2024年 11月 8日
安全運転指導
業務中に発生した事故は、どの会社でも、報告書にまとめて提出する必要があるでしょう。いつ、どこで、どのような事故が起きて、どうやって解決したのかなど、経緯と結果を報告します。しかし「事故報告書を書く機会なんて頻繁に起こらないので、書き方がわからない」という人も多いでしょう。まずは人身事故が起こるケースや、事故の責任と対応について確認してから、報告書の書き方を参考にしてみてください。また、再発防止の対策も紹介します。
まずは人身事故が起こるケースから確認していきます。業務中の事故か、業務時間外の事故なのかによって、責任を負う対象が変わるので注意してください。
業務中の事故、つまり、会社が保有している車に乗っていて事故が起きた場合、会社に使用者責任が発生します。さらに、車が会社名義になっているので、会社は運行供用者責任も発生してしまいます。注意点としては、会社だけではなく、事故を起こした従業員本人にも責任が発生してしまう点です。会社がすべて対処してくれるわけではありません。
問題は業務時間外の事故です。業務時間外に会社が保有している車で事故を起こした場合、会社に運行供用者責任が発生します。もっとも、従業員が無断でなおかつ私的に会社の車を使った場合などは、会社の利益につながらない行動と見なされるので、運行供用者責任は発生しません。また、業務時間外での事故であるため、使用者責任が発生しなくなります。使用者責任は業務中に不法行為をしたことが条件になるためです。当然従業員にも責任は発生します。ちなみに通勤中の事故は業務との連続性が認められるので、使用者責任や運行供用者責任が会社に発生します。しかし、通勤ルートを使って帰宅している際は、業務との連続性があるかどうか具体的に判断してから決定されるので、責任が発生しない可能性もあります。
「使用者責任」「運行供用者責任」という言葉は聞いたことがあっても、具体的な内容をイメージしにくい人もいるでしょう。ここでは、使用者責任と運行供用者責任についてわかりやすく解説します。
使用者責任は会社が雇っている従業員が不法行為を起こして相手に損害を与えた際に使用者が本人と連携して責任を負うものです。使用者とは、会社を指します。交通事故は不法行為に該当するため、使用者責任が発生します。業務の執行に関連した場合に、使用者責任が適用されます。例外もあり、使用者が従業員に対して相当の注意をしていた時、相当の注意をしても損害が生ずべきである場合は「この限りではない」と判断されます。
しかし、実際に裁判になると使用者が免責されるケースはほとんどありません。というのも「利益を上げる上でのリスクは会社が負担するべき」だと考えられているためです。また、会社の車を無断で使用した場合は業務には該当しません。しかし、第三者の視点からすると「業務上運転している」と判断されるため、業務に連続性があるとジャッジされます。したがって、会社としては不本意ですが、使用者責任は幅広く認められてしまう場合があるので対策が必要です。
運行供用者責任は、自賠法(自動車損害賠償保障法)に「自己のために自動車を運行の用に供する者」と表現されています。わかりにくいですが「自動車の運行を支配して利益を得ている者」と解釈しましょう。会社としては、自動車を「支配」して「利益を得ている」ので、運行供用者責任に該当します。使用者責任と似ていますが、運行供用者責任は「人」に関するものです。人身事故によって人の身体や命が傷ついた場合に適用される責任であるため、物損の場合は適用されません。物損の場合は使用者責任になります。
ちなみに「自己と運転者が自動車の運行に関して注意をしていた」「被害者か運転者以外の第三者に過失があった」「自動車の構造に欠陥、機能の障害がなかった」の3つを立証できれば、人身事故であっても運行供用者責任が免罪になる可能性があります。しかし、3つを立証するのは非常に困難であり、無過失責任に近いと考えられています。
会社と連携して責任を負うといいましたが、双方が100%の責任を負うという意味です。つまり、会社と従業員で100%ずつ責任を負います。さらに、被害者は会社と従業員の両方に全額の支払い請求が可能で、会社と従業員の負担割合については話し合いで決定します。
事故が発生した場合、まずは車を停車させて降車し、被害者の救護を行います。応急処置ができたらすぐに救急車を呼んで、被害者を助けましょう。次に、事故現場であることを他のドライバーに知らせなくてはならないので、三角掲示板を置いて後続車に注意喚起をします。事故が発生した場合、警察に連絡しなければならないので警察も呼びましょう。
警察への連絡が終わったら、会社に連絡して報告をします。会社と今後の対応について相談しなければなりませんし、報告書を書くにしてもまずは口頭で事故が発生した旨を伝えるのが優先です。
社会人になるとさまざまな報告書を提出しなければなりません。事故の報告書も1つであり、事故を起こした場合に書かなければならない書類です。報告書は順序だてて、対応を記載していきます。
事故の報告書は「どんな事故が起きたのか」を伝える役割があります。時系列に沿って書いていく必要があるので、個人的な意見を加えてはなりません。また、事故の再発防止につなげる必要もあります。原因と発生状況、実際の被害状況、対応策は最低でも必要です。
事故の内容を記述します。どこでどのような事故が起きたのかを書きましょう。そして、事故が起きた原因についても記述しなければなりません。しかし、記述するのは明確な原因だけにしましょう。というのも、事故の内容によっては原因が複数存在する場合もあるためです。その他の要素については「調査中」と記述しておきましょう。
