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審査について
課題CD
| オーディオクラス共通 | ピュアデジタルシステムクラス | デジアナシステムクラス |

オーディオクラス共通CD
all this time
パイオニア選定

スティング
『all this time』
(UICA-2002)より1曲目
「FRAGILE」最初の約3分

選曲理由

私は、Policeの頃からStingが好きなのですが、彼も50歳を越えてメロウになったものです。
このアルバムはDVDも出ており、CDとの音造りの差や楽器配置も容易に確認できるので選びました。
トスカーナの自宅でのライブですが、エスニックなインストゥルメンツも多く使われており、バンドも上手い。
Stingが、珍しくロー・テンションなのは理由があるのです。アルバムの説明によれば、2001年9月2日の設営、リハーサルからやっとライブ時刻直前のその時、あの911テロが勃発し、彼はTVでリアルタイム映像を見てしまったのだそうです。打ちひしがれた気持ちを何とか堪えて、やっとの事で歌い始めたのが、このFRAGILEです。


再生のポイント(音質面で)

まずはスペクトル・バランスを丁寧に整えて下さい。ベースがややボンつき気味なのはいたし方ないですが、中域以上のレンジでは誇張感の無いスムーズなサウンドを目指して下さい。
センターボーカルは、やや接近感が有りますがステージ中央で、少し高い位置に安定するはずです。
ソース自体のステージ感が、さほど奥行きを出しておらず、各インストゥルメンツどうしも接近しています。
しかし、左右の拡がり感や分離はしっかり出ていますので、距離感よりもむしろraw(かぶりつき)なイメージを出して欲しいところです。かと言っても、うるさかったり、逆位相感や耳へのまとわり付くような定位感は最も嫌われますので、慎重なアプローチをお願いします。


目標とする聞こえ方(音楽性の面で)

音楽が染み出るような前奏から、凛としたギターが魅力的です。
Stingも、ほとんど泣き出しそうですが、自然な枯れたヴォイスが訴えかけるようです。
左右の各インストゥルメンツも分離が良く、全てがステージ上に安定して定位します。
センターヴォーカルの音像はややボケ気味ですが、中央で安定しています。
マクブライドのベースはアコースティックなのですが、ややブーミー的に仕上げてあります。
現場のステージは、そう広くは無いですが一応野外ライブです。鳴り感が、何となく天井の低い穴蔵舞台風ですが、これはDVDを観るとステージ脇のワイン倉庫からの低次反射音が多いためだと解ります。
今回のCDは日本プレス盤ですが、私が持っているドイツプレスよりも伸びの有るサウンドで、外盤よりも日本盤のほうが音が良いというのは、ちょっと珍しい一例です。

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ピュアデジタルシステムクラス
SCHEHERAZADE
麻倉 怜士先生選定

リムスキー・コルサコフ
『SCHEHERAZADE』
(UCCP-1060)より4曲目
「バクダッドの祭り」1分〜4分

選曲理由

音楽再生とは、単にオーディオ面だけの問題ではない。いくら音質が良くても、そこに感動がなければナンセンスだ。このCDを選んだのは、ワレリー・ゲルギエフという当代随一の人気指揮者がつくる音楽の魅力、そのスケール、その音楽性を、カーオーディオにおいて再現し、聴くものに感動を与えるかという、音のプロフェッショナルにとって、格好のチャレンジテーマであるからだ。


再生のポイント(音質面で)

この部分は、ダイナミックレンジがひじょうに広大だ。装置の音楽的な容積が大きくないと、感動的な再現はできない。しなやかに弾ける雄大な低域と、それに乗って疾走する高弦のパッセージとの対比の鮮烈さという音楽のドラマをどう再現するか。オーディオ的には、 歪み感の少なさ、立ち上がりの瞬発力、スピード感、そして音色の華麗さの表現がポイントになる。


目標とする聞こえ方(音楽性の面で)

