会計帳簿、取引証憑、税務関連書類、人事関連書類など保存が義務化されている「法定保存文書」や後世に残すべき貴重なデータなどの保存にBDドライブが使われています。
クラウドサービスやHDDなど多様なツールがあるにもかかわらずBDドライブを使って保存するのには、「データの消失」、「サイバー攻撃」、「情報漏えい」、「データの改ざん」というリスクを回避する狙いがありました。リスクヘッジを重要とするその道のスペシャリストにBDドライブを選ぶ理由を聞いてみました。
会計帳簿、取引証憑、税務関連書類、人事関連書類など保存が義務化されている「法定保存文書」や図書館、博物館をはじめ教育機関、医療・製薬業界、放送・スタジオ業界などの後世に残すべき貴重なデータなどの保存にBDドライブが使われています。
クラウドなどのオンラインサービスと違い、光ディスクはオフライン保管が可能な媒体であるため、サイバー攻撃等の被害を受ける事がありません。そのため、重要情報の漏洩リスク回避が可能です。
追記型のディスクにデータを記録する事でデータの書換え(上書き)が物理的に不可能になります。作業ミスによる上書きや悪意による改ざんのリスク回避が可能です。
HDDやSSDのデータ保存寿命は3年~10年と言われていますが、長期保存用の光ディスクは、100年以上の長期保存が可能です。また、オフラインでディスクのみを可搬可能なので、メカ機構の故障によるデータ消失のリスク回避が可能です。
CASE 1
九州国立博物館 文化財課 写真技師
落合 晴彦
九州国立博物館は国立文化財機構に属し、東京、奈良、京都に次ぐ4番目の国立博物館として、福岡県の太宰府の地に開館しました。
絵画・彫刻・工芸作品や、古文書・考古資料などの収集と調査、展示を行いながら、現在の姿形を後世に伝えていく使命があります。その中で私は作品・資料それぞれの「質感」や「色」を正確に後世に伝えるべく、高精細のデジタルカメラや発色の良い照明機材を使用して撮影(記録)を行っています。撮影された写真データは実物と遜色なく見える様画像処理を行い、後の研究や教育資料として活用しやすいデータ形式や、長期的に安定した保存方法を模索しています。
(データの保存管理において)最も避けたいのはデータの消失です。ボーンデジタルとも言われるように情報(データ)が作られた時から、もうデジタルデータなんですよね。昔だと元データが紙媒体だったりするのですが、今はパソコン上でデータを作っているので、デジタルが元データとなることが多いです。そうすると、データが破損したり、読み書きができなくなったりすると、情報を辿ることができなくなり、その時の記録が全て消えることになるので一番避けたいです。
過去に自分のパソコンが壊れたこともありますし、カメラのメモリーカードが壊れて、画像データがとり出せず、その日の撮影が無駄になった事もあります。ですので、デジタル機器は「完全なものではない」と割り切って使うようにしています。特にデータは目に見えないものですので、何が起こったのかがわからない。データの破損・消失が発生する前提で、予備的な措置を講じておくことが重要だと考えています。
ハードディスクは容量や速度の点で、データ処理や短期的なデータ保管には優れていますが、回転機構や記録方式などを考えると長期保存には適さないと考えています。つまり本体内部のモーターが壊れたり、強い磁気を受けるとデータにアクセスすることができなくなってしまいます。光ディスクは容量や速度こそハードディスクに及びませんが、レーザーによるデータの焼き付け記録、取り扱いの容易さ、システム全体の実績・安定性を考慮すると長期保存には有利なものと思います。ポイントとしては、記録装置と記憶媒体が別であること(ドライブが壊れても機械の調達が容易)、蓄積されたノウハウが豊富であること(もしもの際にデータを救い出せる可能性が高い)などです。
データを改変されるのも困ります。サーバ等にデータを入れておいた場合、誰かが操作したタイミング(ファイルを開いたとか、移動させた)で破損してデータが開かなくなったり、内容を書き換えられたりなどのリスクがあります。パソコンのスキルって人によってバラバラなので意図しない改変なども結構多いです。長期保存の必要はなくても書き換えられては困る重要なデータは、光ディスクに保存しておくことで改変のリスクはかなり少なくなると思います。
CASE 2
IDEMA JAPAN(日本HDD協会) 事務局長
釘屋 文雄
IDEMA JAPANは、もともとハードディスク業界を盛り上げるための団体です。ハードディスクに関連するサプライヤーやユーザーも含めて活動を行っております。昨年からハードディスクだけではなく、光ディスクや磁気テープ、それから半導体メモリもカバーするような団体に生まれ変わりました。私は1974年から15年間日立製作所の中央研究所で、磁気ディスクの研究開発を行っておりました。その後光ディスクの部署などを経て、データセンター向けのハードディスクの開発を行った後、2003年から4年間はアメリカのシリコンバレーに行ってデータセンター向けのハードディスクの開発を行っていました。