次に被害状況を報告します。ケガ人が出たのか、車以外の物損はあったかなど被害の状況を詳しく書きます。損害に関する正確な金額がわかれば、被害状況に記載しましょう。治療費も被害状況に含んでしまってOKです。
対応策とは、どうやって事故を解決させたのかを記述します。とはいえ、事故が起きてすぐの場合だと解決策がないケースもあるので、場合によっては状況だけを記載しておく必要があります。「相手は現在治療中」などと記載しましょう。また、再発防止策についても記述しておかなければなりません。今後同じような事故を再発させないために必要です。
しかし「運転中は常に安全運転を心がける」といった、対策をとっているようで行動を起こしていない内容であれば、上辺だけの対策だと思われてしまう恐れもあります。車のメンテナンスや設備の見直しなど、具体的な対策を記載してください。
最後に事故の反省点を記述します。「時間に遅れそうで、焦ってしまった」などの記載で問題ありません。
報告書を書く時のポイントや注意点を紹介します。
まず報告書ですが、基本的には手書きで書くようにしましょう。しかし、たとえば事故が発生した状況などを説明するために図を作る場合などはパソコンを使う場合もあります。本文は手書きするのが正式な報告書となります。会社によってはパソコンで報告書を作成してもよい場合がありますが、パソコンで作成する場合でも氏名の部分は手書きで書くように空白にしておきましょう。
報告書には時系列に沿って事実を記述しましょう。個人的な意見や私情を挟まず、責任転換やいいわけを彷彿とさせる表現は避けるべきです。報告書は「どのような事故が起きたのか」を伝えるのが目的なので、内容によっては懲罰の対象となる内容でも記載しなくてはなりません。正確に記載すれば事故防止にもつなげられます。
また、時系列に沿って事実を記載する際は、箇条書きでまとめるようにしてください。時系列に沿って書かないと、第三者が根本的な原因を推測できませんし、事故が起こった原因を理解できないためです。箇条書きにすると読みやすく、時系列ごとに反省点が見つけられるので、原因と反省もわかりやすくなります。
事故が起きた後、報告書を書く時点では原因が不確かな場合もあります。原因不明の場合は推測で記載せずに「調査中」と書いておきましょう。報告書はありのままの事実を記載しなければならないので、原因が不確かな点は書かないようにしてください。
事故を起こしてしまうとパニックになってしまうので、事故の状況を思い出せない場合があります。ドライブレコーダーがあれば簡単に思い出せますが、設置していない場合は映像が確認できません。しかし、同乗者や目撃者から話を聞くことができれば、自分では気付かなかった新しい要素を発見できるかもしれないので、話を聞いてみるのも対処法の1つです。
また、事故現場周辺にあるコンビニなどの防犯カメラでは、映像が残っている可能性があります。コンビニに交渉して、防犯カメラの映像を見せてもらえるかどうか交渉してみてください。万が一断られてしまった場合でも、弁護士や保険会社を通せば見せてくれるかもしれません。防犯カメラの映像を確かめられれば、新しい事実を発見できるかもしれないので、試してみてください。
事故の再発を防止するための対策を紹介します。
社内で交通安全研修を開催してみましょう。自動車学校は企業向けの交通安全講習を行っているので、車の運転をしなければならない従業員に受けてもらってみてください。また、社内で運転適性検査を行えば、運転に向いている人と不向きな人の判断ができるので、運転に向かない従業員には運転以外の仕事をしてもらうなどの対策ができます。さらに、無事故無違反の実績を積み上げた従業員には表彰をするなどの制度を導入すれば、運転スキルの向上とともに、従業員のモチベーションアップも期待できます。事故が起きてからでは遅いので、時間がある時に交通安全研修を開催してみてください。
最新のカーナビは、単なる地図案内だけではありません。交通事故を抑制するためのさまざまな機能が追加されており、事故を防ぐツールとして有効です。
例えばパイオニアの法人向けカーナビアプリ「COCCHi 法人契約」では、助手席目線の丁寧な音声案内に加え、交差点や分岐点などの迷いやすい場所は拡大図で分かりやすく表示します。 また、車の大きさに合わせて規制を考慮し、通行が困難なルートを予め回避してルート探索をします。 また、オプション機能でゼンリン住宅地図をナビ画面にシームレスに表示し、建物名称や住宅の表札情報、番地などを詳細に表示するので、目的地を正確に把握したい業種の方々にも最適です。
パイオニアの法人向けカーナビアプリ「COCCHi 法人契約」
最近は車載ナビだけでなく、iOSやAndroidアプリで作られたカーナビも増え、ますます便利になっています。交通事故のリスクを減らすために、会社全体で最新のカーナビ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
業務中の事故は日常的に発生するものではありませんから、事故後の対応に悩んでしまっても仕方ありません。しかし、あらかじめ事故後の対応を知っておくと、後から落ち着いて対処ができるようになります。事故が発生すると慌ててしまうこともあるかもしれませんが、まずは落ち着き、会社への報告と報告書の作成方法を忘れないようにして、仕事を行いましょう。