2025年 3月 24日
アルコールチェック義務化
2022年4月1日から白ナンバー車も安全運転管理者によるアルコールチェックが義務化されました。概要は理解していても、レンタカーを利用して業務に使用した場合はどうなるのか、具体的に把握している人は少ないのではないでしょうか。定期的、あるいは突発的にレンタカーを利用して業務を行うことのある場合には、あらかじめ確認しておきましょう。
前提として、アルコールチェックの義務があるのは、乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保持する企業か、白ナンバー車5台以上を保持する企業のいずれか、または両方に該当する企業です。事業所の詳細な台数算定に関しては後述しますが、まず押さえておきたいのは、アルコールチェック義務があるかどうかは以下のポイントで判断されるということです。
では、業務で使用するレンタカーで利用した車は、事業所の車と算定されるのでしょうか?状況別に詳しく見ていきましょう。
今回は、アルコールチェックの義務化についてレンタカーを利用している場合や、対象になる車など状況別に解説します。業務で車を使用している事業所の方は参考にしてみてください。
結論からお伝えすると、事業所の車と算定するか否かは、レンタカー利用方法によって異なります。ここでは、レンタカーはアルコールチェックの対象になるのか状況別に確認方法などをお伝えします。
レンタカーを借りて社用車として使用する場合について紹介します。 ポイントは業務のために使用するかという点です。つまり、業務のために長期でリースしている車など、反復・継続的に業務で使用する車は、自動車の名義に関係なくレンタカーであっても事業所の車として扱います。レンタカーであっても事業所の車として台数に算定する必要があるということです。
レンタカーはドライバーや事業所の所有車両ではありませんが、業務で使用する場合にはアルコールチェックの義務が発生します。つまり、名義や所有者に関係なく、業務で使用される車両は社用車と見なされます。
また、業務による利用であれば、事業所を経由せず直行直帰でレンタカーを使用する場合でもアルコールチェックの義務が発生します。したがって、出張先であっても、業務目的でレンタカーを利用する際にはアルコールチェックが必要です。
ただ、突発的な業務が発生し、レンタカーやマイカーを業務中に運転する場合もあるかと思います。業務で運転をする場合でも、事業所の管理外のレンタカーやマイカーを一時的に運転する場合は、アルコールチェックは不要です。
つまり、突発的にレンタカーやマイカーを使用するときは例外的にアルコールチェックが不要となっています。 一方、事業所の管理する車両は突発的な運転であってもアルコールチェックの義務はあるので気を付けましょう。突発性があるかないかで判断するのではなく、業務上で使用している車かどうかが判断基準になります。
例を挙げると、1事業所あたり5台以上の自動車を業務に使用している事業所の従業員が、出張先等でレンタカーを運転し業務をする場合、使用車両がレンタカーであっても、アルコールチェックは必要になります。一方で業務に使用せず、個人が所有・管理し、通勤のみに使用している自動車は、台数の算定に含む必要はありません。
基本的には業務で運転をする場合はアルコールチェックを行うという認識を持っておきましょう。業務上突発的にレンタカーを運転することになった場合でも、アルコールチェックをすることで会社・自分自身も安心して運転することができます。
業務でレンタカーや
自家用車を使う場合
アルコールチェックが
必要
直行直帰で
車両を使う場合
アルコールチェックが
必要
突発的にレンタカーや
自家用車を使う場合
アルコールチェックが
不要
※事務所の管理する車両は必要
業務で使用する車の場合、運転者のアルコールの確認方法は対面が原則ですが、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合には、これに準ずる適宜の方法で実施すれば問題ありません。
運転者に携帯型のアルコール検知器を携行させるなどし、カメラ・モニターなどにより運転手の顔色や応答の声を確認しましょう。
補足にはなりますが、アルコールチェックは一連の業務の範囲とし、業務開始時から終了時までとされています。出発地から目的地を経由し出発地に戻るまでを一連の業務の範囲と言うことができます。 配送業務などで出発地から目的地へと配送をし、短時間の休憩のみを挟み出発地に戻る場合は、出発地から目的地を経由し出発地に戻るまでが一連の業務です。
レンタカーについて説明してきましたが、最初に確認するべきは、自分の事業所が安全運転管理者選任事業所にあたるのかという点です。
そもそもアルコールチェック義務化とは、事業所ごとに選任した安全運転管理者の業務になります。一定台数以上の自動車の使用者は、自動車の使用の本拠(事業所)ごとに自動車の安全な運転に必要な業務を行わなければなりません。
該当する事業所は、道路交通法・道路交通法施行規則によって定められた安全運転管理者の選任義務と、アルコールチェックの義務が生じます。
法定で安全運転管理者の選任が必要な事業所は、乗車定員が11人以上の白ナンバー車1台以上を保持する企業・白ナンバー車5台以上を保持する企業のいずれか、または両方に該当する企業です。
白ナンバーは通称であり、車両用途は問わないため黄色ナンバー(軽自動車)も対象になります。また、台数のカウントは1事業所あたりです。
異なる場所の事業所分は合算しません。50ccを超える大型・普通二輪車などのオートバイは0.5台として換算します。たとえば、乗車定員11人以上の車を所持していなくても、白ナンバー車3台とオートバイを4台保持していた場合は、安全運転管理者の選任とアルコールチェックの義務の対象です。