データセンターで使用されるハードディスクは回転し続けるので、長くても7年、普通は5年でリプレースしています。ビットコスト(1ビットあたりのコスト)を考えたり、アーカイブ性能を考えると、磁気テープや光ディスクとの併用も考えられると思います。
光ディスクはテープに比べれば非常にデータへのアクセススピードは速いですし、データの保存期間も100年以上と言われています。100年と言わず50年でもいいわけです。ハードディスクは7年なので50年というのはとても優れた性能だと思います。なので、光ディスクは「デジタルトランスフォーメーション」に向いていると思います。光ディスクの中には文書を改ざんできないよう保証している商品もあります。それは差別化するポイントですね。文書の改ざんを防ぎ、保存データへのアクセススピードもそこそこ持っているのは光ディスクしかありません。
ハードディスクというのは、水の中に浸かると動かなくなります。そういう耐食性という意味では問題があります。その点、光ディスクの耐食性は非常に強いです。万が一のアクシデントがあってもリカバリできるわけです。実際、震災が起きた際に光ディスクのデータは問題なく救えたということがありました。滅多に起こらないことではありますが、光ディスクのデータ保存に対する卓抜した能力が証明されたとは思います。
クラウドにアップロードしておけば、手元にデータを置いておかなくても大丈夫という意見がありますが、それは幻想だと思います。例えばクラウドを導入した際、データをクラウドに保存するのは容易でが、クラウドに保存したデータを手元に戻すにはひと手間必要だったり、追加費用の発生があったりしてユーザーが不安を抱える事もあります。ハードディスクの寿命やサイバーアタック対策、ディザスターリカバリーもクラウドサービスにお金をかければ、幾らでもリスクは回避できます。しかし、日本は中小企業がほとんどです、そんな余裕がない人がほとんどなわけですよ。そうすると自分のデータは自分で保存して管理できるというのは非常に原始的だけども非常に安心できると思います。。
CASE 3
株式会社 デジサイン 代表取締役社長
馬場 和幸
弊社は2010年に設立した会社です。主な業務は、大手企業様からのシステムの 受託開発やシステムの保守運営を行っております。2022年から企業のDX の支援や事業戦略、経営戦略の立案からサポートを行うコンサルティングも始め、お客様を上流からサポートしています。その影響から大手企業様だけではなく中小企業様とも繋がりが広がっており、その中でデータの安全性(ランサムウェア対策)や効率性について相談を受ける事が増えてきました。
デジタルデータの重要性を理解している人と理解していない人の格差が広がっている印象です。例えば、デジタルで作成したファイルを紙に印刷してそれに何か手書きで書いて、もう一回スキャンをして保管している会社があります。最初に作ったデジタルデータを保管すれば良いのですが、かえって手間がかかっていることがあります。今話題になっている電帳法(電子帳簿保存法)は電子取引でそのデジタルデータをちゃんと保管しましょうということです。これまで、社内規定や文書管理の規定というのは基本「紙」前提で作られていました。「10年間保管してください」というルールがあった場合、媒体は記載がないけど基本的に「紙」で保管するという考え方でした。電帳法(電子帳簿保存法)では紙はもう取っておかなくていいということになります。重要なのはデジタルデータになります。
一般的に皆さんが使われてるクラウドサービスには追加料金を支払わなければバックアップ機能がなかったりします。「バックアップがなくてもバージョン管理機能があるから大丈夫」と思われがちですが、バージョン管理機能があっても間違えて消去してしまう可能性があります。消去出来てしまう時点で記録には向いていないと思います。記録というのはきちんと管理できてこそ意味があります。クラウドサービスでも特定のフォルダを絶対消さないという設定ができるオプションがあったりしますが、そのオプション費用は高いです。通常プランの2倍から3倍くらいします。中小企業や個人事業主では良いと分かっていても(費用が高くて)なかなか使えない印象です。
