノンアルコールビール、エナジードリンクなどです。ノンアルコールビールにも微量ながらアルコールが入っているため、チェックで引っかかる可能性があります。
タバコを吸った後、口内に一酸化炭素が残るため、その影響でアルコール検知器に反応が出ることがあります。また、タバコを吸っている人の中には、マウスウォッシュなどのケアアイテムを使用している人もいるでしょう。そういった口腔ケアアイテムも反応が出ることがあります。
しかし、ケアアイテムを使用してから20〜30分ほど時間をあけて、さらにうがいをしてからチェックすれば、正しい結果が出ることがほとんどですので安心してください。
体質や前日のアルコールの摂取にも注意しましょう。体調や持病によって腸からガスが出やすい、あるいは体内から発生するガスから、検知器が反応するケースがあります。また、前日のアルコール摂取についても、アルコールを分解するのには一定の時間が必要です。自分は大丈夫と思っていても、まだアルコールが残っている場合があるので注意しましょう。
最後は、検知する場所です。たとえば、消臭剤や芳香剤、掃除用クリーナーなど、アルコール成分を含む製品を使用した商品がある場所などは、それらが影響して反応してしまうことがあります。
それでは、アルコールチェックの正しい方法について見ていきましょう。
まず、検知器についてですが、国家公安委員会※では「呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告音や警告灯、数値などで示す機能を有する機器」と定められています。呼気中のアルコールの有無や濃度を音や光、数値などで正しく示す機器であれば問題ありません。多くのメーカーがアルコール検知器を販売していますので、検査結果を自動で記録するものやシステムと連携できるものなどを選んでおくと、記録管理も楽に行えます。
記録方法に関しても指定はありません。主には、「検査日時」「検査対象者の氏名」「検査を確認した者の氏名」「検査結果」をチェック項目として作成すればいいでしょう。記録を確認することなどを考えると、手書きベースのアナログ形式よりもデータ形式の方が確認しやすいでしょう。そのため、上記であげたように検知器と連動できるシステムを使用して管理しておけば、よりスムーズです。
測定前には機器に電源が入るか、損傷がないか、正常呼気で異常な反応が出ないか(複数回繰り返しても同じ反応かチェック)などを確認しましょう。チェック対象者には、前述した検知器に反応してしまう飲食物などについてあらかじめ伝えておくこと、さらには、飲酒以外での反応があった場合の対処法をしっかり伝えておくことが大切です。機器自体も、使用頻度によって劣化していくため、定期メンテナンスなどを怠らないようにしましょう。
その他、必ず注意しなければならないのが、新型コロナウイルスなどの感染対策です。チェックには「呼気」を吹きかけなければいけないため、検知器の消毒や人数分のストローなどを用意するなど対策を講じておきましょう。
同様に、感染対策として手指にアルコール消毒をする機会も多くなるでしょう。しかし、そのせいで検知器が正しく反応しないことも考えられるため、直前には消毒しないようにするなども必要です。感染予防を万全にしつつも、正しい数値が検出できるよう工夫するようにしましょう。
万が一、飲酒運転が発生してしまったらどうすればいいのでしょうか。その対応方法を検討する前に、まず飲酒運転には2つの種類があり、それぞれ罰則などが異なることを理解しておく必要があります。ドライバーは当然ですが、雇用する経営者、管理者側もそれぞれの違いについて理解しておきましょう。
飲酒運転は、「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」に分けられます。
基準値 | 違反点数 | 行政処分 | 罰則 | |
---|---|---|---|---|
酒気帯び運転 | 0.15mg以上 0.25mg未満 |
13点 | 免許停止 (90日間) |
3年以下の懲役または50万円以下の罰金 |
0.25mg以上 | 25点 | 免許取り消し (2年間) |
||
酒酔い運転 | - | 35点 | 免許取り消し (3年間) |
5年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
呼気中のアルコール濃度が1リットルあたり0.15mg以上含まれる状態で運転していることを「酒気帯び運転」といい、0.25mg以上含まれていた場合はより処分が重くなります。検閲などで上記の条件に引っかかった場合、0.15mg以上0.25mg未満で違反点数が13点となり、最低でも90日間の免許停止処分となります。0.25mg以上の場合は違反点数が25点となり、免許取り消し処分かつ最低2年の欠格期間という処分です。さらに、刑事罰として3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
一方、検出されるアルコール濃度の数値に関係なく、酒に酔った状態で、運転が困難だと思われるにもかかわらず運転していることを「酒酔い運転」といいます。運動機能や平衡感覚が正常かどうか、あるいは言動などから判断されるため、仮にアルコール濃度が0.15mg未満だったとしても体質によっては酒酔い運転に該当することもあります。酒酔い運転の場合は、違反点数が35点で、免許取り消し処分かつ最低3年の欠格期間という処分となります。さらに、刑事罰として5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
また、運転手が酒気帯び運転・酒酔い運転と判断され、同乗者がそれを把握していた場合、同乗者にも厳しい処罰が科せられます。運転手が酒気帯び運転の場合、同乗者は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。酒酔い運転の場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。このように、飲酒運転は本人だけでなく同乗者など周囲にも影響を及ぼし、その影響は当然ながら所属する会社にも及びます。冒頭でもお伝えしたような業務停止処分だけでなく、企業のイメージ低下による売上減少の可能性も考えられるでしょう。そのような最悪の事態を避けるためにも、日頃からの対策が大切です。
飲酒運転の危険性と、飲酒運転が及ぼす本人だけでなく周囲への影響について啓蒙するにはどうすればいいのか。やはりもっとも抑止力になるのは、アルコールチェックを正しく実施・管理することです。同時に、飲酒運転を起こすとどのような処分がくだされるかについても、日頃から従業員をしっかり教育することが求められます。そのうえで、正しいアルコールチェックを実施できる仕組みをつくり、体制を整えるようにしておくことが重要なのです。
2022年より白ナンバー事業者でも必須となったアルコールチェックは、危険な飲酒運転を撲滅するために必要なものです。飲酒運転の減少は、死傷事故を減らすのはもちろん、運転手の命や人生を守ることにもなり、そして雇用する側の企業のイメージや売上も守ります。そのためには、正しくアルコールチェックを行い、記録もしっかりと管理することが求められます。今回紹介した不正事例のようなアルコールチェックに対するごまかしを発生させないためにも、日頃からのチェック体制や仕組みをしっかり整えておくことが重要です。
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