ご存じですか?
事故を減らしましょう
警察署で把握されている事故情報や公益財団法人交通事故総合分析センター(ITARDA)で集約された交通事故データを入手・分析されるのが一般的ではないでしょうか?
事故のデータは発生頻度が多くないため因果関係を読み解くのは難しいと言われます。そこで件数を増やすために複数年のデータを地図上で見てみますと、毎年移動しているように見えてきます。対策の効果で事故が減ることが期待されますが、別の場所では増えているということは、効果測定が難しいということになりますよね?
一方、急減速多発地点は事故に比べて発生頻度が高く、事故との相関も強いと言われています。
参考:プローブデータによる交通事故多発危険交差点の抽出可能性に関する分析
そして複数年の急減速多発地点データを地図上で見ると事故データのように移動しない傾向が見られます。つまり潜在的に事故の前兆となる地点を捉えることができそうです。この特性を活用することで道路環境に対する有効な事故対策、更に効果測定が可能になると考えられます。効果的な道路環境の改良が提案できるのではないでしょうか?
図1は横浜市の泉交通安全協会さんから毎年の事故の変化を調べられた時の資料からの抜粋です。泉交通安全協会さんは泉警察署から毎週事故情報を入手し、地図上に登録した上で区民向けに注意喚起のメール(ココ事故情報)を送信された際の登録情報を蓄積されています。事故の総数は毎年微減傾向とのことです。図1を見る限り明らかに毎年移動しているように見えます。
地元に詳しい泉交通安全協会の櫻井事務長にお伺いすると「平成25年には行列ができる人気のセルフガソリンスタンドが開設され、事故も増えるようになった」とのこと。その他の地点でも「大規模な道路工事が続いていた」「マンションの建築工事が行われていた」「最近、交通量が急に増えた」など交通に影響を与える事象が地点ごとにあったことを知ることができます。しかし、そのような事象は日常茶飯事にあちこちで起こっています。
協力:NPO法人 BigMap 泉交通安全協会 泉警察署より、事故情報を得て泉交通安全協会で入力
事故統計データの分析結果から、1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故が存在し、300件の事故には至らなかった危険な状態=ヒヤリハットな事象があったとされるものです。
この29は何故キリの良い30ではないのでしょうか?30件の事故のどれもが重大な事故になってもおかしくない、たまたま1件が重大事故になっただけという意味が込められているという説があります。つまり、潜在的な危険(リスク)に偶然に何らかの要因が加わった時に大きな事故になるということです。偶然を追いかけて対策することは極めて難しいことは誰が考えても明らかです。もちろん対策した効果を測ることも難しいわけです。
道路工事は道路環境の改善を目指して行われる事業ですし、マンション建設工事も住環境を改善する目的で実施される継続的な事業です。工事中のみならず工事完了後には交通状況へ大きな影響を与えます。もちろん、地域行政や住民の努力によって実施された交通事故対策によっても交通状況に変化が起こります。
この交通状況の変化をいち早く捉えて対策を取ることは難しく、一方で実際に事故が起こるのを待つのも得策ではありません。
図2は図1と同じ場所の急減速地点データを地図上にプロットした図です。見ていただくと明らかなように、セルフガソリンスタンドが開設される前から急減速事象が発生していたことが分かります。潜在的に急減速せざるを得ない状況がある場所に、たまたま行列のできるガソリンスタンドができたことによって、事故が顕在化した可能性を示しています。
この急減速事象を減らすことができれば、事故も減ることが期待できます。
そして重要なことはこの急減速事象は計測することが可能ということです。対策後に急減速事象の増減が確認できます。
このように正に、事故との相関のある急減速事象を捉えることが交通事故対策には効果的なはずです。
急減速多発地点データ(点群)© OpenStreetMap contributors, CC-BY-SA
急減速多発地点データ(点群) | ||
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概要 | 道路種別や発生日時等を付与した0.3G以上の 個別の急減速発生緯度・経度を収録。 |
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ファイル形式 | csvファイル | |
備考 | 本データの急減速度は加速度センサーから得られる瞬間的な減速度ではなく、 短時間で大きく速度低下した車両行動を示す平均的な急減速度となります。 |