この「シェエラザード」だけでなく、彼の他のCDも聴き、ワレリー・ゲルギエフの音楽性を確認して欲しい。ゲルギエフの凄さは、誰もが知っている名曲を、誰も体験したこともないような巨大な音楽に仕立てる技にある。「悲愴」「運命」「展覧会の絵」……定番中の定番作品から聴いたこともない分厚い響きと、引き出すテクニックは抜群だ。
ワレリー・ゲルギエフの音楽は、骨格の頑丈さ、肉付きの濃厚さ、抑揚の大きさ、表情の深さ、こってりとした味わいが特徴だ。そんな最新例がリムスキー・コルサコフの交響組曲。
天下の通俗名曲が、彼の手に掛かると、今さっき、生まれたばかりのような、実に新鮮な音楽になる。斬新で陶酔的、そしてエッジがシャープな響き。音の芯にしっかりと力を蓄積した、いかにもリムスキー・コルサコフらしい華やかなコントラスト感と色彩感が、そして高揚するエネルギー感を、あなたのシステムで表現できるか。
ヴァイオリン協奏曲集「四季」
長谷川 教通先生選定

ジャン=フランソワ・パイヤール指揮
パイヤール室内管弦楽団
『ヴァイオリン協奏曲集「四季」』
(JM-XR24001)より1曲目
「春 第1楽章」最初の2分3秒

選曲理由

1976年、アナログ録音最盛期の音源を、最新の24ビットプロセスでリマスターしたもの。しかも、オリジナルマスターは4チャンネルで収録されている。アンビエンス成分を十分にとりいれ、豊かな響きの中にナチュラルな定位を作り出している。アナログ録音ならではのサウンドを、デジタル機器でどこまで再現できるか。演奏・音質ともに極上のディスク。


再生のポイント(音質面で)

まず、冒頭の響きで低域から高域までのエネルギーバランスやディテールの描写力をチェック。楽器の輪郭とアンビエンス成分のバランスをどう再現するかがポイント。
ヴァイオリンのソロでは定位感(鋭すぎてはいけない)と、中高域の特性をチェック。
位相など、この帯域が素直に仕上がっていないと、硬直した音で、定位も聴き手に違和感のあるものになる。


目標とする聞こえ方(音楽性の面で)

弦楽アンサンブルの響きがダンゴ状態になったり中ヌケしたりせず、豊かに広がると同時に、各パートの動きや絡み合いがきっちりと分解されてほしい。パルシブな音への追従性やパワーばかりを求めたシステムでは、音の輪郭が太くなって貧弱な響きになってしまう。多彩な音色が混濁したり干渉することなく、柔軟性のあるトーンでクリアに音楽を奏でてほしい。
オーケストラ リベラ クラシカ
吉田 伊織先生選定

鈴木秀美 指揮
オーケストラ・リベラ・クラシカ
『オーケストラ リベラ クラシカ』
(TDK-AD002)より13曲目
「第8番〈晩〉 第4楽章」最初の2分30秒

選曲理由

オーケストラ・リベラ・クラシカは、バロックチェロで知られる鈴木秀美率いるオリジナル楽器のオーケストラである。通称はOLC。このディスクは浜離宮朝日ホールでハイドンを演奏したライヴ収録。
小編成の古楽オーケストラは、力まかせではその典雅な響きを味わえないだろう。
しかもこれは、優秀な音響のホールでのライヴ録音であり、微小情報の総合的な表現力が問われる厳しいソフトだ。


再生のポイント(音質面で)

三曲の交響曲は、いずれも演奏にしろ音質にしろ素晴らしいが、ここでは第8番の第4楽章に注目する。ソロ対合奏の対比がすこぶる面白いからだ。「日本一優秀な音響」との声もあるホールの響きを従えて、ソロヴァイオリンの屹立した弓さばきと音像の立体座標的な定位に目を見張る。管楽器の高さのある響き、ホルンの奥行き感にも注目。
そしてなによりも、清々しいオリジナル楽器の音色感を味わいたい。


目標とする聞こえ方(音楽性の面で)

度々登場するソロバイオリンをはじめ、弦楽器群はボウイングが克明であること。
しかも強いアクセントでも軽やかさと優美な表情を失わないように。また楽器同士は室内楽風によく響き合いながら、前後左右上下の位置関係が見通せることが望ましい。
フルートは天井方向を響きが遊泳するのが分かるはず。ホルンはもちろん奥から和声を支えている。要するに音の透視図が再現できるかどうかが問われる。

