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2013年6月29日

本日の一句

全軍へ告ぐドイツ降伏を夏

ぜんぐんへつぐどいつこうふくをなつ

すずめ

六月七分咲き

夏井いつき選

第二次世界大戦でしょうか。このような打電が世界中の空を飛び交った「夏」があったに違いありません。「全軍へ告ぐ」の終止形で切れ、「ドイツ降伏を」で微妙な意味上の句切れがあり、最後の「夏」という季語へ繋がる…特殊な型の成否は意見が大きく分かれるところだと思いますが、この「夏」の記憶がありありと再生された捨てがたい一句です。

本日の入選作

■「空爆の打電短夜の地下室/金子どうだ」←レジスタンス運動の本拠でしょうか。【いよいよ爆撃機が近づく。この街も終りか】というコメントが映画の一幕のようでもあります。「短夜」という季語が緊迫の場面に迫力を加えます。

■「蠅生る無電きびきび打ちをれば/みなと」←「今月の音」から「無電」を連想するところまでは分かるのですが、そこから「蠅生まる」という季語を見つけ出してきたことに驚きます。【今月の音を無電を打つ音に聞こえました。組合長さんが口に出す言葉を熱心にタイピング、航海の船に打電しています。生まれたばかりの蠅もきびきび元気です】と語るみなとさんです。

■「ジェロニモに襲われた朝の銀蝿/鍵まだ有効」←同じ「蝿」ではありますが、「ジェロニモ」という名前が入るだけで、光景がガラリと変わります。私は、この名からアメリカインディアンを思い浮かべましたので、「朝の銀蝿」という季語の向こうに血生臭い凶行を想像しました。「ジェロニモ」が現れた知らせは、やはり無電で知らされたのでしょうか。

  
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