データの保管をどこまで完璧にやるのか?という話ですが、ランニング費用を抑えて、かつ10年から30年の記録の保管を実現する事を考えると、光ディスクが向いていると思います。インターネットに繋げなくてもノートパソコンとBDドライブがあれば世界中のどこでも保存、閲覧することが可能です。サーバのように大量の電源も必要ないですし、データの保管においてもコンピュータ室のような厳しい条件も必要ではありません。地震などの災害があった際のBCP(Business Continuity Plan:危機的状況下に置かれた場合でも、重要な業務が継続できる方策を用意しておくこと)の観点でも、保存、閲覧が容易に出来る事も光ディスクの長所と考えています。
日本においては「記録」と「一時保存」の違いを理解されていない方が大多数です。アメリカでは、記録というのは絶対に変えちゃいけないものと定義されています。データ管理上でもフォルダを「記録用」と「一時保存用」に分けて、「記録用」のフォルダは、絶対に消去させない、訂正させないというルールで運用を行っています。また、HDDの寿命は約5年と言われています。基本的にHDDはデータを上書きや削除が可能なため、一保存メディアとして使用するには便利だと思います。しかし、記録メディアとして使用するのは非常に難しい印象です。今回の電子帳簿保存法の改正は、日本で「記録」というものを認識する大きなきっかけになると思います。これで多くの人が「記録」と「一時保存」の区別を理解し、安全でリーズナブルな「記録」が推進されれば嬉しく思います。
CASE 4
日本女子大学 成瀬記念館 学芸員
杉崎 友美
日本女子大学 成瀬記念館は、創立者「成瀬仁蔵」の教学の理念と学園の歴史を明らかにし、広く女子教育の進展に寄与することを願って設立されました。展示室では年3回ほどの展示を行い、主に学園史を中心にした資料を紹介しています。私は、展示の企画と展示資料などの保存管理を担当しています。成瀬仁蔵に関する書簡や日記、1901年からの学園や学生の写真(ガラス乾板等)やフィルム、卒業生の残したノートや卒業論文などを保存しております。それらをデータスキャンし外付けハードディスクと光ディスクにダブルバックアップを行っています。
毎年学園の行事(入学式や卒業式)の写真を自分たちで撮影し、CD-Rに保存しておりました。ある日、そのCD-Rのデータが読み出せないという問題が発生しました。データがそのCD-Rにしか保存されていなかった為、その年の学園の写真を記録したデータを失うことになりました。その時に、いろいろを調査し長期保存用の光ディスクがある事を知り導入しました。導入してからは、上司が「データ消失の心配がないので、枕を高くして眠れるね」と話していました。
クラウドサービスはデータが手元にないので心配という声が館内で多くありました。以前の仕事では、資料管理のデータベースに関わる仕事をしていたことがありましたが、一緒に仕事をしていたシステム会社が廃業してしまったという話を聞いたことがあります。そういう不安もあったので、クラウドサービスの導入は見送りました。今は外付けハードディスクと長期保存用の光ディスクの両方でバックアップしています。業者さんに写真をお願いした際、外付けハードディスクで納品されるので、それをそのまま1個予備を作って、更に光ディスクにバックアップを行い資料と一緒に収蔵庫に入れ触らないものとしています。
最も避けたいリスクは現物の紛失やデータが破損することです。その次に再生機器がなくなるリスクも避けたいです。テープやフィルムのように、規格が変わるたびに変換・修復を繰返す必要があるメディアは、将来の再生環境確保の点がとても心配です。
長期保存用光ディスクを導入して、データはほぼ安全だろうっていう安心感があります。これまでは各スタッフが、心配を理由に、複数の外付けハードディスクにデータを保存していました。光ディスクはオフラインで省スペース保管が可能な事も重要で嬉しいことです。
CASE 5
公益財団法人 石川県埋蔵文化財センター
調査部 特定事業調査グループ
和田 龍介
石川県埋蔵文化財センターは、石川県が行う発掘調査や発掘調査で得られた記録・出土品の保存、発掘調査記録・出土品の活用を行う施設です。 発掘調査の中で撮影された写真(画像データ)や出土品の測量結果などの記録を後世に確実に残す為に、長期保存用BDドライブとディスクを導入しております。
データを保管するメディアを選択するに当たって、いろいろなメディアを検討しました。その中で光ディスクを選択した理由は、次の二つです。一つ目は、光ディスクはテープ類等の他メディアに比べて絶対的な容量は少ないが、保存に関するトラブルが少なく非常に安定しています。二つ目は、一定の湿度気温をクリアすれば、データ保管が容易である点です。
光ディスクの再生ドライブは既にかなり普及しています。現在所有している長期保存用の記録再生ドライブが装置が万が一故障してしまっても他の再生ドライブを使ってデータを生み出せるというのは非常に大きなメリットだと思っております。リカバリーできる環境が入手しやすいことがとても重要なポイントと考えます。