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デジアナシステムクラス
桜横丁
高橋 和正先生選定

佐藤三枝子
『桜横丁』
(VICC-60276)より4曲目
「宵待草」最初の2分
表現が歌詞に合わせてかなり違うことが判る範囲の冒頭から
歌詞2番の頭まで

選曲理由

府中の森芸術劇場におけるセシュウムマスタークロックによる録音のよさ。
中央に定位するソプラノと二重になるように定位する伴奏ピアノのシャープな音像の隈取、奥行きの距離感など、会場の空間の広さがきちんと録音されている。
曲想をしっかりと把握した演奏である。


再生のポイント(音質面で)

佐藤三枝子の透明なソプラノが金属的にならずしなやかに再生できるか。
ベルカント唱法の声の高域から低域まで滑らかに再生でき、響きにむらが無いか。
声楽的抑揚(マルカート/ソットヴィーチェなどの音色変化)が再生できるか。
スタンウェイの蓋全用と思われる伴奏ピアノの音色がきちんと再生できるか。
声とピアノの音像の大きさと隈取と定位。距離感。空間の広がりが再生できるか。


目標とする聞こえ方(音楽性の面で)

日本人の多くが知っている歌をクラシックの名ソプラノ歌手が格調高く歌っている品位の高さが感じられるか。
ベルカントの美しい発声と正しい日本語の歌詞が正確に聞き取れるか。
伴奏ピアノがコンサート体験よりもはっきりと録音されているが、歌を邪魔することなく、歌とのバランスが再現できるか。

PORTRAIT OF JACO
傳 信幸先生選定

ブライアン・ブロンバーグ
『PORTRAIT OF JACO』
(KICJ-428)より7曲目
「SLANG」最初の約2分30秒

選曲理由

オリジナル演奏はディレイを使って自分でカラオケを創っていくような演奏法。ブロンバーグはオリジナルの演奏法をもちろん使い、さらにフレットあり、フレットなしのベース2本を演奏して多重録音。リズムとメロディーにコントラストをつけた。ベースだけでもこれだけ深く広い音楽表現が出来ることが驚き。


再生のポイント(音質面で)

ベースの低音の唸りと、高音のツンツンとしたメロディラインのバランスを整える。
そうした周波数的なバランスに加えて、音の立ち上がりがピチッとくるハイスピードな切れ込みも大切。唸りの深さとリズムの弾力とのコントラストが勝負どころ。


目標とする聞こえ方(音楽性の面で)

なんと言っても「ノリのよさ」である。そう、リズミカルであること。リズミカルでなければこの曲は台無しになる。車内のビリつき音はノリのよさを艶消しにする。低音の深い唸りに高音部が甘くマスキングされてしまうとハイスピード感が薄らぐので、これまたノリを妨げてしまう。1分33秒からはバックに流れるカラオケのフワフワした音と、はっきりした音のメロディーラインとの距離感をとること。
津軽三味線 高橋竹山
村井 裕也先生選定

高橋竹山
『津軽三味線 高橋竹山』
(SRCL-3491)より1曲目
「口説節」最初の1分30秒

選曲理由

ここ6年間、チェック用に使い続けているため、冒頭の30秒程度聴けば、どのようなシステムかほぼ把握できる。
小さい会場での実況録音なので、音楽以外の会場ノイズや拍手も判定の材料となる。
個人的には、非常に使いやすいチェック用ディスクなのだ。


再生のポイント(音質面で)

冒頭に拍手が入っているのだが、クォリティーの低いシステムでは、同じ大きさの手が同じような叩き方をしているようにしか聞こえない。
もちろん、力強い三味線の直接音や歌、語りの生々しさも大きな評価ポイントとなる。


目標とする聞こえ方(音楽性の面で)

大きい手、小さい手、いろんな大きさの手が、それぞれ異なる強さで拍手しているように聞こえて欲しい(中に、やけに粘っこい叩き方をする人も…)
三味線は鋭く、しっかり立ち上がってほしいが、うるさ過ぎても困る。
中心にはビシッとピントが合い、それでいてニュアンス豊かな間接音も聞こえて欲しい。
ライヴ特有のホットな雰囲気が伝わればなお嬉しい。













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