 |
 |
 |
 |
▲友野瑞基 |
|
 |
友野 デザインのコンセプトづくりは、まずカロッツェリアの、そしてサイバーナビのDNAの分析・抽出から始まりました。大きく「遺伝子1」と「遺伝子2」の2つに分類しました。「遺伝子1」は“普遍的な高品位感”です。これはサイバーナビが、フラッグシップモデルとして持っているステイタス性とか、揺るぎない自信といったところから来る要素ですね。もうひとつ「遺伝子2」としたのが“高度な先進性”です。先進性は、例えば想像を超えるとか、革新、超越、未知といったニュアンスから来ています。
次に、この「遺伝子1」「遺伝子2」を総括し、時代性を反映させるのですが、そこで生まれたコンセプトキーワードが、“官能領域”という言葉です。サイバーナビが誕生した頃は、ロボット的で無機質なイメージこそが、時代の流れにふさわしいものでした。けれど現在では、初代サイバーナビの時のような無機質なイメージは合わなくなってきています。そこで取り上げたがこの“官能”というキーワードです。官能といってもエロティックという直接的な意味だけではなくて、五感に訴えかけるようなところ、新鮮で引きつけられる印象とか、感性的でしなやかなイメージへ踏み込むという意味で使っています。
|
|
 |
友野 例えば質感ですね。目や指先に伝わる心地よい感触。しっとり・つやつや・ざらざらといった触覚に訴えるもの。光でいうなら、ただピカピカ単調に光るのではなく、表情を持った、ぼわぁっと訴えてくるような有機的な光です。造形でいうと、単にスパスパッと切ったものじゃなくて、もっとしなやかで、のびやかなラインといったものを取り入れました。操作性においても、ただ、使いやすい、わかりやすいだけじゃない、使い手を誘い込むような魅力を持たせています。
(「AVIC-VH009」を示しながら)本体の操作ボタンが並んでいるここの面、右端から始まったミラーアクリルの隆起したラインが左に行くにしたがってとけ込むようにフラットになっています。そのあたりも見た目にとても官能的ですし、実は機能的な面にも配慮しているんです。操作ボタンそのものは、指先に吸い付くようなアールで凹んだ形状をしています。ただ、本体すべてをアール形状にしてしまうと反射光で表示部の視認性を損ねてしまう。機能性も配慮してたどり着いたデザインです。 |
|
 |
 |
 |
▲AVIC-XH009モニター部 |
|
 |
友野 クロスキーやその他の小さなボタンなども、指に吸い付く凹型や、吸盤状にしました。あと、「AVIC-XH009」のオンダッシュモニターのボタンとその周囲には逆アールのカーブを採用しました。今までのカロッツェリアでは、あまり取り入れなかったデザインです。視覚のみに頼らずに、触覚も活用して操作性をあげたいと考えたからです。
例えばちょっと前のSF映画っていわゆる無機的なロボットらしいロボットが出てきたじゃないですか。でも最近のものはヒューマノイドとかアンドロイドとかどんどん人間の感覚に歩み寄る形で進化していますよね。デザインもそれと同様の考え方で、人の感覚により近いところへ進化しています。
|
|
 |
友野 “大人っぽさ” を表現したかったのです。例えばハーフミラーアクリル。それと、この濡れたように光る艶のある黒い質感が「ピアノ調仕上げ」です。これにはこだわりがあり、いろいろな方面に無理をいってやっと実現しました。それと、素材から伝わる官能にもこだわりました。本物のアルミのパネルを用いることで、触ったときに指先にヒヤッとくる感触も大切にしたかったのです。サイバーナビを買われるお客さまにとっての官能というのは、やはり高品質とか本物感といったものも含めて実現されると思っています。ですからなるべく本物の素材が見えるよう心がけています。
ピアノ調の黒はプラズマディスプレイなどにも用いられています。パイオニアのデザインのアイデンティティという意味でもピアノ調の黒を採用した意味は大きいと思います。
|
 |
 |
 |
▲AVIC-VH009 |
|
|
 |
友野 造形は使う方にとって意味のあるものでないといけません。ですからまず最初に“官能領域”というコンセプトをインターフェースのデザインチームと共有して、そこからスタートしました。インターフェースの面においても、感性的なものが求められるようになっていますから。 |
|
 |
友野 いいえ、特にはありません。もちろんある程度ツヤがあって高級感のあるインテリアには合うと思います。けれど、どんなタイプのインテリアでも、サイバーナビが核となってクルマ全体の存在が光るようになればと思っています。インテリアにマッチするということは、何もクルマの内装に溶け込ませることではなく、置かれた場所で違和感なく主張することだと思いますので。これは、カロッツェリアの商品を考えるうえでは非常に重要なところです。インテリアにとけ込むデザインを目指すことは、その商品の魅力を半減することになってしまいそうで…。サイバーナビがクルマに存在することで、相乗的にインテリア自体が力強くなることを狙ってデザインしているんです。 |
|
 |
|