オートバイのみしか所持していない事業者も注意が必要です。オートバイを10台以上業務上で使用する事業所は事実上白ナンバー車を5台以上保持している企業になり、対象になります。
一方で対象にならない例もご紹介します。たとえば本店が県内A市(使用自動車3台)、支店が県内B市(使用自動車2台)本店と支店の合計台数が5台となる企業などです。この場合、自動車の合計台数が5台以上になるため、一見は安全運転管理者の選任が必要になると考えられます。
しかし、台数の算定は本店・支店ごとに行うというルールがあるため、本店・支店ともに法定台数の5台未満であることから専任の必要はないと判断することができます。
あるいは単純に白ナンバー車を4台以下しか所持していない事業所も対象にはなりません。
自分の事業所が対象になるかしっかりと確認し、対象になるのであれば安全運転管理者の選任を行いましょう。
安全運転管理者を新規に選任した場合は「安全運転管理者に関する届出書」に必要な書類を添えて、選任日から15日以内に所在地を管轄する警察署まで提出しなければなりません。
さらに安全運転管理者は年1回、公安委員会が実施する法定講習を受講する必要があります。代理受講はできないので、必ず安全運転管理者の方が受講して下さい。
アルコールチェックの義務を怠ると安全運転管理者の業務違反になります。
直接的な罰則はありませんが、公安委員会によって安全運転管理者を解任される、命令違反に対しての罰則が科せられる可能性があります。
また、安全運転管理者を選任しなかった場合は50万円以下の罰金、安全運転管理者の選任の届け出を怠った場合は5万円以下の罰金または科料などが定められています。
レンタカーを業務に使用するときの注意点などを解説していきます。
業務中にレンタカーを使用する場合には、通常と同様の方法でアルコールチェックを実施する必要があります。検知器は呼気のアルコールを正しく検知できるものを使用しましょう。近年はさまざまなメーカーが検知器を販売していて、使い勝手や価格などが異なります。
また、アルコールチェックのためには検知器に息を吹きかける必要があります。新型コロナウイルス等の感染症予防の観点から次亜塩素酸ナトリウム水で検知器を消毒する、ストロー式・マウスピース式の検知器を運転者の人数分用意するなどの対策を行いましょう。
車を運転するはずだった従業員が感染してしまうと、人手不足になり業務が滞ってしまうことも考えられます。集団感染を予防するという意味でも安全運転管理者の方は、正しい検知器の使い方などを従業員に伝えるなどの対策を練っていきましょう。
必然的に安全運転管理者の負担は大きくなりますが、検知器を携帯していても使用しなければ意味がありません。交通事故が起こってからでは後の祭りです。最初は慣れないかもしれませんが、運転前後のアルコールチェックなどは必須業務の一部にするなど工夫し、対応していきましょう。
アルコールチェックの記録方法についてですが、媒体や書類形式に指定はありません。しかし必ず盛り込むべきチェック内容があります。
一つが検査の日付です。アルコールチェックした日付がないと万が一事故があった場合も、本当に検査をしたのか、あるいはアルコールの有無を確認したのか判断に困ってしまいます。
いつ検査したのかが分かるように日付の項目は必ず設けましょう。また、運転者名、運転前後どちらか、確認者名と確認時間も必須です。さらに確認方法は原則対面ですが、出張等で直行直帰の場合、オンライン通話で確認を取らなければいけないことがあるかもしれません。
対面もしくはオンラインか、確認方法が分かるように項目を設けておくと便利です。アルコールの有無を確認する項目を必ず設け、目視や検知器などでアルコールが有ると判断した場合には運転者を変更するなど徹底した管理を行いましょう。
日付 | 確認者 | 運転者名 | 運転前 | 確認時間 | 確認方法 | アルコール検知器の 使用有無 |
酒気帯び の有無 |
その他 必要な 指示事項 |
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運転車両 | 運転後 | |||||||
月 日 | 運転前 | : | 対面・TEL その他( ) |
有・無 | 有・無 | |||
運転後 | : | 対面・TEL その他( ) |
有・無 | 有・無 |
現在はデータで記録でき、クラウド上で管理できるサービスも多くあるため、そうしたツールの利用も検討してみてください。紙による記録だと紙を紛失してしまったり、事業所内でしか閲覧ができなかったりと問題が生じる可能性があります。アルコールチェックの記録は1年間の保存義務があるため、データで記録を保存するほうが紛失のリスクもなく、管理本部が別の拠点にある場合でもデータを閲覧できるなど振り返りやすいです。データで管理できる運行管理システムの使用を検討してもいいでしょう。
レンタカーを業務で使用する際にもアルコールチェックの義務が生じるケースがあるため、企業の安全運転管理者は適切なチェック体制を整えることが重要です。特に直行直帰や出張時のレンタカー利用では、対面での確認が難しいこともあります。
パイオニアの車両管理システム「MobilityOne 安全運転管理」は、スマートフォンを活用してレンタカー利用時でもアルコールチェックの記録を簡単に管理できます。また、検知結果をクラウドに保存し、一元管理することで、運用負担を軽減しながら法令順守を徹底できます。業務でレンタカーを利用する機会の多い企業は、ぜひ導入をご検討ください。